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第十九話:きっとあなたはそういうと思った。

 そこに立っていたのは、背がひょろ長い…という表現は失礼かもしれないがそう形容する以外にない人物だった。

 思えば、かなり背が高い方の私の肩に自然に手を置けるなんてよっぽどの高身長なのは間違いないわけで。


 すごい美人なのだが、性別も年齢もよくわからない。

 挙げ句の果てに顔がよくわからない。美人なのに、よくわからない。


 髪の色は真っ白。

 ニコのように銀色が光に反射して白く見えるのでも、ハクアのような純白というわけでもない。

 そんな不思議な質のストレートの髪が床まで垂れている。


 目は赤い。

 アルビノというやつなのか、いや、どちらかというと、自然と色が抜けていったような、という印象を受ける。


 自然に白髪になったような、でも年齢的には?いやわからん。

 とにかく背が高い、髪が白い、目が赤い、以外のことがよくわからない。

 これだけそばにいるというのに?


「あぁ、つい癖で。すまない、君はこういう接触は苦手だったかな。」

 と言って、振り返ったまま固まっている私の方から手を離す。

 途端に脱力したように体がフラッとする。

 意識しないままに力んでしまっていたのだろうが、それは接触に対する拒絶とかそういう次元じゃない。

 なんというか生命の危機を感じて?


「あはは。大丈夫、我はこれでもか弱い乙女だからな。」

「女性同士だったとしても、今時そういうのセクハラですよ?」

「そうだね。すまない。」

 ツキヨがつっこむ言葉に、その女性は素直に謝るが、正直私はそれどころじゃない。

 私はどこからつっこんでいいのかよくわからないまま、ニコに若干支えられて体勢を整える。


 性別が判明したのも一つだし、一人称もなかなか珍しいし、何より、おそらく彼女は心が読める?

 あまりにも自然なので気づくのに遅れたが、そうでなければおかしい。

 それに、心が読めるのとは別に、私のことをあまりに知りすぎている。

 そんな筒抜けなことある?

 派遣機構の個人情報管理ってマジでどうなってんの…。


「あぁ、一応言っておく。これは派遣機構全体のゼータベースにある情報ではない。角谷ニコさんからもらった情報でもないよ。

 我の能力によるものなんだ。」


 人の心を読むといえば「サトリ」が有名だそれくらいは知ってる。

 あとは飄々としてる「ぬらりひょん」とか?

 予言ができる「件」って妖怪もいたよな。


「詳しいね。でも全てはずれ。正解は『土蜘蛛』。我は土蜘蛛の白峯ヤミ。よろしくね。」

「は、はぁ…。」

 私はそう言って差し出された手をとりあえず握る。

 ついさっき接触がどうたらって言われてたのに…いやまぁこれくらいなら私も気にしないけれども。


「ちなみに、現在生きている中で、派遣機構ペアでのランキングをつけるなら三位。他の追随を許さない実力者。」

 そう言いながらハクアはつまらなそうな顔でそっぽをむく。

 確かシノブも歴代で五指に入るとかなんとか言われてた気がするが、彼女はその上、ということ。

 いや正直シノブが全力で戦ってるところを見たことがないので、基準とか、どれくらいの差があるのかとか、よくわからないけれども。


「そして、白峯ペアが書物庫の管理者でもあるわけね。」

 ツキヨがさらに補足する。

 いや、それもいいんだけど、どちらかというと土蜘蛛族?の能力が気になるんですけど?


「蜘蛛は叡智の象徴だからね。他の蜘蛛の種族よりも力が強い土蜘蛛の種族も、その例外ではないということだよ。

 むしろ力の強い分、伸ばせる糸も長く広いということかな?」


「なるほど?」

 かな?じゃないが?


 つまり、今さらっと明かされた新事実と合わせて考えると?

 力が強くて叡智に溢れてるってこと?

 人の個人情報全部頭に入るような能力だけで十分チートなのに?

 ん?


「心が読めるんじゃないんですか?」

「あはは。できないよ。そう勘違いされることはよくあるけどね。

 そんなことできるのは、それこそユニコーン族か、サトリくらいのものなんじゃないかな?」


 笑われた。

 じゃあどうやって…。


「今までの知識と高い観察力で予測してるだけ、らしい。」

「そう、さすが管原シノブくん。」

 なんだそのアニメ漫画から飛び出してきたようなチート能力の嵐は…。

 そりゃ実力差でハクアも拗ねるわけだ…。


「それで、そんな管原シノブくんが、我々に用かな?」

「まさかあんたの方が出てくるとは思ってなかったけどな。」

「君は、君の弟ではなく、我らが出てくるのを予想してたんじゃないかな?」

「あぁ、そのつもりで来た。」


 敵意のような、信頼のような、不思議な笑みを浮かべる二人。

 間違いなく言えることは、これまでで見た表情の中で、シノブは一番楽しそうだった。

〜次回予告〜

ニコ:「心が読めなくても、ここまで他人のことがわかっちゃうなんて、すごいですね。」

ヤミ:「まぁね。能力は情報収集の方で、推測するのは自分だから融通もきく。その点ユニコーン族の能力は、かなり大変だろうね。」

ニコ:「まぁ…でも、この力は仲間を守るための能力ですから。」

ヤミ:「そうだね。角谷ニコさんも、角谷カナコさんを守れるといいね。」

ニコ:「はい!頑張ります!」

ヤミ:「頑張ってくださいね。次回は『第二十話:誰にでもできないならやるしかない。』をお送りするよ。」

ニコ:「お楽しみに!」

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