第四十六話 狂気に混沌を加えまして
お詫び:
本日投稿予定でしたが、誤って別作品へ投稿しておりました。
改めて、お詫び申し上げます
…ガルトニア王国の王都に起きた、モンスターハザード。
調査の結果、何者かの手によって引き起こされた人為的なものであり、伴って生じた植物の化け物…以前、皇女を襲撃した賊たちが転じた姿と同一のものと判断され、何もかも喰らいつくしていく植物の化け物として仮称『グラトニー・プラント』と名付けられたものの襲撃から一夜が明け、王都内はすぐに復興の道を歩んでいた。
見た目が蔓の化け物だが牛の形状も持っていたので、わかりやすく追加で「タイプ:バッファロー」と名付けられた化け物の襲撃があったとはいえ、幸いなことに死者が出ておらず、多数の怪我人が出てしまったが、それでもこの程度で済んだのは幸いなことだったのだろうか。
破壊された結界も既に聖女の手によって修復が行われており、再び魔獣の襲撃がある可能性を備え、今回の教訓をもとに王都を囲う城壁の改良工事も決定した。
そんな中で、ガルトニア王国の王城内もあわただしく動いていた。
理由は単純明快、今回の襲撃の犯人に関しての話だ。
調査結果によって人為的なものであることが分かったが、それがどこの誰によるものなのかはつかめていない。
特徴としては、以前の賊たちのものと類似しているから同一犯だと思われるのだが…
「本当に、それがどこの誰が引き起こしたことなのかということが問題だな」
「ええ、そうなのよね。結界に弾かれる性質はあったけれども…アレはたぶん、魔獣の死骸を、それを取り込んで形成された結果によるもの。まったく別の化け物を生みだし、使役するようなものがいるのは非常に厄介な話よ」
はぁぁっと溜息を吐きながらそう口にする国王に対して、聖女クラウディアは答える。
この王都を守っている結界の担い手である聖女としての立場ゆえに、今回の化け物に対しての意見を求められ、こうやって王城内の一室…国王の執務室で報告をしているのだ。
「もしも、これが魔獣の死骸ではなく、普通の人の死体で形成されていたりしたら、どうなっていたのかもわからないわね。結界はあくまでも対魔獣用のモノ。今回のようなハザード程度であれば、時間を稼いで攻撃を行うことで被害を軽減させることが出来るけれども…もしも、結界が通用しないような相手が出てきたら、その時こそ最悪なことになるわね」
「本当にどこの誰だ、そんな厄介なものを生みだしたのは…」
災害と名が付くだけあって、人為的にモンスターハザードを引きこされるだけでも相当なこと。
それなのに、加えて魔獣を操ることが出来るような化け物もおり、状況によってはさらに脅威度が増していくなんていうのは、冗談だと思いたいのに本当なのだからどうしようもない。
今回はどうにかなったが、今後同じようなことが起きれば最悪の事態になる可能性だってある。
「…制御できなければ、世界すら滅ぼしかねないような化け物。そんなものを利用する輩の目的は何だろうか」
侵略、征服、実験…その他色々と目的が考えられるだけに、絞りにくい。
相手の目的を探るだけでも、容易くはいかないようだ。
「まぁ、当面はまだどうにかなるかもしれぬか…例の魔獣、ハクロがここにいればの話になるのが厳しいところか」
「そうなりますわね」
国王の言葉に同意する聖女。
今回の化け物討伐にあたり、最後のほうに出てきたとはいえ、その力は凄まじいものになっていた。
魔獣というカテゴリに入っているせいなのか当初は操られかけたようだが、強靭な意思によってはねのけ、そして身を変えて反撃し、跡形もなく化け物を消し去った蜘蛛の魔獣。
最近学会のほうでようやくアラクネという名が正式認定されたばかりだというのに、その種族からさらに転じたような姿に変わったせいで、学会に属する者たちが嘆きながら資料を集めなおしているとも聞く。
「人の姿により近くなったようだが…それでも、強大な力を持つ蜘蛛の魔獣なことは変わらぬか」
今回の一件で姿が変わり、特徴的だった大きな蜘蛛の体がかなり縮小されて尻尾のように小さくなる程度になっていた。
それに加えて食指部分が人の脚のように立つことが可能になり、ほんのわずかな間見せた実力だけでも相当向上していることがうかがえるだろう。
「…一説では、魔獣は常に自身を最適な状態に身を変えることが出来るという話があります。火山に住まうならば、熱への耐性や熱そのものを身に纏うように。水に住まう魔獣であれば、泳げるようになったりあるいは液体そのものになったりと…今回の件でも、彼女は同じように最適化したのでしょう」
人と共に生活し、過ごしてきたからかその姿はより人へと近づいた。
けれども、それと同時に自身の力を…大事な番を守るためへと切り替えるために、戦闘方面にも力が向いたのだろう。
蜘蛛の体が縮小したのは、人の世に溶け込みやすくするため。
それでいて、小さくした分の肉体を他の個所へ回し…自身の強化を行う力として転じ、より強大な力を得たようだ。
「たった一人の番に対して、そこまで力を行使可能な魔獣…今更ながら、本当に今、人の敵の立場に立っていなくて助かったな」
「そうなるわね。それに、あの最後の攻撃…魔法によるものだけど、聖魔法に近いものもあったわ。以前加護を授けたりできたことからも、聖女の素質は十分あるのよねぇ…本当になってくれないかしら」
敵対することなく、人を助けてくれるのは良いことなのだろう。
だがしかし、一歩間違えればその矛の先に向くのは人になる可能性だって存在している。
だからこそ、関係性としては良好なままで、敵対することが無いようにしていきたい。
「…何にしても、今回の騒動では一番の功績者と言えるだろう。被害拡大前にモンスターハザード発生の確認、王都での化け物退治の功績、他の領地でも…大きな魚の魔獣討伐との報告もあるからな。何かしらの褒章を出さねばいけないだろう」
「あら、国王陛下直々にかしら」
「そうでなければな。やったことが大きい分、それに見合ったものを授けたいが…さて、何が良いか」
今回の功績が大きいので、適したものとなるとそれ相応のものになる。
良い案としては、可能な限りここに繋ぎ止めるために爵位を与えるという方法があるのだが、あれが人ではなく魔獣ということから、良く思わないような輩による反発もあり得るだろう。
「ふむ、どういうところで妥協を付けるべきかが悩むな…」
問題はまだまだ山積みのようだが、一気に解決できるわけがないので、まずはやりやすい方から少しずつ取り組み始めるのであった…
「可能なら、聖女の後継者になってほしいですけれどもね」
「本人にその気がないようだがなぁ…ああ、聖女の道を歩んでくれた方が、それはそれでやりやすかったのだがなぁ…」




