第三十八話 のんびりとのんびりと
別作品も出しつつ、こちらも再開。
今年度も何卒、よろしくお願いいたします。
…魔獣のシャケの襲撃もプチ旅行も終わった。
夏季休暇終了までの時間も余裕があり、メダルナ村改めメダルナ街へ変わりつつある故郷へ、ルドたちは戻っていた。
「お土産に得たシャケの冷凍切り身をご近所さんに配れたし…問題はないかな?」
【私の氷魔法で、鮮度はバッチリ保たれていますからね。解凍可能な程度に抑えていますし、今晩はあちこちで焼けたシャケの香りが漂いそうですね】
あっちの家もこっちの家も、同時に調理するわけではないとは思うが、それでも新鮮なシャケが手に入ったのであればすぐに食べたい人が多いだろう。
もちろん、こういう鮮魚に関しては寄生虫などの危険性もあるのだが…それもしっかり、対策を行っている。
【ふふふ、聖女様から習っておきましたからね。不衛生な状況下、極限の場所でしか食材が提供できない中、食中毒などの危険性があるということで、ある程度の危険物を取り除ける『衛聖魔法』を全部に処理済みです】
「衛生じゃなくて衛聖かぁ…誤字のように見えて、しっかり聖魔法が盛られている殺菌・殺虫・健康不安無しにすることが出来り魔法とはかなり便利なものだよね」
これ、もしも前世の世界で使用ができれば、ありとあらゆる食品業界で物凄く重宝されるような技術ではなかろうか。
今世でも調理人とかが欲しがるだろうし、実際に王城とかで出される料理の場合、何重にもかけまくっているとかいう話もある。
…食中毒以外にも、毒殺の危険性があるということで、その魔法であれば毒すらも取り除けるからという理由があるようだ。
だからこそ、そういう魔法が扱える人は好待遇で就職も可能らしい。
うかつにやらかして、大失敗すれば首をはねられかねないっていうリスクもあるらしいけれどね。
そんなことはさておき、プチ旅行もシャケ騒動で早めに切り上げてしまったが、まだまだ残る夏季休暇の今日この頃。
シャケ肉に関しては両親も喜んだので今晩の食卓に出てくることは決定したようだが、そうなってくると他にも食材が欲しいところ。
シャケだけだと完璧に彩れるわけではなく…理想としてはキノコや野菜なども付け合わせておきたい。
そんな目的もあって、今晩のおかずに追加する食材探しということで、村のすぐ近くにある森へルドたちは訪れていた。
「そういえば、ここでハクロに出会ったけど…今更だけど、ハクロがここに来たのって何か理由があるの?」
今晩の食材探しの中、ふと思ったのは出会った時の事。
あれからまだそう長い時間が経過しているわけではないのだが、時間が経って冷静になって考えてみると、少し疑問があった。
【キュル?理由ですか?】
「うん。考えたらあの時、ハクロに魔獣の熊から助けてもらっていたけど…まだ、ハクロは番探しの旅時にいたわけだよね?なんとなくいるって感じが分かっても、正確に居場所が分かっていないなら、より人気の多い場所へ向かいそうなものなのに、こんなド田舎…いや、今は発展しつつあるけれども、人気のない場所へ何で訪れていたのかなって思ってね」
【あー、なるほど。ここよりも人の多い場所へ目指すようにして、こういう人気のない場所へ訪れることは奇跡的に近いとか思っているわけですね】
ひょいひょいっと器用に糸で周囲の食材を収穫しつつ、ハクロが答える。
【まぁ、確かに言われたらその通りなのですが…私としては、番がいるという感覚があっても、相手が人間だという断言が出来なかったですし…ちょっと昔、やらかしたことがあったので避けていたのもあったんですよね】
「なるほど、わからなきゃ他の生き物が居そうな場所へ向かうか…いや、やらかしたって何をどうしたの?」
【…それは秘密ですよ、旦那様。聞いても多分、面白くないですし…語るべき場所は、もう存在もしてないですからね】
「消したの!?」
【流石に私が手を下したとかは無いですよ!!そんなことをしたら、明らかにもっとやばくなりだなってことぐらいの分別は、当時の私は付いている…はずですよ!!】
微妙な間が気になるが、ツッコミどころが多そうな過去に触れるのは良くないことだろうか。
下手に藪蛇をつつくわけにもいかないので、この話はいったんなしにして、今は食材探しへと気持ちを切り替えるのであった…
【…まぁ、そのおかげで一応、私は人を疑うってことを覚えましたけどね】
「何か騙されたとかの類なのかなぁ…」
…消えたというが、末路の形的にはおそらく相手の自業自得な可能性が大きいだろう。
しかし、本当に何があったのか…うん、やっぱり聞かないほうが良い話なのかな、コレ。
過去が気になるが、聞かないほうが良いのだろう
当時を知っている者も、失われている可能性がある
そんなことはさておき、夏季休暇もじわじわと進んで…
次回に続く
…疑うことを学んだというか、ルド以外の人間を軽視しがちな理由でもあるかも




