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第三話 その影響は他所へもじわりじわりと

本日最後の更新

以降は少しづつ出していきますので、どうぞお楽しみください

…メダルナ村が所属するコレデナイト領。

 その領地を治めているコレデナイト辺境伯爵の元へ、ある報告が行われていた。


「何?メダルナ村付近の村で、魔獣の熊が出ただと?あの村には衛兵などはいなかったから、相当不味くはないか?」

「それが、どうやら討伐されたようで…」

「あの村の者たちによってか?」


 辺境伯爵の領主の館にて、その主人であるコレデナイト伯爵が報告を聞いて問いかければ、報告を持ってきた執事が応える。


「村のものと言いますか、正確に言えばこれからなろうとしているらしいのですが…その者が、熊の魔獣を撃破したということです」

「魔獣を倒せるものが住み着くのであれば、それはそれで喜ばしいことだとは思うが…その様子だと、何かあるな?どこかの領地から流れついた訳ありのものか?」

「いえ、そもそもの話ですが、人ではなく…魔獣を討伐したのは、蜘蛛の魔獣であり、それに人の体がくっついたもののようなのです」

「なるほど…ん?どういうことだ、それは」


 執事の報告を聞き、一瞬疑う伯爵。

 魔獣の中にも人の言葉を理解したり交流を持とうしたりするものがいるらしいという話は聞いたことがあったが、実際に目にしたことはなく、それが自身の収めている領内で起きたということで真偽を確認したくなる。


「はい。村長のほうからも報告が上がっているのですが、その魔獣の名前はハクロと名付けられたようで、村人の一人、まだ若い少年が番ということでやってきたようです」

「…番だと?嘘は言ってないだろうな?」

「間違いなくそうだと、そのハクロと名乗る魔獣自身が、そう告げております」



 人に対して、結ばれようとする魔獣の例がないわけではない。

 魔に堕ちたといわれるような獣であっても、その理性までもが落ち切っておらず、むしろ向上してより関わってくることもあると耳にする。



「…熊の魔獣を、人に害を及ぼす前に討伐してくれたのはありがたいが…大丈夫なのか、その魔獣は。騙して夜な夜な人を喰らう化け物だとかはないよな」

「その可能性も考えましたが、否定しているようですね。そもそも、人肉を食べたこともないそうです」

「人を喰らうような奴ではないというのは、口だけならばなんともいえるが…他に何か情報はないだろうか」

「それが…どうもその魔獣、他にもいろいろとやらかしていたようで…」










「…えっと、放浪の旅の中で、様々な魔獣やそれ以外の強者と戦ってきたの?」

【ええ、旦那様のそばにいるには最強の魔獣になったほうが良いという思いがありまして…色々と武者修行もしましたよ】


 色々あって疲れたが、それでも現実というのは容赦なくやってくる。

 流石にまだ10歳の少年の身もあって、婚姻の式などすぐに行うわけにもいかず、お互いに出会ったばかりというのもあって本日から一緒の部屋で過ごすことになったのだが、どうやって会話をすればいいのか。


 両親に話をして一緒に考えて、その結果として彼女が俺と出会う前には何をやっていたのか、経歴を聞いてみれば良いということになったのだが、その内奥がツッコミどころ満載だった。



 番がいるという認識があったというのは良い。

 最強の魔獣になろうとしたというのも、まぁなんとなく強さを求めたくなるような気持というのは理解できないということもない。


 だがしかし、そのためにやってきたことが無茶苦茶すぎた。


「滅びの谷の黒竜を討伐、大空をゆくワイバーンの群れの殲滅、人里から離れた遺跡に出現するゴーレムたちへの殴り込み…それ、全部本当のことなのか?」

【はい!しっかりと風の噂で、これ絶対に強い相手だから戦って勝てばより強くなれると思って、勝負を挑みまくってきたんですよ!!ああ、一応嘘じゃない証明として、いくつか戦利品をもって…えっと、どこにしまったっけ】


 そう言いながら彼女はごそごそと懐を探る。


【空間収納魔法ってのもので、ウニウニの魔女って人と対峙した際に教えてもらったので、そこに入れたのですが…あったあった、これですね】

「空間収納魔法って…いや、まずその魔女の名前もおかしいけど、これか?」


 気になる話が出てきたが、それよりもまず彼女が出してきたのは、漆黒の鱗。


【黒竜の逆鱗ですね。流石に竜相手は結構大変でして、真正面からの勝負はつらくて…なので、途中でわざと喰われて、お腹の中から攻撃しまくって倒したんですよ】

「一寸法師かよ」

【こちらはコカトリスとオーク合体したような魔獣の手羽先の骨です。石化ブレスを吐いてくるので厄介でしたけれども、倒せましたし、ほぼ骨だけですが、ゆでると美味しいだし汁は出てますね】

「すでに肉は食いつくされているし」

【きらきらした綺麗な石でできた魔獣から作った、包丁です。旦那様へ美味しい料理を作るために、使いますね!】

「名刀よりもすんごい切れ味良さそうだし、包丁に使うのがもったいないほどの豪華さがある」


…ハクロ、色々とやり過ぎじゃないかな?


「というか、これ一つだけでもとんでもない素材ばかり…いったい何を思ってここまでやったの?」

【え?それはもちろん、旦那様のためですよ!!私自身が強くなければいけないって思いもありましたので、自身の強さを磨くために、色々と戦ってきましたからね!!それに、人間の元へ嫁ぐ際には、何かと道具があったほうが良いって既に調べているんですよね】


 ツッコミどころが多いが、それでも彼女なりに準備をしてきているのはわかった。

 滅茶苦茶褒めてほしそうな顔をしており、そんな顔をされたら何も言えなくなるだろう。


「…とりあえず、いくつかは領主様宛に流したほうが良いかな」

 

 いくらなんでも、一介の村人が所有するには過ぎたものが多い。

 こういうのは下手に目を付けられると厄介ごとの種になりかねない。


 それに、こういうのを倒せるハクロを狙ってきて、怒りを買う馬鹿が出る可能性も否定できないので、ここは正直に権力者の手を借りたほうが良い。






「…というわけでございまして、領地に住む以上は領主様へこちらをお納めに…と」

「体よく、厄介ごとの種になりそうな品々を、献上する名目で押し付けられて来たと」


 これが金などの欲望に目をくらむ亡者のごときものならばいざ知らず、この領地を治めているコレデナイト辺境伯はまともな方のため、そんな目くらましにくらむことはない。

 そのうえ、有能とはいかずも理解力があったために、どういう意図で押し付けられたのかが分かってしまう。



「これらを持てるほど、様々な魔獣を屠れる魔獣が居ついたということか…はは、ははははは」

「えっと、伯爵様?」

「ふはははははははっ!!ふは、ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!!どう考えても、権力者に対して媚びつつ押し付けまくっているとか、どんな面倒ごとの種がこの領地の村にやってきたというんだぁぁぁぁ!!しかも献上されているものがものだけに怒りにくくありつつも面倒ごとを押し付けられているのが分かるから、言いようのない感情が爆発するわぁぁぁぁぁl!!」

「誰か―!!伯爵様がガチでご乱心なされたぞぉぉぉぉぉ!!」


…悪人ではないのだが、それでもうまく立ち回れるほどの度量はない。

 そんな目に遭わされているのに、ものがものだけに文句も言いづらく、盛大に爆発する辺境伯であった…


苦労人が出るのはもはやお約束

主人公よりも周りのほうが大変なんですよね‥

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