表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/48

最低ライン

 ボクはシナリオを印刷した紙を人数分用意して、SF研究会の部屋に入った。

「あの、シナリオを書いてきました」

「あらすじじゃなくて、シナリオができてるのか? 読ませてくれ」

 映画の監督である藤原会長が喜色を見せた。

 彼は今日はつるんと髭を剃っていた。

 あれ? 会長って、こんなにイケメンだったんだ。思わず目を見開いて見つめてしまった。なんだか調子が狂って、ドギマギする。ロンゲはサラサラの綺麗な黒髪。格好いい?

 会員にシナリオを配る。会長に渡したときは、本当に怖くて手が震えたよ。ものすごく苦心して何度も推敲して書き上げたシナリオだ。批判されたら、また泣いちゃうかも。

 みんながシナリオを読んだ。

「うん。いいんじゃないか。最低ラインで合格だ。特に撮影可能なところがいい。キノコ雲ぐらいはCGで作れる」と会長が言って、ボクは安堵した。へなへなとくず折れてしまいそう。

「おれが主人公か。いいキャスティング」

「本当は会長に主役になってもらいたかったんだよ。でも、監督兼撮影だから無理。村上くんは次善の策なんだからね」

「輝ちゃんはツンデレか」

「この配役でいいよ。村上にはアイドル性がありそうだ。愛詩と美男美女で絵になる」

 会長に美女と言われてドキッとした。

「起承転結がなってないな……」ボクと同じく小説家志望の尾瀬さんが言った。

「それは、撮影できそうにないところをカットしたら、こうなっちゃったんです」

「物足りない……」

「まぁいいじゃないか、尾瀬。確かに1か月後からいきなり899日後に飛んじゃって、クライマックスが欠如してるけど、そこはこれから足していけばいい。まだ時間はある。愛詩はがんばった。世界観を創ってくれた。今はこれで十分だ」

 今日の藤原さんはやさしい。

「ぼくもこのシナリオはよくできていると思うよ。チョコをあげる」

「ありがとうございます!」

 ボクはにやけちゃっている。恥ずかしくて冷静な顔になりたいけど、元に戻らない。

「この美少女型アンドロイド、体にぴったりしたスーツ着ているんだよね?」

「土岐さん、そういうのは着ないと言いましたよね」

「えーっ、未来のイメージをスーツで出そうよぉ」

「愛詩の髪は半分黄色くて、ちょっと近未来のイメージがあるんだよな。俺はその髪好きだ。着ている服も未来的デザインにしたいよな」

 か、会長がその髪好きだって言った。その髪好きだ、その髪好きだ……。

「いろいろやることありますよ。愛詩、西暦何年ぐらいをイメージしているんだ?」と小牧さんから訊かれた。

「2030年ぐらいですね」

「それに合わせて未来ガジェットがほしいよな」

「映画音楽も必要だな」

 音楽と聞いて、ピンとくるものがあった。

「ボクの姉が、音楽をやっているんですが」

「へぇ。テーマ曲とか主題歌とか頼めるかな。どんな曲作る人?」

「女神ーずっていうバンドやってます。音はアコースティック系です」

「女神ーず! 愛詩のお姉さんって、愛詩手世なのぉ?」

「土岐、知っているのか?」

「インディーズの姫君って呼ばれているめっちゃ美形のシンガーですよぉ」

「そこそこ有名な人?」

「その界隈では知らぬ人なしって感じですっ」

「そりゃいいや。愛詩、ぜひ頼んでくれ」

「はい。気まぐれな人だから、引き受けてくれるかどうかわかりませんが、頼んでみます」

 姉さん、やってくれるかなぁ? 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ