第二十七話 飛んで火にいる…
…放課後になり、ルドたちは教会へ向かった。
聖女様による皇女の解呪が行われていることもあって、警備もしっかり厳重に行われており、虫一匹そうたやすく通すことはないだろう。
【まぁ、それでも潜り抜けるものがいるかもしれないと思って、警戒するに越したことはないですね。罠もしっかり新しいのを用意しておきましょう】
「既に何名か、捕らわれているみたいだしなぁ…」
教会の壁に大の字になって張り付いている者や、全身に真っ赤な液体が塗られて悶え苦しんでいる者が目に付いている。
騎士たちは既に慣れたのか、罠にかかった者たちを冷静に対応して捕縛しており、連行していく様子がいくつか見ることが出来た。
「というか、あの赤くなっているのは何でなの?血じゃないっぽいけど…」
【ウルトラ激辛スープを詰めて、はじけ飛ぶようにした仕掛けにかかったようです。ほんの一滴でそこそこ刺激的な味わいになる調味料ですが、原液そのままたっぷりと詰め込んだので、とんでもないものになっているのでしょう】
とにもかくにも、罠にかかっている人たちはさておき、今は皇女様の解呪と加護の施しである。
騎士たちと手続きをして中に入り、案内された部屋に向かうと、そこでは今まさに解呪作業が行われている光景があった。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!」
叫びながら手をかざし、光を出している聖女クラウディア様。
そしてその手から放たれる光を浴びているのは、解呪対象のメラドゥス帝国第二皇女にして聖女候補のディア様という方。
見た目はルドと同い年位の少女のようだが、ベッドの上で寝ている光景はただ眠っているというよりも、周囲に何か黒い靄が渦巻いており、光に抵抗している影響があるのか、どこか寝苦しそうな表情をしているだろう。
「中々しつこいわね…でも、これでようやく終わるわ」
【聖女様、何かお手伝いできることはありますか?】
「あら、ハクロちゃんいらっしゃい。ええ、今はまだいいわよ。加護をかける時に手伝ってくれればいいだけで、解呪のほうはこのまま任せてね。ほわぁぁぁぁぁぁ!!」
ぐいぐいっと腕を大きく動かし、気合を入れる聖女様。
なんというか、もうちょっとこう、聖女様の解呪という光景は祈りを捧げて穢れを吹き飛ばすようなイメージを持っていたのだが…確かに祓うものとしては間違ってないが、ちょっと肉体派のような感じがある。
それでも解呪はじわりじわりとできているようで、聖女様の光がさく裂するたびに、皇女の身にしつこくまとわりついていた黒い靄の様なものが少しづつ薄れ…
「これで終わりよ!!そいやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
どばぁぁっぁんと勢いよく手を突き出し、光が一直線に皇女の肉体全体を包み込んだかと思えば、次の瞬間にはぱちんっとはじけ飛ぶような音がして…光が消え失せると、穏やかな寝息が聞こえ始めた。
「ふぅ…これで、ほとんど終わったわね。しつこい汚れのように何度も何度も抵抗されたけど、根こそぎ引き剝がせたわ…」
ふぅっと息を吐いてそう口にする聖女様。
相当体力を使われたようで、汗をかいているようだ。
「でも、ここからは続けてくる可能性を考えて、すぐに済ませないといけないわ。ハクロちゃん、ちょと手伝いをお願いね」
【わかりました。えっと、聖女様と手をつないで、その中の流れを真似すれば良かったのでしょうか?】
「ええ、そうよ。あなたは聖女じゃないけど、力は強いわ。同じような感じで、力を使えば可能なはずよ」
そう言いながら聖女様が手を差し出し、ハクロはその手をつかむ。
どうやら聖女様の力をハクロに感じ取ってもらい、その力と同じようなものを真似してもらうらしい。
口で言うのならば簡単そうだが、それでも本当にできるのか。
…いや、なんだろう。絶対にできるような気がする。
そもそも、彼女の場合そういう才能も結構あるらしいからな…剣術の授業のほうで、過去に戦った人の剣術を会得していたって話も聞いているし、やれておかしくはない。
そう思っていると、聖女様の手が光り始め、続けて手をつないでいるハクロの体も同じような色合いの光を放ち始めた。
「あらあら、事前にちょっと練習でやってもらったけれども…相当強いわね。ええ、これなら問題なくやれそうよ」
【でも、聖女様の真似をして同じようにしたいのに…何故、私の体が発光し始めるのでしょうか?本当は、同じように手から光が出るはずですが、全身って…】
「大丈夫よ。あなたの場合、まだ聖女の力に慣れてないから、全身に聖女の力がめぐってしまうだけなのよね。集中すれば同じようにできるけど…それでも、これだけの強さがあれば大した問題にはならないわよ」
全身が輝いていくハクロだが、その力は聖女のもので間違いなく、このままやってもきちんと加護を施せるらしい。
普段は手のほうに力を集中させることで、より効率的にやっているらしいが…こんな風になってしまっても力が強いから大した問題にはならないようだ。
「むしろ、本当に惜しいのよねぇ…ねぇ、それだけの聖女としての強い力を発揮できるなら、やっぱり本格的に聖女としてなれるように修行始めないかしら?」
【やらないですよ!!私は旦那様の素敵なお嫁さんになることで、聖女は違いますからね!!】
「まだ考えていていいわよ。それじゃ、今は加護のほうに意識を向けましょうか。ハクロちゃん、真似をして頂戴」
聖女様の言葉を返しつつ、その動作に合わせてハクロが動く。
先ほどの解呪は激しい動きをしていたが、今度はその場から動くことはなく、祈りを捧げるような姿勢を取る。
手をつないだままでやれるのかと思ったが、力を真似したら後は普通に感じ取ることが出来るようで、手を放して同じように力を扱っていく。
ふぉんふぉんっと不思議な共鳴音が鳴り始め…それと同時に、皇女の周囲に光の魔法陣の様なものが浮かび上がり始めていく。
「それじゃ、後はこうして…こう、力のうねり具合を調整していくだけよ」
【ええっと…こうですね】
目には見えない力の流れだが、聖女様たちには感じ取れているようで、徐々に輝きを増していく。
「そしてここから押し込んで、ぐいっと一気にはめ込んで!!」
【よいしょっと!!】
そしてようやく終わりを迎えたようで、魔法陣の光が一瞬だけ爆発するように強くなって…消え失せ、無事に加護が施されたようであった…
【ふぅ…これはこれで、中々大変ですね】
「そうよ。でも、中々良い感じにやれたようね」
【ふふふ、この後に、旦那様に加護を真似して施しますからね。失敗しないように、感覚はしっかりと掴めました!!】
…そういや、そんなことを言っていたけど…この様子なら、大丈夫かな?うん、そんな変なことにはならないと思いたい。
解呪に成功し、加護も施せた
これで、皇女の身はある程度守られたのだろうか
そうなるとあとは、ハクロが色々やるだけなのだが…
次回に続く!!
…本当に大丈夫だよね?




