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作家志望愛詩輝の私小説  作者: みらいつりびと


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ミッション完遂

 考えてみれば、ボクの残りの出演は秩父の農地だけで、都内各地の撮影には付き合わなくてもよかったのだが、いちおうSF研の活動に参加した。

 まず国会議事堂前に行き、拡声器を持って怒鳴っている土岐さんを撮ることになった。

「このシーン、ぼくが土岐を自動小銃の台尻で殴ることになっているけど、思いっきりやっていいか」

「いいわけないでしょう。やめてください!」

「迫真の演技がほしいよな。しかし怪我させるわけにはいかないし、8割の力でやろうか」

「いや、当てないでくださいよぉ。殴られた演技をしますから」

 結局、小牧さんはけっこう強く殴り、土岐さんはうめいた。悪いけど、この撮影は見ていて笑えた。来たかいはあったかな。

 都庁舎、新宿駅、東京スカイツリー、浅草雷門、東京タワーでも撮影した。ここでは軍人は登場せず、土岐さんは殴られないで済んだ。ボクのシナリオどおりだ。

 都内での撮影は2日で終わった。

 3日めは西武秩父線に乗って秩父駅へ行った。会長の親戚の家を借りて、ボクはへそ出しゴシックロリータに着替えた。これを着るのは今日で最後だ。もう絶対に着たくない。

 秩父で印象的なのは武甲山だった。駅から近くに見えてでかい山。石灰岩採掘により山の形が変わってしまっていて、山頂から中腹にかけて、ピラミッド状になっている。ボクはその変容を格好いいと思った。痛々しいと思う人も多いかもしれない。

 20分ほど歩いて、ナスやトマト、カボチャなどの夏野菜が生えている畑まで移動した。そこで土岐さんが空を見ているシーンを撮影した。積乱雲が立ち昇っている空だが、完成した映像には、核爆発によるキノコ雲が合成されているはずだ。

 土岐さんが東西南北各方面を見ているところを撮影。

 次いでボクの登場だ。いかにも苦労して脱出してきたように、顔や剥き出しのお腹やゴスロリを土で汚された。別にかまわない。洗えばいいだけ。

 緊張はまったくなかった。会長のことはもうなんとも思っていないから、よく見られたいという力みもない。

 ボクは土岐さんに向かって長い畦道を歩いた。彼とシナリオどおりの会話を交わし、「愛は理解不能」という最後のセリフを言った。

 同じシーンを2回撮った。会長がオーケーを出した。ミッション完遂。

 撮影は楽しかった。SF研をやめようかと思っていたが、それは今でなくていい。

「予定より早く撮影が済んだ。全員に感謝する。ありがとう。今日は秩父名物のホルモン焼きをおごる。打ち上げだ!」

 会長も悪い人ではない。失恋の痛みがなくなった今となっては、いい人だと言える。

 ホルモン焼きは美味しかった。秩父いいところだな。

 その夜、ボクは綾乃に電話した。

「映画撮影終わったよ。なんかいろいろあったけど、途中で投げ出さないでよかった。綾乃のおかげだよ」

「どういたしまして。学祭で上映するんだよね。楽しみ」

「綾乃、夏休み遊ぼうよ」

「うん、遊ぼう」

「考えたんたけどさ、どこかへ旅行しようよ」

「いいね。バイトがんばって、旅費作るよ」

「どこか行きたいところはある?」

「旅費があんまりかかるところは無理だな。関東近辺で。美味しいものが食べたい。そこにはお金をかけてもいい。めったにない贅沢をしたい」

「わかった。行き先を検討するね」

「ありがとう、輝。やさしいね」

 別にやさしくなんかない。ふつうだよ。

 一段落ついた。

 ぐっすりと眠った。

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