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第十七話:ファミレスを捨て契約に出かけよう。

「では契約を!」

 ニコが善は善は急げ的な感じでずいっと私に顔を寄せる。

 いや、近い近い。

 この子は他人との距離を測れない節があるな。


 しかし、遠目美人が間近で見ると実はあんまり美人じゃないとかあるけど。

 ニコの場合は、むしろ間近で見れば見るほど可愛い。

 なんだこの可愛い生き物は。


「え…ここで?」

「それはできません。」

 私の疑問を否定するのはミサキちゃん。


「契約は、契約者の住んでいる地域の神社で行うんですよ?」

「じん…じゃ?じん、じゃー?」

 ニコの口から出たあまりにもこれまでの展開にそぐわない単語が出てきて少々混乱してしまったようだ。

 そのせいで神聖な場所が清涼な薬味になってしまった。


「そうなんですよ。国にもよるんですが、この国の場合は神社が土地に最も影響を与えていますからね。」

「なるほど?」

 わかるようなわからないような理論だ。

 聞いたこともあるようなないような?


 というか、他の国にも魔法少女がいるのか?

 確かにそもそも魔法なり魔女なりは元々西洋の文化だしなぁ。

 でも魔法少女はなんか違くね?


「で、契約の場所は…?」

「カナコさんの住んでいる地域がアカネ町B地区なので、氏神神社は明音稲荷神社ですかね。」

「え、シブヤ町じゃないんですか!っていうかアカネ町!?」


「知らないでここまで世話してくれたんですか!?」

「ぐ…まさかニコちゃんにそういうこと言われるとは…。一生の不覚…。」

「なんかひどい!?」


 何やら私の知らないところで話が進行している。

 さらにいえば、私の知らないところで私の個人情報が流出している。


 考えてみればニコに初めてあった時にも、私の名前を知っていた。

 ニコは心が読めるので、そういうことかと思っていたが、そうではなかったのもしれない。


「えっと…つまり?」

「この店を出て、明音稲荷に向かいますよ。」

「あぁ…なぜか私も行き先が一緒なのでご一緒しますね…。」

 つまりどういうことか、わからない回答だった。

 つまりこのままあとしばらくこの三人で行動するということだろうか…。


 そしてしばらく後。

 私たちはファミレスの外にいた。

 ちなみに料金はミサキちゃんが払ってくれましたとさ。おしまい。

 いや、終わらないけども。


「うぅむ。私としては急ぎのようもありますし、せっかく一緒に行くんですから飛んで行きますか…。」

「飛ぶ…?」

 嫌な予感がした。


 あまり昼間は人がいない風俗街のあたりまで歩いてきた。


「あんまりやると怒られるんですが、ちょっとだけなら大丈夫…かな?」

 そう呟きながらミサキちゃんがキリッとした表情に変わる。


 さらに腕を前に突き出し、何かに触れるようにしながら言う。

「守護者権限により、ハコニワシステムの起動を要請。ニコと角谷カナコの同行を要請。」

 めっちゃ厨二っぽい!


<シブヤ町A地区守護者、花咲ミサキの要請に基づき、ハコニワシステム起動を許可。>

<ユニコーン族魔法少女第三種ニコと、その契約予定者角谷カナコの同行を許可。>


 しかもなんか聞こえた!?

 機械音声のような中性的な声がどこからかミサキちゃんの言葉に反応した。


 とにかく言いたいことは。

 めっちゃ厨二っぽい!


 謎の声に呼応して、世界に変化がある。

 先ほどのドラゴンがいた空間に変化した。

 人も建物も何もかもが色を失い、質感も均一化される。

 どうやらこの空間は、任意で発動させているものらしい。


「さて、では行きましょうか。」

「いくって…。」

 私が疑問を呈し終えるより遥かに早く、ミサキちゃんは私を右小脇に抱えた。

 可愛い女の子の小脇に抱えられるなど、一部のニッチな界隈からうらやまけしからんと文句が出そうなシチュだな。


「え、わわわ私も!?」

 左を見ると、ニコも小脇に抱えられていた。


 これは…。


「いきますよ!」

「「いやだぁぁぁぁあ!!!」」

 おおよそヒロインが出してはいけない声が、私とニコの口から漏れた。

〜次回予告〜

ミサキ:「ハコニワシステムは、守護者以上の契約者が発動できる便利な結界のようなものです。」

カナコ:「わぁそうなんですね!全然わかりません。」

ミサキ:「えぇ、あの契約についての説明の時にいた物分かりのいい角谷さんはどこへ!?」

カナコ:「と言うかなんで、目的地が一緒なん?」

ミサキ:「え…それは…。」

サトミ:「それは、次以降のお楽しみやんなぁ?」

ミサキ:「げっ!?」

カナコ:「げっ!?って…?っていうかだれ!?」

サトミ:「それはもちろん、これまでと同じ流れなんやから…。」

カナコ:「なるほど。」

ミサキ:「私は急用を思い出したんで、それでは!」

カナコ:「どこいくの?ミサキちゃん!?ミサキちゃーん!?」

サトミ:「あない怖がらんでもいいのにな?」

カナコ:「いや知らないですけど。次回は、契約のために向かった明音稲荷でここで働きたいんですする話。」

サトミ:「ほんまに?」

カナコ:「ごめんなさい嘘です。と言うわけで第十八話:『頭蓋骨の軋む音を聞け!』でお会いしましょう。ってタイトル怖くね?ホラーかよ!?」

サトミ:「お楽しみに〜。」

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