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第十三話:この世で一番肝心なのは平常心。

 しばし後。


 …知らない天井だ。


 私は今、ファミレスにいます。


 というわけで、私たちは今、ファミレスにいるのであった。

 何気人生初ファミレスなんですが私。

 そんなことってあるかって自分でも思うけども。

 けども初なんですもんね。仕方ないですね。


 これでも私は現代人だ!…あれ、現代人だよね?

 不安になってきたわ…。


 もしかしたら引きこもってる間に、浦島太郎して(動詞)たりします?


「は、ここは大衆のための美術館か何かですか?それともいわゆるカフェというやつですか?」

「…ファミレスって言ってるじゃないですか。ファミリーレストランの略ですよ。」

「レストラン…?」

「もしかしてそれすらわからないっていうんじゃ…。」


 ニコはニコでだいぶにわかを晒している。

 エアプですわ!って煽られちゃう。


 とは言いつつも、ニコちゃんはどうも貴族らしいので、大衆の文化に詳しくないだけだろう。

 だが私は、大衆でありながら、大衆のことがわからない。

 反省しよう。そうしよう。双子葉類。…ん?


「で、何頼みますか?」

 ニコニコ張り付いたような笑顔のウエイトレスに導かれて席に着くと、すかさず、ミサキが問いかけてくる。

「な、何を頼めば…。」

 机の上のメニュー表らしき冊子を手にとる。

「お昼時ですけど、お腹空いてますか?話すために入ったので、ドリンクパーか、軽食がベストですかね…。」

「ん?」

 私にとって、ファミレスとは、ラノベやらアニメやらゲームやら漫画やらでイベントが発生する場所であり、そこに自分が参加することは考えてもみなかった。


 とはいえ、私とて(ゲームの中で)多くの人生経験を積んできた人間だ。

 ファミレスではとりあえずドリンクバーとやらを頼むのが、居酒屋でとりあえずビールするのと同じくらいド安定行動だということくらいは知っている。


 元は取れないというが、それほどの値段でもない。

 寂しい懐具合の私でも頼んでよさそうだ。

 ミサキちゃんのおすすめにもあったところだし…。


「えええっと?」

 ニコちゃんが非常に困っている顔をしている。

 ニコちゃんはなぜ困っているんだろうか。


 知りたいなぁ。

 知りたいなぁ。

 知りた…。


「私まだ、人間界のお金持ってなくて…。」

 私がちょっと圧をかけると、ニコが困ったように恥ずかしげに告げる。

 なんとなくこの能力の使い道がわかってきたようだ。

「うぅ、横暴ですよう。」


「お二人とーもっ。」

「「すみません。」」


「じゃあ、ここはニコちゃんの分、私が払いますよ。ここにくるって決めちゃったの私ですし。」

「あ、え、あ…。」

「わ、わわ悪いですよ…。」

 私が払うと言いかけて口篭っていると、ニコもバツが悪そうにしている。

 ニコは私のためにやってきたようだし、私の方がミサキちゃんより若干年上だろうからだ。


 とはいえ、私が払ったところで同じか。どのようなやり方にしても、お金を払わないことに罪悪感はあるだろう。

 何せ、ニコちゃんはいい子なのである。


「ニコちゃんは、なんのためにここにきたの?」

 私は聞いてみることにした。


「そ、それは、カナコさんの心身の健康を護ためです。」

 店に入ってメニューを頼まず話し込むのはマナー違反だろうが、ここは気になっていたことでもある。

 それにこの質問をするには理由がある。


「その行為の代償に、私は何を支払うの?」

「何もないですよ!当然です!魔法少女の基本は献身ですから。」

 この答えが聞きたかった。

 これまでの話の流れ的に、そんなようなところだろうと思っていた。


「じゃあ、ここは私が払うよ。」

「「え?」」

 ニコだけでなく、ミサキちゃんまで、ここまでの流れに戸惑っているようだった。


「だって、ニコちゃんは私を守ってくれるんでしょ?」

「はい!もちろんです。」

「でも私はなんの代償もない、それはアンフェアじゃない?」

「いいえ、そんなことは…。」

「でも私は気が済まないから、私にもこれくらいはさせてよ。」

「…はぁ。」


 …という流れで話すのが、ラブコメの正当な流れなわけだ。

 ゲームで得た知識や経験や能力は、得てして役に立たないで有名である。


 だが、現在のような異常な状態では別…。

 現状はまさに異常こそが正常と言っても過言でないのである。

〜次回予告〜

ニコ:「とうとう、カナコさんが覚醒しましたね!」

カナコ:「世界の全容がちょっとずつ明らかになってきましたね!」

ニコ:「でも、びっくりでした。カナコさんがこんなにいろんなとこを考えていたなんて。」

カナコ:「それはどう言う意味かな?」

ニコ:「い、いや、バカにしてるだなんて。そう言うことじゃないんですよ!」

カナコ:「じゃあどういうこと?」

ニコ:「ユニコーン族の読心って考えてることは読めないんですよ。」

カナコ:「どゆこと?」

ニコ:「つまり、読めるのは心であって脳の中ではない、と言うことですかね?」

カナコ:「なんでわかりやすい説明…まさか、ニセモノ!?」

ニコ:「な訳っていうか、カナコさんの方が失礼じゃないですか!」

カナコ:「ごみんごみん。てな訳で次回はとうとうニコちゃんのやってきた理由が明らかになります。」

ニコ:「『第十四話:そこにドリンクバーがあるから。』をお送りします。お楽しみに!」

カナコ:「今度はニコちゃんにも全部言われた…。」

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