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愛詩輝の恋愛

 ボクは愛詩輝。

 作家志望だ。本名だよ。ペンネームみたいとよく言われる。

 読み方はアイシテル。アイシが姓で、テルが名だ。

 性別は女性。

 性的指向はヘテロセクシュアル。男性を愛する。

 高校生のときにクラスメイトの男子と付き合った。清い交際だった。ボクは処女。彼氏は童貞。手を繋いで公園を歩き、隣り合って映画を見て、喫茶店で感想を語り合った。キスすらしなかった。

 彼とは一年生の夏から二年生の夏まで付き合い、夏の終わりに別れた。彼に別の恋人ができたんだ。彼がよく使っているコンビニで働いているアラサーの人妻。ボクも行ったことのあるコンビニなので、その女性を見たことがある。巨乳だった。

 男の子は巨乳が好きなのかな。好きなんだろうな。

 ボクの胸のサイズは小さい。何カップかって? 言わないよ。

 ボクは髪の毛を半分黄色に染めている。ショートカットだよ。

 痩せていて、お尻もあんまり大きくない。手足もすらっと長い。

 だから、よく少年に間違われる。美少年だと思われて、原宿で、男性アイドルグループの一員にならないかとスカウトされたことがある。チンコないけど、いいですかって言ったら、そのなりで女かよ、と返された。

 ボクは私服ではほとんどスカートを履かない。脚にピッタリなダメージジーンズを着ていることが多い。この日もそうだった。でもこの脚線美、どう見ても女性だろ。失礼なやつ。

 まぁ仕方ないか。ボクは本当にイケメンの少年みたいで、女性から見染められることも少なくない。顔立ちも整っているんだ。目はぱっちりして、鼻筋はすっと通り、唇はキュート。加えて小顔、童顔。

 ガチのレズビアンから告白されたことがある。ボクの親友だった。相手は恋愛対象としてボクを見てたんだ。

 高校三年生の春のことだ。とても麗しい女の子だよ。黒髪ロングの社長令嬢。男子からかなりモテていたはずだ。でも彼女は愛詩輝を愛していた。このボクを。

 断った。「ごめん。キミのことは大好きだ。でも友達としてしか見れない。恋人にはなれない。すまない」

 彼女は哀しそうだった。涙すら流していた。ボクはその涙から目をそらさなかった。

 彼女の名は涼宮ハルカ。これは本名ではない。

「一度でいいから、輝とデートしたい」とハルカは言った。

「デートって、どうするの? しょっちゅう一緒に遊んでるじゃん」

「デートのつもりで、出かけるの。その日だけは恋人同士だと思ってほしい」

「わかった。いいよ。どこへ行く?」

「海がいいな。江ノ島へ行こう。水族館を見て、砂浜を歩くの」

 江ノ電の中で、彼女はボクの右手を握っていた。彼女の手は汗ばんでいた。ボクの手はからっと乾いていた。

 江ノ島駅で降りて、手を繋いだまま歩いて、江ノ島水族館に入った。大水槽ではイワシボールがさまざまな姿に変形し続けていた。ある種の現代アートみたいだった。

 ハルカはクラゲの部屋が気に入ったようだ。いくつもの水槽があったが、どの水槽にも張り付いて、なかなかな離れなかった。

 そんな彼女が愛しく見えた。いっそ付き合ってしまおうかと考えたほどだ。でもボクは踏みとどまった。夕食を海沿いのレストランで食べて、一度きりのデートは終わった。

 以上がボクの高校時代のささやかな恋愛体験だ。

 ちなみにこの文章の塊りは私小説だ。

 私小説とは実体験を元に構成され、執筆された小説である。

 記憶を元に書いているから、すべてが事実かどうかはボクにもわからない。

 忘れたことを創造で補填し、都合の悪いことを変更し、抹消し、適当に脚色してあるから、すべてが事実ではないとはっきり言っておこうかな。

 さて、ボクは女性から見染められることが少なくないって、すでに書いた。

 ボクに告白したきた長門ユリという仮名の女の子がいた。

 女の子しか愛せない女の子らしい。

 卒業式の日、ボクは涼宮ハルカと長門ユリと一緒にカラオケに行った。

 途中で出てきて、二人きりにした。

 ハルカには「ユリはきみと同じタイプの女性だ」と告げ、ユリには「ハルカは真正のレズビアンだ」と言い残した。

 二人がその後どうなったか知らない。

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