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閑話 友は語る時もある

SIDEルンバ


…村から離れて学園での生活になって、そこそこの月日が経過した。

 先日、村での友人だったルドっちが攫われる事件が起きたものの、何とか無事に学園に戻ってきて、一緒に笑いあって遊ぶことはできているのは良いだろう。


「でもなぁ、ルドっちはちょっと変わったよな」

「え?何が?」


 図工の授業中、粘土をこねながらふと、俺っちはそうつぶやいた。


「何がってそりゃ、最近ルドっちは朝、早く起きてランニングをしていたり、体育の授業で他の奴らよりも本気で体を動かしたりしているじゃん。前まではそこまで自体を動かさなかったのに、かなり動かすようになったと思ってね」

「あー、なるほど。それか…まぁ、あれだ。体を鍛えようと思って、まずはできるところからやってみているんだよね」

「鍛える?」


 こねこねと粘土で本日の課題である、自由に想像したものの造形をこねつつ、ルドっちは答えてくれる。

 どうやら彼は今、体を鍛えようとしているようで、基礎体力からつけようとしているらしい。


「普通に筋トレとかやっていきたいけど、まだ基礎として体力を向上させてからと思ってね。…ほら、俺、先日誘拐されただろ」

「ああ、されたね。クレヤンと一緒に慌てたぜ、あの時は」

「そのこともあって、結構自分弱いなと思って…ちょっとは強くなろうとしているんだよ」


 なるほど、そんな理由があるなら納得できるだろう。

 友人である俺っちがいうのもなんだが、ルドっちは他の生徒たちに比べてちょっとなよなよとしているというか、少し弱いように思える。

 年齢は同じなはずだけど、なんというかまだ幼い部分があるというべきか、そのままの状態であれば他の奴らに舐められるような感じだと言っても良いのかもしれない。


 とはいえ、そんな見た目通りの弱々しい奴ではないことは俺っちたちは知っている。

 なんというか、ルドっちは確かに他の奴らよりも弱い様に見えるのだが…その中身は、時々もっと何か、別のものであるように思える時があるのだ。

 芯が強いような、心が俺っちたちよりも一歩先を進んでいるような、どこか大人びているような部分。

 見た目とアンバランスな中身だとは思うのだが、だからこそその中身の強さがルドっちの強いところであると思える…けれども、やっぱり外が弱いのはルドっちにとってどうにかしたいのかもしれない。


 だからこそ、トレーニングを積み上げていくことで、強い男になりたいのだろう。

 鍛えあげて、中身に伴う強さを手に入れたいという気持ちは、男としてはよくわかる。


 でもなぁ、一つ納得しないところもある。


「…強くなろうとしているって言うけど、お前の彼女のハクロさんのほうが強いじゃなぇか」

「うぐっ」


 指摘されて、図星過ぎてうめき声をあげるルドっち。

 そう、こいつはまだ俺っちたちと同年代の癖に、早くも彼女が…魔獣とはいえ、滅茶苦茶綺麗なお姉さんのようなやつがいるのである。

 正直、村で生活していた時も羨ましいとは内心思っていたのだが、彼女は美しさだけではなく強さも相当なもの。


 何しろ、村の周辺の魔獣を全滅させたりとか、俺っちたちどころか大人たちでも苦労するような熊の魔獣などもを倒したり、時々魔法の授業でなんとかの魔女の魔法だったり、剣術の授業で9刀流などと無茶苦茶な強さを持っているのである。


 そんな美しさと強さを兼ね備えたような彼女を持っておきながら、強くなろうって…贅沢だと思ってしまう。


「強い彼女なら、無理にルドっちが強くなる必要はないとは思うんだけどな~」

「そりゃそうかもしれないけど…でも、この間攫われたときにさ、ほら、相当心配をかけたからね。…もしも俺が強ければ、彼女にいらない心配をさせなくて済んだかもしれないのに、結果として結構やらかしたのが…ね」

「…」


 誘拐された先で、何があったのかは公表されてはいない。

 学園内では、ただの誘拐事件というだけで無事に帰ってきたという情報が流れているだけだが、表立って子供には聞かせられないようなことがあったと思うところもある。


…貴族家がつぶれたり、ハクロさんが聖女様の養女になったという話もあるし、何かがあったのは間違いないだろう。

 戻ってきて身体に異常はないようだったが…考えたら、聖女様が関係しているってことは何か癒されて治った状態にされていて、本当はもっとひどい目に遭ったのではなかろうか。


 その証拠に、誘拐事件後に時々ぱしんっと何かが叩くような音がしたりしたときに、軽くルドっちが人には見せないようにしつつも、少しだけ怯えた様子を見せるのはわかっている。

 村で一緒に過ごしてたクレヤンっちも気が付いているようで、問いかけはしないが…何かがあったのは間違いないのだろう。


 ただ強くなりたいというだけではなく、何かもっとルドっちが自分を変えたいと思うようなことがあったはず。



…まぁ、それが何であれ、それ以上俺っちたちは踏み入って聞く気もない。友達だからこそ、トラウマのようなものがあるのならば無理に触れずに、ルドっち自身が払しょくできるようになるまで、待つというのもありだろう。

 友達だからこそ、支えてあげるべきなのだ。

 そう、決して良い顔を見せ続けることで、ハクロさんに俺っちたちに好印象を持ってもらおうとは考えてもないのである。ほんのちょっとあるようなない様な気がしなくもないが、やましい気持ちは一切ない…と言い切りたい。



「それはそうとルドっち、何作っているんだ?俺っちは魔獣ゴリライオンを作りたいんだが…ルドっちのその名状しがたき物体は何だ?」

「え?これ?猫だぞ」

「…うねうねぐにゃぐにゃして、まったくそうは見えないぜ?」

「こう、リラックスしてくつろぐ猫のつもりで作っているんだけどな」


 うん、ルドっち。お前は筋肉を鍛える前に、その細工の腕前をまともな方に直せと言いたい。

 そういやこいつ、他のことは平均並みに良いはずなのに、こういう造形ものに関しては昔からおかしなものになっているような…あっちで犬を作っていたけど、途中で思い付きで手足を増やして魔獣のようなものを作りつつあるクレヤンよりも酷いな。


 ふと、そういえばハクロさんはどうなんだろうと思って周囲を見渡せば、彼女もどうやら今回の授業に参加しており、同じく粘土に手を出していたが…


「わーお…」


…生み出されたのは、ルドっちのとは比較にならないほどの、今にも羽ばたいて動き出しそうな鳥の像であった。


「ハクロ、凄っ!?」

【うーん、色々とやってますけど、粘土って難しいですね…中々想像通りに作れないです】

「いやいや、それ十分天才の領域にあると思うんだけど、何が不満なんだ?」

【昔、すごくキラキラとした綺麗な鳥を見て…それを再現しようと思って作っているんですよ。なんて鳥だったのか、魔獣だったのかもしれないけどもう一度見て見たいなと思うようなもので…まだ再現できないですね】


 これだけの造形美で十分だと思うのだが、それでも満足しないモデルは何の鳥なのか、そのモデルに関しての謎が議論され始めるのであった…


【もっとこう、尾羽が長くて、輝いて…粘土じゃその表現が厳しいですね…旦那様にも見せたいほど綺麗だったあの鳥、また見たいですねぇ…】

 

友人も時として彼らを語りたくもなる

見ているからこそ理解し、友だからこそ見守りたい

リア充なのは正直許せないが…そこはまぁ、後々手助けが欲しいのである…

次回に続く!!



…さて、何を彼女は見たのだろうか。色々と候補がありそうだ。

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