気味の悪い娘
僕には好きな女の子がいてさ。
不良だとか、気味が悪いとかって、そういう噂のある娘なんだけどさ。
本当は優しい娘なんだ。
それに、顔もなんというか、凛々しくて可愛い。
この間も、夕方に繁華街で見かけてね、迷子を見つけて相手をしてあげてた。
彼女は小さい子に優しくてさ、そういうところも、素敵に思える。
えっ、告白はしたのかって。
いや、実はまだなんだ。
できれば、告白とかそんなのなしで、一番仲の良い友達から、恋人になれたらいいなって思ってる。
ちゃんと、遊びには誘っているよ。
今のところ返事はもらえていないけどね。
いつかは何とかできたらいいなぁ。
来世とかでね(笑い)
それに、あの娘は、夕方になると色々徘徊するんだよ。
家に問題があって、帰りたくないのかなって思ったんだけどさ。
そうじゃないみたい。
結構遅い時間も出歩いていて、補導されたことも見かけたよ。
どうして、そんなことしているか聞いても、返答はもらえなくてね。
理由がわかればいいなって思って、ある時、あとをつけてみたんだ。
違うよ。
ストーカーじゃないよ。
心配だったからさ。
皆は気が付いてないかもしれないけれど、あの娘には悪い噂があったからさ。
何とかしてあげたかったんだ。
それでさ、僕は見ちゃったんだ。
公園のベンチの下で。
繁華街の路地裏で。
薄暗い道の電柱の陰で。
彼女は何かつぶやいてからさ、大きな声で「みーつけたっ」って言うんだよ。
そこには何もいないんだけどね。
周りの人も、吃驚してしまうよね。
こういった奇行をするから、気味が悪いとか言われてしまうんだろうね。
けれど、その場所からは、なんとなく子供が笑ったような、そんな気配がするんだ。
なんだか暗い雰囲気だったその場所がさ。
明るいっていうか、色が鮮明に見えるようになるんだよ。
良くわからないんだけど、それはきっと意味があることなんだろうね。
何日か、僕は、彼女の様子を見ていたんだ。
彼女は素晴らしく、可愛かった。
だから、全然苦痛じゃなかったよ。
ある時さ、目をこすりながら、彼女が僕を見つめてきた。
ドギマギしていると、彼女が言うんだ。
「もーいいかい」って。
だから、なんとなく僕は、答えた。
「もぅーいいよ」って。
そしたらさ、彼女がすごい笑顔で言うんだ。
「みーつけたっ」って。
僕は、それが嬉しくて、天に昇ったんだよ。