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SF研究会またの名を未来哲学研究会その実態は映画研究会!?

 ボクはSF研究会に入った。

 まだその活動内容を知らない。

 またの名を未来哲学研究会とか会室の扉に書いてあったけれど、あんまりむずかしい活動は嫌だな。

 室内では、熱く日本SFを擁護する小牧和人さんと中国SFは日本を超えたと主張する村上劉輝くんが火花を散らし合っている。

「愛詩輝さん、まぁ座りなよ。古いパイプ椅子しかなくて悪いけど」

 ひょろっと細長い体型の男の人がボクの後ろに椅子を置いてくれた。長髪で髭面、満面の笑み、下唇にピアス、謎のキャラクター性をまとった男性だ。ボクに入会届を突きつけた人。

「ありがとうございます」と言って座った。

「俺は芸術学部映像学科の三年生、藤原宇宙だ。宇宙と書いてそらと読む。親がキラキラネームをつけやがった。SF研究会の会長だ。ま、よろしく」

 宇宙さんかぁ。すげー。

 うちの大学、映像学科なんてあるんだな。知らなかった。

 藤原会長はボクに缶コーラを手渡してくれた。

 礼を言って、プルトップを開ける。プシッ。コーラは好きさ。

「さて、SF研究会について説明しよう。毎週火曜日と金曜日、講義が終わったら、この会室に来てくれ。顔を合わせて、親睦を深める。何をしてもいい。おしゃべり、読書、執筆、飲食、他の会員に過度な迷惑をかけなければ、なんでもありだ。SF好きが集まってるけど、別に漫画読んだっていいし、絵を描いてたっていいぞ。火曜と金曜以外は自由。ここに来てもいいし、来なくてもいい。鍵は会員全員に渡す。ここにいる7名だ。貴重品は室内に置きっぱなしにするなよ」

「はぁ」ゆるいな。ちょっと拍子抜けした。肩から急に力が抜けた。

「ただし、学祭に向けて、会の総力を挙げて創作をする。それには全員尽力してもらう。学祭は10月だ。夏からは忙しくなるぞ。いいか?」

 会長が一瞬笑みを消して、異様な目力でボクを見つめた。殺し屋みたいな目だ。この人も、まちがいなく曲者だよ。

「今年の学祭では、うちはオリジナルSF映画を制作して、上映する」と彼は高らかに宣言した。

「えー、だめですよ。会誌を作りましょう」

「映画とか、無謀だろ」

「そんなこと聞いてません」

 会員が口々に反対するが、藤原宇宙さんは「シャラップ!」と叫んで黙らせた。

「俺が会長になった以上、これだけは譲れない。どうしても反対するなら、俺の首を斬れ」

 小牧さんがおもちゃのライトセーバーを会長の首に突きつけた。

「会長、死んでもらいます」

「本気にするな。おまえの目は怖いんだよ。映画、嫌なのか?」

「金は? 機材は? 映画は金がかかるでしょう」

「機材のことは心配するな。カメラは持っているし、俺は映像学科だし、なんとかする。金はみんなでバイトして稼ごう。なに、たいした額じゃない。低予算で作るさ」

 小牧さんはライトセーバーを大切そうに壁に立てかけた。

「スタンリー・キューブリック監督作品みたいなの作りましょうよ。2001年宇宙の旅、時計じかけのオレンジ、博士の異常な愛情! 難解かつエンターテイメント!」と村上くんが言った。

「イメージはすでにここにある」藤原会長が右手の人差し指で自分の頭を指した。

 彼はにやりと笑って、ボクを見た。

「愛詩輝さん。きみを見て、瞬時にしてイメージボードが脳内で完成した。きみにはヒロインをやってもらう。人間より知能が高いが、心を持たないシンギュラリティAI美少女アンドロイドの役だ」

 ボクは仰天した。

「ええーっ、ヒロインって、そんなの無理ですよ。ボク、今日SF研に入ったばかりですよ。無茶振りしないでください」

「もう決めた。どうしても反対するなら、俺の屍を超えてゆけ」

 ボクの頭は真っ白になった。ライトセーバーを手に取り、振り上げて、藤原宇宙会長の頭に向けて振り下ろした。ガシャンと音がして、ガラス製のライトセーバーが粉々に割れた。顔面血だらけになった会長が床に倒れた。

「救急車ーっ!」と誰かが叫んだ。

「ぼ、僕のライトセーバーが・・・」小牧さんがガラスの破片を見つめて泣いた。

「か、過激な淑女だな、愛詩さん・・・」藤原会長は死んではいなかった。

「傷害罪だ。警察に通報されたくなかったら、ヒロインになれ」

 会長は凶悪に笑っていた。

 ボクはうなずくしかなかった。

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