第8迷宮 ダンジョンメニューの機能
「ダンジョン操作、出来る事が結構色々あるんだよな」
自分でも少しおかしく思うが、もうすっかりダンジョンマスターというこの生活にも慣れてしまったみたいだった。
起きて最低限の支度をした後、気づいたらここに座って何をすべきか考えているのだから。
これが僕が今すべき仕事だから仕方がないのかもしれない……。
そう考えると急に嫌になってきたな、ワーカホリックとかとは無縁だと思っていたから。
今も、感触がすっかり気に入ってしまったエメラルドのことを片手でずっと撫でながら、ダンジョン操作スキルで現れたウィンドウをいじっていた。
「エリア操作は結構なDPを消費するし、モンスターは昨日で今できる分は見たから、後はDPショップか……マーケットで出品してみるっていうのも良いかもな」
ダンジョン操作には基本として、ダンジョン内のマップ(リアルタイム中継)だ。
しかし、それ以外にもDPを消費して色々なことを行うことが出来る。
DPを消費する機能には
ダンジョンエリアの環境の中や罠、迷路を作ったりする、ダンジョンエリア操作。
モンスターを生成したりスポーンを設置するモンスター生成。
その他のダンジョンのレイアウトや雰囲気、機能性を高める道具を購入できる、DPショップ。
ダンジョンマスター達による道具の売買が出来るマーケットの機能。
あとは、ダンジョンマスター達のみのチャットであるダンジョンマスター掲示板があったのだ。
ダンジョンマスターになってよかったと思ってしまうレベルで万能な代物だった。
モンスター生成なんかはもう昨日で全てやってしまったので、これから暫くはやれることもないだろう。
ダンジョンエリア生成では、このダンジョンを拡張したり、罠や宝箱を設置したりとダンジョンの機能として色々出来るのだが、そもそもの必要DPの桁が違う。
ダンジョンエリアの追加は10万DPも必要だし、ダンジョンスペースの追加も1番少ないので1万DPを消費する。
罠は比較的DPを使ったりしないのだが、自分の持つこのダンジョンはまさに森林といった構造をしているので、安い罠である飛び出す矢や落とし穴の有効な設置場所がなく、侵入者を誘導するのも一苦労だ。
つまり罠を十分に発揮するためには何十個もおかないと効果がなさそう。
そのためこれも余裕が出たらってことで保留。
宝箱を設置するのも面白そうだけれど、絶対最初に手を付けることではないだろう。
もう少し余裕が出て、敵を集めたいと思ってからで問題ない。
どこまで自分のダンジョンが人に対して防衛能力があるのか未だ未知数なのだから。
とりあえず、ダンジョンエリア操作で出来ることは今のところなさそうだった。
唯一遊べそうなのはダンジョンエリア内の配置換えだが、出来るかわからないが、配置したばっかりのスポーンエリアを動かしたところで、あまり意味はないだろう。
木と花を色々動かして僕しか知らない秘密の花畑を作る、みたいなことぐらいしかできそうにない。
次にマーケットの機能を覗いてみた。
マーケットではダンジョンマスター同士で道具の売買が出来るのだが、まだこんな状況になって2日目なので、この機能を使う人はそんなにいないみたいだ。
ゲームのこういう機能と違って、手数料でDPを取られる事が無いみたいなので、商品を出している人は、本当に手当たり次第やっているみたいだ。
おそらくマスタールームに置いてあった私物なのだろう、漫画本のセットや文房具と紙などが雑多に売りに出されていた。
ナイフやライトなどの使えそうなものもたまに売ってある。
漫画本のセットなんかは売るのが惜しいのかDPが初期値有ればなんとか買えるぐらいだったので買う人はいないだろう。
因みに軽く見て1番高かった商品は初期値の10000DPぴったりで、女物の下着だった。
色々な意味で、女性って強いなって思った。
俺が売れるものは使用済みの参考書とかだろうか、もういらないし見ると悲しくなってくるから。
買う人は居ないだろうけど。
「マーケットは良いものあんまりなかったから、DPショップを見てみるか」
改めてDPショップの項目を見てみると、思っていた以上に商品が溢れていた。
剣や杖などの武器、それも初心者用から色々特殊効果の付いたもの。
大量のスキルブック、机や椅子などの家具。
果てにはダンジョンに生息させるためなのか大量の小動物などもあった。
1日で全部見切れる量じゃないし、武器とかの能力を見ているだけでゲームの攻略本を見ているようで結構楽しい。
これを眺めているだけで何日か時間を潰せそうだと思った。
だけど、そこまで時間が有り余っているほど余裕はないため、今のDPでどうあがいても手の届かないところは見る必要ないので軽く見流していった。
武器なんかは桁違いの値段をしているので、少し見て終わったが、ダンジョンの装飾なのか植物や動物なんかの100DPしないものも大量に用意されていたので、使えそうなものはないかと思ったのだ。
今、流し見ていた中で欲しいと思ったのは、動物類かな、鹿とか熊が一体100DPで販売されていたのだ。
正直、Fランクのモンスターを大量に用意するより、強そうな動物を多く置いた方がいいんじゃないかと少し思ってしまった。
まぁ、動物は所詮動物なので、侵入者に突撃はしないだろうから、どっちもどっちだと思ったので諦めた。
どうせ買うなら、ある程度量を揃えて、ちゃんとエンカウントさせなくちゃいけないだろう。
「おっ!リンゴの木を見つけた。ブドウとかみかんとかもあるじゃん。早く見つけとけば良かったなぁ。食料って調べたら固形栄養食しか出ないって……」
そのままショップをひたすら眺めていたら、面白い欄を見つけた。
ダンジョンに置ける植物の一覧までいき、その中からもし成っていたら直ぐに食べれそうな果物の木があったのだ。
時間をかけすぎて昼を回るぐらいの時間になってしまったため、小腹が空いてきた。
そんな時にこれを見つけたので、つい衝動的に買いたくなってしまった。
早速表に植えておこうとリンゴの木を3本、ブドウの木とみかんの木とももの木をそれぞれ2本ずつ(各50DPだった)を購入した。
購入した木はマスタールームの近くにもう既に植えてあるようだ。
「よし、外に出ようか!」
「キュー!」グデー
外に買った木があるという事がわかったのですぐに立ち上がろうとしたけれど、これまでずっと撫でられていたエメラルドがいつものようにばてていたので腕に抱いて立ち上がった。
マスタールームの巨大な扉の先にお目当てのものがあるのだと思うと足も早くなる。
「やった!もう実がなってる。あれ?季節とかは関係ないのかな?」
「キュ、キューイ♪」プルプル
外に出て、マスタールームの近くにあった木々のそばに来たら、目の前の木々は、季節感を感じないぐらい全ての果実が見事にたっぷりと実っていた。
1番近く、目の前にあるこれでもかってほど真っ赤に熟しているリンゴをも1つぎ取ってみると、ずっしりと重くとても美味しそうだった。
ブランドがついているようなものとも対抗出来そうなほどのできなので、これ一つ買うとすれば通販でうん1000円するんじゃないだろうか。
「おぉ、流石に立派過ぎないかな?鑑定」
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リンゴ
ダンジョン内の魔素を得て育ったリンゴ
HPを10回復する
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「回復効果もあるのか。ダンジョンで育った?からなのかな?」
そのリンゴを一口かじると、その見た目の通り、いや、これまで食べたリンゴとは比べものにならないくらい味が濃くて汁も多い。
久しぶりに美味しいものを食べれて、心もリラックスしているようだった。
「これマーケットで売ったら結構高く売れるんじゃないか?」
「キュイ!キュイ!!」
リンゴを取るのに地面に下ろしていたエメラルドが取ったリンゴを欲しそうに跳ねていた。
「あぁ、お前も欲しいのか」
その仕草が可愛かったので、近くにあったリンゴを取って渡してやる。
お目当のリンゴにありつけたエメラルドは嬉しそうにプルプルと震え、頭にある葉をブンブンと振り回した。
そのリンゴはエメラルドの体内へ入ったと思うとなくなった、スライムってそうやって食べるんだね。
そうして自分とエメラルドで植えてあった果物を一通り味わいお腹を満たすことにした。
全部今まで食べたことのある果物よりも大きく色がいい。
もちろん美味しかったので、気がついたら結構な量を食べてしまっていた。
そのあと、まだ沢山残っていた果物を全て収穫しにマーケットに出してみることにした。
試しに普通の固形栄養食の倍である10DPでリンゴを一つマーケットに出してみる。
マーケットの機能を実際に開いてみると、目の前にメニュー画面とは違う黒い空間が現れた。
そこにリンゴを放り込むと、マーケットの出品中の欄にそれが表示された。
なるほど、こうやって使うのか。と感心している間にその商品はその欄から消えてしまった。
「……はぇ?」
なんと3秒もかからないうちに商品はなくなってDPとなって帰ってきたのだ。
出した瞬間に売れたので何が起こったのか直ぐに理解出来なかったが、実際に10DP貰えていたので取引は公正に行われたようであった。
「お、おぉー、やった!」
「キュー!」プルプル
いきなりすぎてすこしびっくりしたけれど結構高く売れることが分かったので、すぐに収穫した果物を売りに出すことにした。
目の前にある購入した木々から、食べなかった分全ての 果物を売却した。
そうしたら。
「3000DPあるな、昨日使いまくったのに……」
なんと1500DPぐらいまで使ったDPが3000まで回復したのだ。
DPってこんなに楽に稼げるものなのだろうか?
現実逃避しかけていたけれど、これは皆がこの情報を知らない今が稼ぎどきじゃないか!と思って、手に入ったDPでさらに果物の木を購入することに決めた。
すぐ目の前に沢山の木が現れた。
美しくみずみずしい果実がたっぷりと実った綺麗な木々だ、なんて素晴らしいのだろうか。
その果実ひとつひとつが今の僕にはポイントにみえていたのだった。
回復薬は目の前にある、疲れるはずがない!死ぬ気で全部収穫して余すところなく売却するんだ!
リンゴは数秒で売れる、ぶどうもすぐ売れる、桃も一瞬で売れる、みかんも次のを売る前に売れてしまっている。
梨、柿、マンゴー、さくらんぼ、バナナ、みんな違ってみんないい。
無限に稼げるんじゃないかとDPの使い道を妄想しながら暫くその作業を繰り返していると。
【レベルアップしました】
【ダンジョンランクが上がりました】
「レベルが上がった?」
急に頭に声が響いた。なんとなく久しぶりな感覚。
その声はなんとレベルが上がった事を知らせてくれた。
すぐにステータス画面を開く。
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名前 東雲 大樹 年齢 18
種族 ダンジョンマスター 性別 男
レベル 2
HP 4090
MP 3060
力 707
魔力 809
敏捷 606
器用 708
スキル
ダンジョン操作 身体強化 魔力適性 精神強化 経験強化 採取 農業
称号
職業
初級ダンジョンマスター
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確かにここにきてからずっとレベル1だったのが、2になっている。
能力も上がってる?かな?初期の能力ちゃんと覚えているわけじゃないけど、もっと低かったと思う。
後、こんな不格好な数字じゃなくて、もっときちっとしてた気がする。
力が強くなった感覚はないので、よくわからないけど、強くなっているんじゃないかな。
そう思うと、体も軽くなった気がする。
人間の頃よりは強くなっているのはわかるんだけど、自分の体がどれくらい強いのか分からないから実感が湧かなくて困る。
そしていつの間にかスキルも採取と農業なんていうものを持っていた。
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採取
素材を採取する効率が上がる
農業
農作業を行う効率が上がる
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この作業は果たして農作業なのか疑問なんだけど、それよりももっとわからないことがある。
「なんで、戦闘とかしてないのになんでレベルアップなんてしたんだろう」
と思ってステータスを一通り確認してみたら、その正体を発見した。
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初級ダンジョンマスター
新しくダンジョンマスターに成った者
ダンジョン操作のスキル手に入れる
ダンジョンの創造により経験を積む事が可能になる
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初日に確認していたのに完全に記憶から抜け落ちていた。
ダンジョンを作ることで経験値を獲得できるスキルがあったんだった。
たぶん最初にあった1万DPを全て使い切ったのだろう。
ダンジョンランクも上がったらしいから見てみる。
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無名ダンジョン
ランク 2
主属性 木
副属性 光
種族 樹霊
エリア1
スペース(小) 森
モンスター
リーフスライム E
プラント F
シード F
ウィスプ F
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「あれ?このダンジョンまだ名前なかったんだ」
初日に見たときと違ってモンスターの欄が増えている。
昨日増やした子達だ、こうやって見るとなんだか達成感が湧いてくるし、強くなった気がする。
「キュー!」ポヨン
「あぁ、ありがとうエメラルド。ごめんな。」
エメラルドが作業を止めていた俺のところに大量の果物を届けてくれた。
エメラルドは木に登って取りづらいところの果物を収穫してくれている。
暫くステータスを覗いていたから声を掛けてくれたみたいだ。
「よしっ!全力で続けるぞ!」
「キュー!」
どこまで稼げるか試してみようと思った。
所持 1530DP
獲得 +5400DP 果物10×540
消費 -1350DP 果樹50×27
差引 5580DP
これからの執筆活動、少しでも応援して頂ければ幸いです。
平和な松ノ樹