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第四十九話 復興祭と大人の苦労

 復興祭。それは、怪物の襲撃によってあちこちボロボロになった王都が修繕されたのを祝う祭りであり、景気よく気分を盛り上げるために行われるもの。

 元々は、自然災害によって復興しても気分までは戻らない人々のために、わざわざ盛り上げようと何十年前かある他国の国王が思いついた行事であり、それがいつしか各国で何かしらの被害からの復興があった際にやるようになったと言われているもの。


 どこが起源なのか正確な記録はないそうだが、とりあえずは…


「陰鬱な気分にならないように、復興できたならそのまま祝いのムードにして気分を良くして盛り上げまくろうという祭りってことだね」

【気分を盛り上げて、雰囲気を良くする…そういう目的ってことですね】


 単純に、バカ騒ぎをしまくっていやっほぉい!っと盛り上がって全体的に良くするだけの、そんな単純な祭り。

 けれども、単純だからこそ伝わりやすく、人々の心に火をともしやすいのだ。


 そして本日は、その復興祭が開かれることもあって、あっちこっちに露店が出たり踊っている人がいるなどの祝いムードでなかなか楽しいことになっている。


 和気あいあいと人々は笑顔で語り合い、露天巡りをしたり、あっちこっちで開かれているダンスに混ざったりと、楽しみ方は多種多様の様子。

 本当にこの間、化け物の襲撃があったときの戦場の緊迫感は嘘だったのだろうかと言えるほど空気が変わっており、楽しまなければ損な気分になるだろう。



「せっかくだからルンバたちと一緒に回ろうと思ったけど…あいつらの場合、この陽気な雰囲気の時こそ彼女づくりのためのナンパだとか言って、どっかに行ったんだよなぁ…」


 まだ俺たちの年齢的に彼女は必要そうにもないと思うのだが、小さい時から努力しないと厳しいのだろうか。

 …うん、まぁ、そうなのかもしれない。前世だとSNSやらネットやら、様々な手段での出会いの方法があるけれども、今世はそういう手段もないので、出会いを探すのであればより気楽になれるこういう雰囲気の時こそがチャンスなのだろう。


【ふーん、そういうものなのですか。でも、旦那様には必要ありませんね。私がいますからね】


 にこやかにたゆんっと胸を張りつつ、そう口にするハクロ。

 言われてみればそうなるし、ある意味勝ち組的なものなのだろうか…いや、ちょっとだけ目が笑っていないように見えるけど、もしかしてこれ、うっかり一緒に探しに回ろうと付いていったらヤバかったとか無いよね?




 そんな不安を少々感じたが、今はそんなことよりもこのお祭りに乗じて楽しみまくったほうが良いだろう。


 なお、祭りの最後の方には国王陛下より直々の表彰式があるようで、化け物退治に感じて様々な功績を上げた人たちの表彰の場が設けられており、俺たちも例外ではないらしい。

 特に、化け物を直接倒したということで、ハクロにもしっかりと褒美が渡されるようだ。


 こういう時の褒美となると、何があるのか…そもそも、魔獣でもある彼女に対しての表彰というのはどういうものが可能なのか。

 色々と気になるが、今は楽しんだほうが良いのかな。


「まぁ、難しいことは考えずに時間までゆっくりしようか。ハクロ、どのコースを回る?」

【うーん、時計回りだと食べ物を先に、反時計回りだと遊びが先…むむむ、悩ましいですね】


 何がどう出るのかエリアが決まっており、事前にその情報が詰まった地図を得ているのだが、どこから回るか、悩まされ始めるのであった…

 









「ふーむ、こうやって復興祭を見て回ると、いかに民がどれだけこういうお祭り騒ぎが好きなのか、よくわかるな」

「学園のほうも休みになり、この日ばかりは貴族平民関係なく楽しめる場だからこそ、平等な目線で探りやすいですよね、兄上」

「まったくだ」


…ルドとハクロが祭りのコースに悩んでいたその頃。

 別の場所では、この国の第一王子のアレックスとその弟である第二王子のガレッドが、兄弟そろって祭りを楽しんでいた。

 かつてハクロに求婚し、学園で歴代三位のフラれ記録という不名誉すぎる称号を背負っていたアレックスだったが、流石に今はその失恋のダメージから立ち直っており、祭りの乗じて民の立場を王子として見定めている様子。

 そして第二王子に関しては、失恋した兄に同情しつつ、兄弟仲は悪くはないので本日は一緒に見て回って楽しもうと提案し、同じく祭りに来ているのである。


「それにしても、兄上。大丈夫でしょうか」

「何が?」

「本日の最後のほうで、父上が表彰を送る相手には…その、兄上をフラれた方が出ますけど、それはどうなのかなと…」

「ああ、大丈夫だ。一度フラれたぐらいで、二度と立ち上がれなくなり、見るのもつらくなるほどやわではない。むしろ、今回の祭りが行えた功労者ともいうべき相手だ。祝うためにいなければ、意味がないだろう」


 かなうことのない恋を一瞬にして突きつけられて、儚く散った第一王子。

 けれどもその経験は逆に、王子の心を成長させたようで、むしろよりたくましくなったようだ。


「良かった、そこは少し不安だったからね…」


 兄の失恋原因となった女性がいるのは精神的にどうなのかと不安になったが、杞憂で終わってホッとする第二王子。

 まだ王太子が決まっていない中、将来的には王位をめぐって争うことになるだろうが、それでもお互いにどっちが王についても支えようと決めており、だからこそ精神面で気になったのだ。


 この様子であれば、法相の場でも平然と王族らしく振舞えるだろうし、問題はないはず。

 争う将来があったとしても、正々堂々とやりあうのであれば万全にやれたほうが良い。


 お互いにそう思いつつも、ある疑問も同じく抱いていた。


「それにしても、兄上。一つ疑問ですが、兄上はお聞きしていないのでしょうか」

「む?」

「今回のけ物騒動で一生懸命前面に出て戦った人や、後方での支援者で表彰を行い、褒美を授けていくのですが…最後のほうで、化け物を見事に打ち倒したその女性…魔獣ですが、ハクロという方へは何を褒美に上げるのか、聞いていないのでしょうカ?」

「ああ、その話か」


 今回の場で、様々な活躍分野に応じて、褒美を上げていくことは決定している。

 あるものは金を、あるものは職業のあっせんを、はたまたあるものは領地をなど、その褒美の種類は多岐にわたる。

 その中で、化け物を見事に討ち破って見せた偉業を持つ魔獣…蜘蛛の魔獣であるハクロに関しては、何が出されるのか気になっている人は多い。


 地位?名声?富?いや、そんなもの、魔獣である彼女が欲するだろうか。

 しかし、何も与えないわけにもいかないし、化け物討ち破るほどの力を持つ魔獣ならば、出来ればこの国にとどまってほしいからこそ、何か大きなものを与えなければいけないだろう。


 かといって、化け物を打ち破った功績があるとはいえ…王都の人々に親しまれている彼女だが、全てがそういうわけではない。

 化け物を破るほどの実力を危険視する者もいるだろうし、魔獣だから気に食わないなどというものもいるのだ。


 悲しいことに、彼女がいたからこそ化け物を完全に打ち倒せたというのに、いなくても大丈夫だったと息巻く愚者が出るのはどうしようもないこと。

 人は己の功績以上のものを得るものがいると、その功績は自分こそふさわしいと勘違いするような輩も出てしまう。


 どうしようもない人の性だが、どうにかしようにも難を逃れようとあの手この手で逃げる厄介なものもいるのが厳しい現実なのである。


「そういうのも踏まえて、何を与えるかが重要になるが…さて、父上は何を与えるのかは聞いてないな」

「国王及び重臣のみの会議が開かれたようですが…そうですか、兄上にもわからないですか」


 王族とはいえ、まだまだ双方ともに学園へ通う学生の身である以上、与えられる情報は少ない。

 より多く知るためには王族としての心得を良く学び、そして上を目指さなければいけない。


 不明なことも多いが、一応彼らは父である国王が誤った選択をおいそれとしないだろうと思い、疑問に思いつつもその場が来た時に確認をすればいいかと思い、改めて祭りの場を楽しみ始めるのであった…



「まぁ、少なくとも国王の妾にとか側妃になどの要請は絶対にないだろうね。王族に継ぐのは、権力面で見れば相当大きな褒美にもなるけど…彼女の場合は、番がいるんだっけ」

「それをやったら、首を飛ばされかねないからなぁ…あ、でも彼女だけではなく、下手すれば母上方にもズバッとやられかねないか。あと妹も」

「王族としての責務を理解しながらも、そこはしっかりしているからなぁ…この間、うっかり父上が使用人のメイドにわざとじゃないけど本当に事故でやらかした時のことがあったけど…」

「…それ言うな。あの後、王城内に響いた……うん、背筋が寒くなったから、何か暖かいものを食べに向かおう」


…何が起きたのかは、その場にいた人のみぞ知ること。

 万人が知らずにいたほうが、幸せなのかもしれない。


さて、いよいよ褒美のお話

どういうものがもらえるのかは、その場でのお楽しみ

変なものはないだろうが…

次回に続く!!


…なお、第一王子が出した第三位の記録、後で破るべきか否か、迷っていたりする

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