表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【短編】 月明りに照らされて

作者: 減塩習慣

男は車の中にいた。運転はしていない。今のうちに寝ておいたほうがよいだろうか。そんな考え方は呑気すぎるだろうか。

道路はかなり霧がかっており、何も見えないといっていい。東の方角に満月が顔を出していた。今夜はあの月を見て寝ることになるのだろうか。その時私は何を考えているのだろう。

男の意思とは反して車は一定のスピードで進んでいく。もう月を見ることはできなかった。

チーン。

その広いエントランスにいる数多の人々に響き渡る音。

自動で扉が開き、ぞろぞろとなだれ込む。何階のボタンを押そうか、そんなことは考えない。

いや、皆そんなことは頭にないはずだ。


1階についた。人は降りない。


2階についた。人は降りない。


3階についた。人は降りない。


5階についた。人は降りない。


7階についた。人は降りない。


12階についた。1人降りた。


15階についた。4人降りた。


18階についた。たくさんの人が降りた。


20階についた。同じくらいの人数が降りた。


結局、私は55階で降りた。

ボタンを押したのは、52階のときだった。


そこに広がる景色は、殺風景なものだった。

空気も、表情も、数字もない。


なぜなら私が奪ったから。

だから奪われた。


あのエレベーターには、もう戻れない。


正義という言葉は人を狂わせる。

弱肉強食という言葉をはき違えた者は降ろされる。


あのエレベーターには、もう戻れない。


それとも、あのエレベーターに乗ることが

そもそもの間違いだったのだろうか。


私には二度と分かるまい。












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ