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第二十話:オタクがオタクに出会ったら?

「じゃあ、おーい。アカネ〜?」

「ほーいほいほいっと。」

 ミサトさんが社殿に振り返って声をかけると、社殿の中から声がした。

 しかも随分間の抜けた声だ。


 …かと思えば、社殿の扉が、ズバッとだいぶ大きな音を立てて開いた。


「とうっ!」


 返事をしたその声が、掛け声を上げながら、天空へ飛んだ。

 日が暮れ始めた樹木の立ち並ぶ境内に、黒い影が舞う。


「シュバっ!」


 着地の音声まで自分で言った。

 この人はおそらく特撮好きだな。

 特撮好きの私が言うんだから間違いない。

 ドュクシ!


「アカネちゃん、見・参!」


 両手を斜め上に上げて変身ポーズまで。

 すごいハイテンションだ。


 だが、いわゆる陽キャのノリではない。

 好きな話題で喋る時、早口になっちゃうオタクのノリだ。

 間違いない。私にはオタクがわかる…的なね。

 正直共感する。


 まぁ私は、早口で話せる相手すらいなかったけれど…。


「あれあれ?なんでそんなに驚いてるの?」

「当たり前やろが!」

 ゴッ。


 わざとらしい仕草で首を傾けるアカネちゃんにサトミさんの拳が振り落とされる。


「いった!」

「しかも、境内の扉を勢いよく開けるなっちゅーとるやろ!」

 ゴッ。


「待って待ってわかったわかったから!許して…チョンマゲ?」

 ゴッ。

「せめて反応してぇ〜。」


 何を見せられてるんだこれは。

 大学生がノリと愛だけで作ったコミカル系自主制作特撮みたいだ。

 我ながら、なんだそのわかりにくい例えは…。


 しかし、サトミさんのここでのヒエラルキーの高さは底がしれない。


 ミサキちゃんの顔面を引っ掴んで脅す。

 ミサキちゃんや猫耳も恐れる「先輩」なる人物を呼び捨てにする。

 おそらく契約相手であろう魔法少女の頭を殴り飛ばす。

 今のところ、言動がだいぶ刺青だな。


「はぁ。すまんな。ウチの相方が…。」

「ぬな!ではでは彼女らが、新人契約者さん?」

「は、はい。」

 一応返事はしたものの、ニコはだいぶ萎縮している。

 このノリは共感はするが、目の前にすると私も怖い。


 正確には共感と同族嫌悪。

 オタクが他のオタクを敬遠するみたいな感じだ。

 意外とよくある現象ではないだろうか?


「私はこの土地の神の神使にして、サトミの契約相手。神狸族のアカネちゃんだ!」

「土地神の神使!?」

 ニコちゃんは驚いたように繰り返す。


 シンシ?シンリ?

 シンシは神の使い。シンリ…は聞いたことのない単語だ…。

 ニコと出会ったばかりの時は、オタク知識で世界観の変化についていけていた。

 だが、ここにきて、意味のわからない状況に足を踏み入れている気がしている。


 今更だが、非常に不安な状況である。

 オタクは物分かりがよく、異常な状態に対応する能力が高い。

 …というのがファンタジーなり転生系なりでのあるある設定だ。


 だが、現実はそう甘くないということなのか?

〜次回予告〜

ニコ:「やっと契約できそうですよぅ。」

アカネ:「お疲れ様だね!」

ニコ:「ひぃっ。」

アカネ:「ひぃってあーた!カナコちゃんといい、私だいぶ酷い扱いのような!?」

ニコ:「あ、す、すみません。あまり勢いがあるのが苦手で…。」

アカネ:「ふ〜んなるほど。ということはつまり、無口で落ち着いてるカナコちゃんはニコちゃんにぴったりな契約者さんってことですねん!」

ニコ:「無口…?まぁでもピッタリと言われて、悪い気はしませんね!…えへへ。」

アカネ:「じ、自分で言ってて自分で照れないでくださいよん。私仕事なくなっちゃうじゃん!」

ニコ:「ということで、ここまで短いようで長いようで不思議な時間でしたが、次回でとうとう契約成立です!」

アカネ:「…契約者を連れてここにくるだけの予定だと思うんだけどねん、何を経験してきたんだこの子らは…。」

ニコ:「ということで次回は『第二十一話:ユニコーンと契約に鈍い痛みを添えて…。』って、やっぱり契約って痛かったりするんですか?」

アカネ:「そして少女は大人になる!痛みを乗り越え成長するのだ!」

ニコ:「名言のようですが、どこかで聞いたことのあるような…?」

アカネ:「ゲゲっ!まぁ次回もお楽しみに!」

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