モンスター使いの日常
短編になります。
とあるスキルを授かる10歳の儀。
「カール、其方のスキルは、モンスター使いじゃ!」
この日、俺の人生がきまった。
とある魔の森。
モンスター使いのスキルを授かった俺は早速、村の外れにある魔の森で修行することにした。
まあ、村に居ても、モンスター使いのスキル持ちはいい顔をされないから、どっちみち村には居づらい。
最低限の食糧を持って、魔の森に来た。食糧が無くなったら、村の家に帰って母さんに食糧を貰って、また魔の森に通うつもりだ。
モンスター使いのスキル自体珍しいらしく、手探りで自分のレベルとスキルLVを上げていこうと思う。
「ギギギィ」
早速、はぐれゴブリンがいた。
身長は130cm。俺と一緒だ。
錆びた剣も持っている。
俺も片手剣を持っている。
戦力は互角。
取り敢えずモンスター使いの固有スキル、〈操る〉をゴブリンに対して使ってみる。
するとこんなメッセージが出た。
【対象種族をまだ倒し事が無いので、操れません。】
なんと?!ということは、一回でも倒した種族は操れるということか??
「ギギィ?!」
ヤバい。気付かれた。俺とゴブリンの戦力は互角。倒せるかどうかは、運次第。
これは、最初からハードだな。
しかし、殺らねば殺られる。
ゴブリンは俺が小さいせいか、油断して、錆びた剣を力任せに大振りしてきた。
俺は10歳だが、幼い頃から剣術道場へ通っている。
こんなテレフォンパンチみたいな剣筋など余裕で見切れる。
ゴブリンの錆びた剣を持っている腕を俺の片手剣の腹でとっさに叩いてやると、ゴブリンの錆びた剣はあさっての方向へすっ飛んでいった。
その隙に俺はゴブリンの喉へ突きを放つ。
見事に決まり、ゴブリンは絶命した。
よし!どうやら俺の剣術はゴブリンに通じるらしい。
それにしても〈操る〉の条件が分かったのはありがたい。
早速試すべく、ゴブリンを探すこと10分。
「ギギギギィ」
いた。よし〈操る〉!!
「ギギィ??!」
ん?ゴブリンの動きが止まったようだ。
試しに踊れと念じてみると、なにか面妖なダンスを踊りだした。
おお?!操れたか?!しかし、効果時間とか条件がまたあるのかもしれない。
待つ事15分。
「ギ?!ギギギィ!」
ゴブリンがこちらに向かって襲ってきた。
ふむ、効果時間は15分らしい。そして、操る効果が切れると、俺に襲いかかってくるらしい。
取り敢えずもう一回操っておくか。
〈操る〉!!
「ギギィ?!」
よし、ではこの操ったゴブリンを他のゴブリンに襲わせてみるか。
早速、他のゴブリンを探すこと10分。いた!!
よし、ゴブよ!!あのゴブリンを襲え!!
「ギッギギィ!!」
待つこと2~3分。なんか、俺の操ったゴブリンが負けそうだ。
あ?!負けた。そして、襲ったゴブリンが俺の方にダッシュしてきた。
なるほど。俺もゴブリンの敵愾心を稼いでるんだな。
しかし、ゴブリンはゴブリン同士の戦闘で体力は減っている。
俺が石を投げつけただけで、ゴブリンは絶命した。
これか!!これがモンスター使いの戦いかたなんだろう!
操ったモンスターを別の同じモンスターに襲わせて、勝った方を俺が美味しく頂く。このルーチンがモンスター使いの動き方か。
俺のステータスには新たにゴブリンLV2という文字が浮かび上がっている。俺はこれを自然と理解出来る。おそらく、いっぺんにゴブリンを2匹同時に操れるんだと思う。
そして、〈操る〉の効果時間も少しふえている。
あとは、簡単なお仕事だ。
適当に操って!適当に襲わせて、勝ったゴブリンを俺が倒す。
経験値はゴブリン2匹分。上手い。
因みにまだスキルに慣れてないので2匹同時には操っていない。
ほくほくな経験値が入り、俺のLVは早くも3になり、ゴブリンLVも10になったのだが、ここで問題発生。
ゴブリンの上位種のボブゴブリンにご登場された。まだ、見つかっていないが、ここでLV上げをしていたら、いずれ見つかるので、先手をうちたい所だ。
取り敢えずコブリンを2体同時に襲わせて、倒されそうになったら、また他のゴブリン2体を引っ張ってきてホブゴブリンに襲わせるっていうルーチンでいこう。
俺は意を決して、作戦を決行。
したのだがホブゴブリンは呆気なくゴブリン3体目で撃沈。俺が操って勝ち残ったゴブリンもサクッと処理。
意外とホブゴブリンが弱いのか、それとも数の暴力の前には上位種族も太刀打ち出来ないのか。
まあいい。
俺のステータスには、新たにホブコブリンLV1が生えた。
しかも、ホブゴブリンが持っていた上質な片手剣までゲットした。
おそらく他の冒険者から奪った物だろう。
南無三。ありがたく使わせてもらおう。
しかし、俺は慢心しない。
ホブゴブリンの平均LVは5だったはず。現状LV5の俺が〈操る〉を成功させることは難しいだろう。俺のLV自体が5になるまでは、ゴブリンを中心に操って行こうと思う。
この日、俺はLV5なったところで家へ帰ることにした。
翌日、母さんに弁当を作ってもらって再び魔の森に来ている。
今日は俺のLVがホブゴブリンに追いついて5になったので、〈操る〉をホブゴブリンに試してみようと思う。
まずは、操れなかった時の為に、村への逃走ルートを確認。
探すこと、半刻。
「ギャギヤギヤ!!」
いた、ホブゴブリンだ。
〈操る〉!!
よし!成功だ。
本当はこの操ったホブゴブリンを他のホブゴブリンにぶつければいいのだが、ここら辺にホブゴブリンはあまりいない。
ホブゴブリンを普通のゴブリンに当てるのがいいだろう。
その後順調にホブゴブリンをコブリンに当てていったのだが、最初に操ったホブゴブリンで10体ものゴブリンを倒した。
さすがに上位種族ともなると違う。嬉しい誤算だ。
俺のLVも7になり、魔の森のもう少し奥に行ってもいいだろう。
とは、思ったがこの日は一旦、家に帰ることにした。
翌日、魔の森のもう少し奥、LV帯でいうと、チュートリアルを抜けてやっと冒険の始まりという所か。
俺にとっては充分冒険だったが、これからが本番。やや、緊張してきた。
少し奥にすすむ。ここら辺はホブゴブリンを中心に群れのゴブリンもたむろしている。
俺はステータスを確認。
〈操る複数〉
を確認。
これは、一度の〈操る〉で複数のモンスターに〈操る〉をかけれることができる。
ゴブリンの群れにはこれが生命線であり、このスキルがあるから、もう少し奥までいく決断も出来た。
そんな、考え事をしていると、ゴブリンの群れを発見した。
しかも、群れのリーダーに一体ホブゴブリンが混ざっている。
ここは、まず危険度の高いホブゴブリンを先に遠くから操って無力化した後で、〈操る複数〉を残ったゴブリン達にかけよう。
最悪ホブゴブリンさえ操れたら、大丈夫だろう。
〈操る〉!!
俺の目論見どうり、ホブゴブリンを使役。
〈操る複数〉!!!
残ったゴブリン達も二体を残して使役。どうやら、〈操る複数〉は成功率が悪いらしい。ゴブリン一体なら、ほぼ100%操れていたので、おそらくそうだろう。
操れなかったゴブリン二体を処理。
今、俺の前にはホブゴブリンと三体のゴブリンが居る。
少し大袈裟だが軽い軍団が出来た気分だ。
これなら、ここら辺一帯を狩場に出来る算段がつくが、イレギュラーもある。ホブゴブリンの上位種族、ゴブリンジェネラルの存在だ。しかも、LVが分からない。
どしたものか。悩んだ結果、魔の森の入り口付近に戻って、あまりいないはぐれホブゴブリンを倒すことにした。今までコツコツやってきたのだ。初心を通すのもいいだろう。
それから、半日かかってホブゴブリンを6体他を倒し、もうこれ以上はホブゴブリンでは経験値が体感で入らないLV10になった。
それと同時にスキル〈使役強化〉を覚えた。ここではもうこれ以上の成長は見込めない。
腹をくくる時がきた。
ゴブリンジェネラルを倒そう。
再び魔の森の少し奥まで移動。
ホブゴブリンとゴブリン4体を操り、使役強化を発動。
使役モンスターの賢さが少し上がったのが伝わってきた。これで使役モンスター同士で連携が取れるのが何となく分かった。
それと、ゴブリンの武器を倒したホブゴブリンから奪った上質な剣と上質な盾に変えておく。
そして、探すこと5分、奴がいた。
デカイ。180cmはあるだろうか。
ここまで来たら後先考えても仕方ないのは頭では解るが、身体が震えてしまう。
意を決して、ゴブリンジェネラルに特攻させる。俺も遅れるように特攻。ゴブリンジェネラルの初手を見極めて、俺自身の立ち回りをきめるつもりだ。
「ゴァァァ!!」
ゴブリンジェネラルとホブゴブリンがぶつかる。ホブゴブリンが押されているが周りのゴブリン2体がゴブリンジェネラルに投石を始め、残りの2体が切りかかる。
その時 、ゴブリンジェネラルがスキルを発動したのが分かった。
〈威嚇〉だ!!?
ゴブリン4体は怯え竦み、動きが止まり、ホブゴブリンは何とか堪えている。
ここは、〈威嚇〉の範囲外にいた俺がゴブリンジェネラルの正面を受け持つしかない。
ガツン!!!
くっ?!重いがなんとかいける。
戻ってLVを上げてなかったら吹き飛ばされて負けていたと思う。
と、ここで、隠しスキルが俺に発動した。
〈循環〉:使役モンスターの先頭に立って戦闘を行った場合、使役モンスターの能力が使役者にフィードバックされる。使役モンスターが多ければ多い程、強ければ強い程、使役者は強化される。
有難い。
このスキルにより、ゴブリンジェネラルに押し負けない位、力がみなぎってきた。
いける。
ゴブリンジェネラルが再び〈威嚇〉を使うが俺はものともしない。
ここでまた、隠しスキルが発動。
〈循環:極〉:使役者の強化前の能力が一部、使役モンスターへ上乗せされる。
この隠しスキルと同時に、怯え竦んでいたゴブリン達が立ち直った。勝機だ。ゴブリンジェネラルの正面を俺が受け持ち、背面や側面を使役したゴブリンで囲む。
「ゴァァァ、、、」
倒せた!!やった。正直隠しスキルが無かったら危なかったが、これでルーチンが俺の中でできた。
しかし、まさか俺がゴブリンジェネラルまで倒せるとは、、。
もう疲れたし、集中力も切れているので、この日は家に帰った。
母さんにゴブリンジェネラルを倒したと自慢したら、「あら、そう?がんばったわね、お風呂はいってらっしゃい」と、言われた。
多分、ゴブリンジェネラルはおろか、ゴブリン自体も分かってないと思う。
だが、そこが、母さんの良いところでもある。
平和な村だ。
昨日、倒したゴブリンジェネラルから頂いた、ミスリルの剣と盾を俺のメイン武具にアップグレードしておいた。
操っていた使役ゴブリン達はスキル〈解放〉で魔の森に放ち、使役ゴブリン達が持っていた武具は、魔の森の中に秘密基地の拠点を作って、そこに保管さしておいた。
今日は、昨日出来上がったルーチンで、ゴブリンジェネラルを倒していく。
手順が多いだけに、時間がかかるが、このルーチンが今のところ一番確実なので、たんたんとこなしていく。
必然、ゴブリンジェネラルを倒すスピードも遅くなるが、単体の経験値が大きいので、苦にならない。
この日、日が暮れる頃には、俺のLVは15になり、ゴブリンジェネラルの使役LVも10になっていた。
のだが、なにやらおかしなステータスを発見してしまった。
ゴブリン使役スキルLV20、、。
おかしい。普通スキルLVというのは、10までしか上がらないはずだ。にも関わらず20まで上がっている。
おそらく同時に20匹まで操れるんだろうが、俺にそんな処理能力はない。あまり考えないことにして、これについてはいったん横に置いておくことにしてこの日は帰宅した。。
翌日、考え事をしながら魔の森の中を歩いていると、目的の場所についた。
ゴブリンの集落だ。
一体のオスのゴブリンジェネラルを中心として、他15体のホブゴブリンのメスで形成されている集落。できて間もないのだろう。
子供のゴブリンは見当たらない。
冒険者にとっては脅威だが、モンスター使いの俺にとっては、丁度いい狩場だ。
サクッとホブゴブリン15体を〈操る:複数〉で、使役してゴブリンジェネラルに当てる。
俺はただ黙って見ているだけ。ホブゴブリンが10体倒されたところで、ゴブリンジェネラルは力尽きた。
残ったホブゴブリンを〈解放〉。
サクッと、ゴブリンジェネラルとホブゴブリン10体分の経験値が俺に入った。もはや、倍々ゲームだ。
俺は、後3つほどの集落を攻略して、サクッとLV20になった。
そろそろ日が暮れそうだ。調子に乗ってギリギリまで、狩りに勤しんでしまった。夜の魔の森は怖い。
家へ急いで帰った。
家で、ステータスの確認をしたら、〈夜目〉などの森で役立つスキルが生えていた。
試しに母さんにゴブリンジェネラルの事を報告してみた。
「あらそうなの?あんまり遠く行って迷子になっちゃだめよ?」
やっぱりゴブリンジェネラルがどういうものか1ミリもわかってない。
うん、落ち着く。
今日はもう寝ることにする。
村は今日も平和だ。
ありがとうございました。