第二話:電波でも厨二でも可愛ければ正義です。
ことの発端である白ゴス美少女の彼女を向き直ると、彼女はこちらに歩いてきている。
つまり、ご都合主義にも私と彼女だけはこの時間停止の効果外なわけである。
ワァオ。なんてインチキ。
「もう、あんまり無茶するもんじゃないですよう。」
彼女は私の目の前に立ってそうそう、そう言った。
見ず知らずの人間に対する第一声にしては若干馴れ馴れしい口調だが、子供っぽい澄んだ声で言われると、なんとなく許せてしまう。
動作にしても、ツンデレっぽい仕草。人差し指をこちらに向けて指を差し、もう片手は腰に当てて上目遣いに。
だが、それが全くあざとさなく行われている。
なんというか、「清純み」を感じる。「尊み」でも可。
「尊み」の暴力が目の前に立っている。これは見るだけで尊死不可避ですわ。心なしか後光がさしている気がするのは気のせいであろうか(反語)。
同時に、さっきまで勘違い拗らせネキとかなんとか勝手に盛り上がってごめんね、と心の中で謝った。
というか年齢的には私の方が姉貴だしね。漫画的な年齢詐称な作画とかでもない限り。
………展開的にその線は捨てきれないけどな。
「とりあえず、早くここから退避しましょう。死んじゃいますよ?」
そういってナチュラルに私の手を取り引く少女。
同性の友人や母親にさえ、触れられることが嫌な私であるが、この少女の動きはあまりにも自然すぎて、つっこむ機を逸してしまった。
そして。
いつの間にか、人混みの中に連れ去られている私。
いつの間にか、何事もなく動き出している世界。
私がいきなりいなくなっていることに、背中の方でどよめきが起こっているのが聞こえる。
だがそれも、しばらく歩くと遠ざかっていった。
どうやら、慣れない人肌の感触に気を取られているうちに時間停止は解かれていたようだ。
いつの間にか、人々はどよめき、木々はざわめき、頭上の鳩は羽ばたいている。
この街ほんとに鳩多いよな…。
まぁ食べるものには困んないだろうからなぁ。
「まったくっ。せっかく見つけたのに。いきなり杖を振ることになるなんて思いませんでしたようっ。」
やっと手を離したと思ったら、今度は捲し立てるようにそう言われる。
本当に同じ人間なのか、と思うほど柔らく暖かかった彼女の手が自分の手と離れることに一抹の儚さを感じる。
…儚い。
そしてそんな彼女に、なんとなく女として負けた気もする。
同時に、こんな自分にもそんな人間らしい感情が残っていたことに驚きもする。
「変なこと考えてないで、話を聞いてくださいっ。」
怒った顔から、呆れたような、悲しいような、複雑な顔になる彼女の顔は、やっぱり抜群にかわいい。
お人形さんみたい、とでも表現するのか?こんなに可愛い生物がこの世界にいたなんてっ。
「なっ。そんな…。まぁそこまで言われて悪い気はしませんけどね。」
この世界はゴミだ無理ゲーだなんだと呪い続けてきたが、どうやらこの世界の創造神もあながち趣味が悪いばかりではないらしい。
一瞬襲った劣等感も、彼女はまさしく「次元が違う」と実感するとともに消えていった。
「そ、そんなことないですよ。カナコさんも充分可愛いですよっ。」
「カナコ」というのは私の名前である。
だが私は自己紹介なんてしていない。
そして、それでも私は可愛くない。
ここでふと我に返る。賢者タイムというやつだ。違うな。
さっきまで、自分は一言も発していないのに、会話が成立していなかったか?
つまり、これはいわゆる一つの超能力?
他人の感情を読む程度の?
いや、それはなんか違うな。時間も止めてたし。
どちらかというと魔法っぽい。楽しい仲間がポポポポンだ。
ということで、そろそろいい加減、つっこまざるを得ないだろう。
このまま引っ張り続けて謎のままというわけにもいくまい。
「あなたは何者?どうして私のことを?」
「私は、ユニコーン族の魔法少女、ニコです。魔法少女派遣機構より、カナコ様の心身の健康を守るために派遣されました。」
んんん?
やっぱり厨二病ちゃんなのかな…?
って思ったけど、おそらく世間一般に、モノホンの能力が伴う厨二病っぽいものは厨二病とは呼ばない。
それはおそらく、信じられないだけで普通に現実である。
正直信じられないが…。
~次回予告~
作者:「さぁ本日も始まりました。テンションは高いが面白くないで定評のある次回予告のコーナーです。」
ニコ:「ん?ん?このコーナーってまだ2回目ですよね?」(困惑)
作者:「まぁ、そういうこともありますよね。」
ニコ:「…?」
間
作者:「今回はカナコさんをニコさんが助けるという展開でした。」
ニコ:「はい、ここから私たちの伝説が始まるんです。えっへん。」
作者:「ここまではあらすじにある通りなんで予定調和ですね。」
ニコ:「予定調和とか言わないでくださいよう。一人の尊い命が失われかけていたところが救われたんですよ?」
作者:「まぁそういう風にいえなくもなくもないかな?」
ニコ:「なくもなくもな…ん?…ってそれないじゃないですか!?命は尊いんですよ!?」
作者:「ぐう正論。てなわけで次回はニコさんの秘密が少しだけ明らかになります。」
ニコ:「んな!?ポロリはないですよ!あれ、ないですよね?」
作者:「心を読んで先取りでつっこまめれるのやめてくださいね?次回予告のフォーマットは本編と違って地の文がないんで。読者が困っちゃうんで。」
ニコ:「それはすみません。で、でも…あれ?やっぱり変なこと考えてる作者さんが悪くないですか!?」
作者:「すっ。さて次回は、『第三話:それでもケモ耳オタクは納得がいかない。』をお送りいたします。」
ニコ:「すっごい勢いで目線逸らしましたね…。次回、お楽しみに…。」
幕
作者:「ちなみに次回からは作中キャラ同士の掛け合いになりますこのコーナー。」
ニコ:「幕が下がったら終わってください!」