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作家志望愛詩輝の私小説  作者: みらいつりびと


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愛詩手世の弾き語り

 ボクはノートパソコンをSF研究会室に持ち込み、「猛虫使いの彼女」を執筆していた。

 藤原会長は一生懸命に「愛は理解不能」の絵コンテに取り組んでいた。

 他のメンバーは好きなように過ごしている。

 ノックの音がした。

 会員は全員揃っているのに、誰だろう?

「どなたですか」

「その声は輝か。あたしだよ」

 手世姉さんだ。ボクは扉を開けた。

「ちはーす。曲ができたから来たぜ」

 彼女はフォークギターを背負っていた。

「狭いな。それにむさくるしい男ばかりだ。輝、いたずらされてないだろうな」

「だいじょうぶだよ、姉さん」

「失礼なことを言うな、愛詩手世。俺たちは紳士だ」

「よう、宇宙。出来立ての曲を聴いてもらいに来た。もし合格なら、女神ーずのメンバーと編曲に入る」

「本物の愛詩手世さん? 格好いいよぉ」土岐さんが興奮して鼻息を吹いた。

「あたしを知っているのか?」

「ファンですぅ。土岐慶一郎と言います」

「よろしくな」

 ボクは村上劉輝くんが使っていたパイプ椅子を姉さんのために出した。

 彼女は座り、ギターケースからフォークギターを取り出した。

 まだ歌詞を憶えていないらしく、歌詞カードを机の上に置いた。

「とにかく聞いてくれ。まずはオープニングの『シンギュラリティ』だ。ロックだぜ」

 姉さんはギターを鳴らし、 歌った。


 ときには知性的に

 あるいは理性的に

 シンギュラリティ

 アーティフィシャル

 インテリジェンス

 アンドロイド

 計算しかないのよ

 感情はわからない


 この世界果てるまで

 この身が朽ちるまで

 あなたに尽くします


 ときには現実的に

 あるいは将来的に

 シンギュラリティ

 アーティフィシャル

 インテリジェンス

 アンドロイド

 忠誠しかないのよ

 愛情はわからない


 この世界は終わりかけ

 この身は壊れかけ

 あなたに捧げます


 じゃらーん、とギターを鳴らして歌い終わった。

 ボクたちはびっくりして聴き入っていた。

 格好いい曲! 歌詞もポンコツじゃない。姉貴はプロだよ。

「ありがとう。最高だ」

「喜んでくれたならうれしい。次はエンディングだ。『愛は理解不能』。バラードだぜ」


 愛は理解不能

 恋も理解不能

 だけどあなたのもの

 助けるのがアイデンティティ


 I can not love you

 機械のハートは狂わない


 量産品の美少女に価値はあるの

 心のないアンドロイドに意味はあるの


 愛は理解不能

 恋も理解不能

 いつもあなたのそば

 尽くすのがアイデンティティ


 I can not love you

 機械の頭脳はシビれない


 唯一品のAIに危険はないの

 あなたのためなら人類も滅ぼせるよ


 愛は理解不能

 恋も理解不能

 私はアンドロイド

 あなたのアンドロイド


 ジャン、とギターの音が止まった。

 切ない曲。

 ボクは感動していた。

 藤原会長が拍手し、みんなも拍手した。

「すごいな。期待以上だ。謝礼が5万円で申し訳ない」

「この曲だけで映画の成功は決定しましたね。映像はおまけですよぉ」

「土岐、うるさい。そんなことにはならねぇ」

「気に入ってもらえたか。これでアレンジしていいかい?」

「文句なしだ。手世、感謝する」

「宇宙、いい映画を作れよ」

 藤原宇宙さんと愛詩手世が見つめ合っていた。

 ボクは不安で胸が苦しくなった。

 会長と姉さんはなんかお似合いだ。

 ボク、嫉妬してる?

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