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第三十二話 知らぬところで、やらかされるのも

…メダルナ村改めてメダルナ街へと変わりつつある中でルドとハクロが一緒にどこにプチ旅行へ向かうかと話し合っているその頃。

 遠く離れた地では今、魔獣学会が開催されていた。


 どこからともなく発生したり、あるいは生殖で増えたりなど様々な謎が多い魔獣だが、研究することで得られる価値は多い。

 その外殻や肉、体内に存在している魔石など、余すところはなく、死してからだけではなく生きている間も鉱石や何かしらの物質を生みだしていたりなど色々とある。


 数が多いゆえに、どれがどのようにできるのかという情報も集めるには一苦労であり、各地で研究をしている人たちはその情報の正誤性などを確認するため、年に数回ほどの学会が開催されるのであった。


「それでは、本日の学会内での注目は…アラクネか」

「惜しくもいなくなった滅びの谷の竜の話題よりも上に出てきたものだな」


 お互いに情報を交換しつつ、本日の学会で出てきた話題に関して、魔獣を研究している各国の研究者たちは話に花を咲かせる。

 どこの国でどのように得られるのかは運任せな部分が多いが、面白い情報が出てくれば惜しむことなく確認しあっていく。


 きちんとあって言うrのかどうかという正誤性の確認も行う意味で秘匿されまくるわけではないのだが、まずは研究者としての立場というべきか、好奇心がくすぐられるからこそ、惜しむことなくわかっている情報が出されていく。


 その中で今回の話題に上がってきたのは、学会内で正式な種族名の承認が行われた最新の魔獣…アラクネ。

 下に蜘蛛が、上に人がいる異様な魔獣…人のような理性を持つ魔獣というのは珍しいが、付き合い方をうまくすれば利益は途方もないほど出てくるだろう。


 だが、逆に言えば付き合い方を一歩間違えれば、それこそとんでもない被害が出るのもあり、好奇心という暴れ馬をいかに制御して情報を得ていくのかが重要になる。


「人を番として慕い、それでいて魔獣としての強さも破格なレベルか…各方面から見ても、非常に興味深いのが出てきたな」

「研究材料としての糸の提供や、彼女がこれまだ戦闘したことのある魔獣の素材などももらいましたが、これだけで十分すぎるほどの情報があるんですよねぇ」

「これ、下手すると金属の鎧よりも軽くて頑丈な防具とかもできそうだな…衣服用、罠用、戦闘用などに分けて糸の質が異なっているようだが、やり方次第でかなり化けるぞ」

「それでいて、本人曰くウニウニの魔女からの魔法も習っているそうですし…ウニの召喚はできないようですが、それでも恐ろしい相手に良く師事を受けましたね」

「ウニウニの魔女…うっ、頭が」

「ウニの魔獣を手荒く調べようとした輩が見事に怒りを買って…ううう、おぞましい事件だったなぁ…」


 過去のトラウマも一緒になって掘り起こされたりする者もいるが、それでもハクロという存在に興味を持つ魔獣学者は多い。

 色々とできるからこそ、多方面から興味を惹かれるようで、まだまだ研究の余地はあるだろう。



「それでいて、彼女自身が割と快く研究に協力的なのも良いな…」

「蜘蛛部分に恐怖感を覚える人もいるだろうが、それを覆い隠せるほどの美女な肉体もあるのがやりやすいところか」

「むしろ、その蜘蛛部分のモフモフ感も良いような…あのおみ足に踏まれたいような」

「おい、誰か変な扉を開きかけているぞ」

「ほっとけ。そいつ、足が多い魔獣に踏まれまくった結果、爆誕した多脚フェチだからな」

「なるほど。問題ないのか」


 問題がないのならば別に良いだろう。

 下手にやらかす輩が出なければ、今後も順調に研究を続けることが出来るのだ。


 それがどれほどの利益が出るのか、長い目で見てもかなり多くあり…だからこそ、こちらはこちらで厄介事が出てくることも気にするのである。


「それにしても、これほどのデータがあるのは良いが、既に他の国々でも噂を聞いていたか」

「ああ、ガルトニア王国以外でも、他国で噂として入ってきているぞ」

「美しく、それでいて強く、白蜘蛛姫の名で結構名が通っているようだな…」


 研究者たちはそれぞれ別の国々に住んでいる人が多いはずなのだが、どうやらすでにあちこちで噂として耳に入ってきているところは多いらしい。

 人の口に戸は立てられず、噂が広がっていくのはどうしようもないことだろう。


「しかし、こうやって実際の研究データなどの資料を見ると、噂が大体当たっているのは良いが…そうなってくると、厄介なのも増えるだろうな」

「ああ、中身の重要さもあるはずなのに、外面や短期的な価値しか見えない輩が動くのは間違いないだろう」

「聞いた話だと、どこかの怪しい研究機関が、次の材料にどうにかできないかって探りを入れているって話もあるな」

「あとは、その番とされる少年を暗殺して、都合よく次の後釜に座れないかとか、あるいは奪えないかなども考えている奴らも出ているらしいが…」

「それはそれで不可能だと言いたいな…もしもやれたとしても、その後に出てくる損害がひどすぎる」


 多くのデータが集まってきているからこそ、万が一のことが起きた場合、どれほどの被害が出るのかという予測もしやすいのだが、その規模が半端ではない。

 しかも、やらかした奴らだけが背負えばいい話なのに、下手をすれば全てを巻き込みかねず、どれほどのものになるのか計算したくないほどだ。


「念のため、帰国後はやらかしそうなやつらが動かないように、先に手を回したほうが良いな」

「ああ、それで動こうとしたら、こちらの方も対抗しておくべきだろう」

「めったにない研究材料を失いたくはないからな…動機として我々のは不純なものが多いが、それでも世に引き起こされるかもしれない危険を取り除くのは多くの利益になるはずだ」


 様々な考えが入り混じるが、現状の判断としては可能な限り保護に近い形で動くのが良いだろう。

 どこかの施設へずっと閉じ込めてという案もありそうだが、それを望まない可能性が高く、ならばできる限りのことを支援し、受けられる利益をしっかりと守るほうが良いだろう。


 そう思いつつ、魔獣学会での議論は白熱するのであった…



「しかし、本当に美しい容姿をしているようだが…気になるのがあるんだよな」

「何だ?」

「いや、人間の少年を番に選んだというのはおかしな話ではない。魔獣の中には同族以外のものを選ぶものもいるという事例があるが…気になるのは、もしも子をなした時に、どうなるのかがわからんのだよ」

「あれ?蜘蛛の魔獣でもあるから、基本としては卵では?」

「しかし、人の肉体の割合もあるから、人と同じようなタイプともいえるし…その子供も、種族名としてアラクネが付くことになるのか、人間になるのか、はたまたはハーフなのか…」

「やばいな、この個体だけで終わらず、後年にも続くとは…ううむ、今、こうやって研究に関われる時代に生まれたことを感謝すべきだろうか…」

本人たちの知らぬところで、自然とできる守りの輪

研究目的な部分があるが、周囲のことも考えてである

さて、そうとは知らずにプチ旅行を計画しているようだが…

次回に続く!!


…ははは、今週~月末まで地獄にならなければいいなぁ

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