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第十七話:Cパートはトゥルーエンドでお願い!(後編)

「あー。私、これでもシノブとは同い年なのよね。ほら、吸血鬼って漫画とかでも歳取らないじゃない?

 そんな感じ?でさ、吸血鬼の契約者も契約時点から歳とらなくなるのよね。」


 …確かにそういう設定の漫画は多い。

 最近流行りなのか知らないけど、特に多い気がする。

 なんでもいいけどそれってインスタント不老不死ってこと?


「インスタントに年齢詐称な不老不死ってこと?」

「まぁだいたいそんなところかしらね。

 あ、でも寿命で死なないのと何をしても死なないのは違うからね?私はただ殺されないと死なないってだけ。」


「ま、吸血鬼は頑丈な種族ではあるけどな…。」

 と言い終わるか終わらないかのうちに、せっかく立ち上がってこちらまで戻ってきていたシノブがまた壁に叩きつけられる。

 どうやら彼女に頑丈は禁句らしい。


 しかしこの衝撃で揺らぎもしないしひび割れ一つ起こさない建物も建物だが、それ以上にシノブが相変わらずほぼ無傷なのもすごい。

 もしかしてギャグ漫画演出的な、効果音とかエフェクトがすごいだけで実際はダメージゼロみたいなそういう感じだったりするのか?

 いや、しないだろ流石に?


「同僚って?守護者の?」

「いいえ。特務隊で組んでたのよ。

 あなた、第三種だからこっちのことには詳しくないかもしれないけど、特務隊では三組六人が基本編成。そこで一緒だったわけ。」

「なるほど…?」

 つまり彼女はシノブがミサキちゃんたちと会う前からの知り合い。

 同い年ということはサトミさんたちとも同期ということになるか…。


「シノブも特務隊だったんですね?」

「そうね。まぁさっきあなたも言ってたけど、途中から守護者も兼任してた。

 でも四年前の事件をきっかけに追放…まぁあの場合逃亡かしらね。それで、当然、当時同じチームだった私たちにも嫌疑は向けられるところだったんだけど、シノブが逃亡したことによって有耶無耶になったのよね。

 しかも時期首領となる弟に、私たちが志願していた書物庫の司書の推薦を出していた。だから私はここにいる。」


 はしょりすぎてところどころ飛躍した説明だったが、だいたいは分かった。

 いい言い方をすれば、シノブは彼女たちへの嫌疑をなくすためにも「犯人」として一人で責任を背負ったということになる…。

 とはいえ、同時に、出会った瞬間にシノブを殴り飛ばした彼女の気持ちもわかるような気がした。


 自分は嫌疑どころか望む役職に就けたというのに、当のシノブは冤罪を背負ったまま。

 おそらく彼女の口ぶりからするとシノブが冤罪ということまで知っていて…。


 ん?

 そういえば、今更だけどなんで私たちのことを知っているんだろうか?


 私たちは初対面で、まだ名乗ってもいないというのに、彼女は私たちが第三種契約と言い当てた。

 契約の種類とかって、ぱっと見でわかるものなのだろうか?


 そんな私の疑問そうな顔を見てか、彼女が言葉を続ける。

「あなたは角谷カナコよね、新しい収束点の。で、あなたは契約者のユニコーン族でニコちゃん。それにシノブの監視につけられたツムギちゃん。三人とも、噂は聞いてるわ。」

「噂?」

 私は噂を立てられることは何一つしていないはずだが…少なくとも自発的には。


「管原シノブが派遣機構に戻ったってね。

 その護衛対象だったというのもあるし、収束点が三年間も見つからないなんて普通ありえないからね。」

「半分はとばっちりじゃ…。」

 自慢じゃないが、私はそういう人目に触れるようなことが好きではない。

 みんな知らないかもしれないけど!


「まぁそうね。あるいは何者かが意図してそうしたのか。なんにせよ、罪が晴れていない流刑人が戻ってきたんだから噂もできるわよね。

 元首領の子息だから戻って来れたんじゃないかとかね。結局首領となったのはあなたの弟だったわけだし?」


 弟だったわけだし?

 つまり、シノブには弟がいるのか、いや違うそこじゃない。

 結局世襲制は消えず、シノブ亡き後、繰り上がりで弟が首領になったと?

 いや、シノブは死んでないけど。でもだとするとわざわざシノブをこちらに戻す理由がない。


「で、そんな話題人の皆さんがこんな穴倉になんのご用かしら?」

 そう言ってツキヨさん?ツキヨちゃん?は優しく笑う。

 その表情は見た目年齢には不相応の深い思慮のようなものがある。


「あーえーっと?私は…。」

 もちろん聞かれたからには答えようとするのだが言葉に詰まる。

 単純に考えて書物庫、つまり図書館まできて「私はどこかおかしいので何が変なのか知りたい」というのはお門違いもいいところだ。


「収束点に関する禁書を調べたいんだが。」

 いつの間にかまた立ち上がってこちらに戻ってきたシノブがいう。

 というか今更だけど、シノブのこの扱いに誰もつっこまないのも可哀想だし、シノブ自身もなんかいえばいいのに。

 いや…ハクアとコクウからもだいたい扱いが同じなので、それでなんとなくスルーしてしまったのかもしれない。

 相変わらず…というかおそらく私が知っているよりずっと以前から、哀れな…。

〜次回予告〜

カナコ:「というか、契約者同士の影響ってそんな大きいものなの?」

ツキヨ:「種族によるわね。吸血鬼は影響力も大きい方の種族。他にも<同化>系の種族は相互の影響が大きい傾向にあるわね。」

カナコ:「というか、吸血鬼ってことは手を吸われたりするってこと?」

ツキヨ:「まぁ、そうねぇ、契約はそうだけど、そもそも血なんて吸わなくても死んだりしないからね、吸血鬼は。」

カナコ:「あ、そうなんだ?というか<同化>の種族ってことはミサキちゃんも?吸血鬼の契約者が吸血鬼になるってことは、いずれミサキちゃんも猫耳っ娘に!?」

ツキヨ:「それじゃ<憑依>じゃない?」

カナコ:「何で憑依系がシノブとチサトでジャスト男だけなん?個人的には全然求めてないんですが?」

ツキヨ:「まぁ概ね同感だけどね?でもそこは現実だしさ…。」

カナコ:「あーうやっぱりリアルファンタジーはリアリズムに支配されてるんだあぁあぁぁあ。」

ツキヨ:「何そのラノベタイトルみたいな…。ということで次回は『第十八話:書物庫の司書と禁書の鍵。』をお送りするわ。」

カナコ:「お楽しみに。」

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