第五十四話 風物詩はどこにでも
…魔獣とは、基本的に魔に堕ちた獣と書くように、獣が転じて魔獣になっていることが多い。
とはいえ、それがすべてに当てはまるかといえばそうでもなく、獣以外の虫や魚、あるいは生き物ですらない無機物なども魔獣になることもあり、魔獣学者の頭を悩ま続けている。
その中で、この大雪が降り続ける季節の中で、先日生まれ落ちた魔獣もまた、魔獣学者たちの頭を悩ませる類だった。
【オオオオオオユッキィィゥl!!】
ゴロゴロと雪原を爆走し、その後方から雪雲を引き連れているのは、雪の魔獣。
シロクマやペンギンなどであればまだ可愛らしい(?)もの。
だがしかし、そこを爆走しているのはそのような類ではなく…獣ではない別のモノのような姿をしていた。
回転しながら疾走するその姿は、一つの巨大な球体。
身に纏っているのは、道中に降り積もっていた雪であり、どんどん積み重なっていく。
雪だるまを作るように、その頭はないけど身体だけで突き進んでいく。
【オオオユキユキユキーーーー、ユッキィ!?】
爆走する中で、ふと何かに気が付く巨大雪玉。
見れば、進行方向には別の魔獣の姿があった。
見た目こそは人に近いようだが、持っている気配は魔獣と同じもの。
かなりの力を持つ魔獣ということを見抜き、このまま突き進んで跳ね飛ばすこともできそうだが、この勢いだけではできないと判断する。
【オオオユキユキユキヤァァァァア!!】
ならば、より強い力で叩き潰せば問題ない。
そう考え、巨大な雪玉は勢いよく飛び跳ね、宙を舞う。
落下地点にはその魔獣があり、このまま圧殺することもできるが、まだまだ力が必要だろう。
ぼごんっと音を立てて雪玉に手足が生え、顔が浮き出る。
そう、この雪玉の積み重なった雪はこの魔獣そのものになっており、どれほど雪を纏ってもその魔獣だけの存在…積雪によって形成された魔獣『ユキダンゴ』の力を増すだけのパーツに過ぎない。
身に纏う雪が多ければ多いほど、その力が待つ魔獣。
雪原を転がることで巨大化し、それだけ多くの力を手にすることが出来る。
さらに、この個体は偶然にも特殊な能力として雪を近くに降らせる能力を手にしており、自家発電、地産地消、自家栽培…いや、どの言葉が合うのかはわからないが、自身の力で雪を増やして手に入れていくことが出来る。
このままいけば、手が付けられないほどの最強の雪の魔獣になれるはずであり、その障害物になるのであれば全力で叩き潰せばいい。
そう思い、ユキダンゴは目の前の魔獣を潰すことだけを優先して…
【…というわけで、巨大な雪玉の魔獣と死闘を繰り広げまして、どうにか討伐してきました。このままいけば、王都も巻き込んで、よりやばい魔獣になるところでしたね】
「さらっととんでもない魔獣の討伐をしてきたのか…死闘って逝くほどなら、それほど厳しい戦いになったの?」
ハクロが駆け抜けて外に出てから十数分後。
思ったよりも早く帰ってきたので、何があったのかと聞いてみれば、どうやら王都は知らぬうちに災害の危機にあったらしいということを確認できた。
まぁ、その元凶の魔獣は既に、亡き者にされたようなので安全ではあるだろう。
【はい。寒くて雪原だと戦いにくくて…それで思い切ってハクロレーザースペシャルをぶち込んで、どうにか解決をしましたよ。ほら、これ戦利品のユキダンゴのコアです。粉々になってますが、ほんの少し振りかけるだけで、タライに満タンの水が瞬時に凍る冷却材になりますので、扱いに注意が必要ですけれどね】
「それ、死闘になってないよね?」
話を聞く感じ、ぶっとんだ技で屠られたように聞こえる。
一応被害はないのかと確認したが、放出した方向には山が一つあった程度で、生成どでかいトンネルが開通しただけのこと。
それはそれでやらかしているなと思ったが…やってしまった事実は変えようがないので、しばらく黙って知らぬふり押してもらうほうが良いかと、ルドは判断するのであった。
…隠し通せるかな?でも、説明したところで全員許容量を超えそうな…
王都に近づいていた危機は、屠られた。
もう少し、力の差を理解していればどうにかなったのかもしれない。
だが、今更過ぎることで…
次回に…続く?
…なんとなくこの話、バッドエンドに向けたかったんだけど、うまい着地点が見つからなくなってきたので、いったん休止させたいかも。




