第6迷宮 ダンジョンと言ったら!
お昼に湖のほとりで、全く味のしなかった固形栄養食とくるみのような木の実、酸っぱい木苺のような果実を食べた後、またマスタールームの玉座まで戻ってきていた。
昼飯はお世辞にも美味しいと言えるものではなかったのだが、久方ぶりに胃に物を入れたのに、そこそこ量があったため少し休憩していたのだ。
少し落ち着いたらまたダンジョンのことをぼんやり考えていた。
自分がすっかりこの状況に慣れてしまったことを少しおかしく思いながら。
「ダンジョンって言ったらやっぱりモンスターだよね。まぁ、罠とか迷路とかもそれっぽいけど、ここだと開けているし木ばっかりだし難しいからなぁ」
ゲームに出てくるようなダンジョンを暫く色々想像していた。
ゲームのダンジョンといったら、洞窟みたいな世界の細くて暗い道でできている迷路みたいな場所で色々なモンスターとエンカウントするみたいな感じだと思う。
道中の道で面白いトラップがあったりするのもいい。
でも、僕のこの世界はダンジョンって言ってるけど、そういう洞窟や迷路のようなものではなく、開けた森しかない。
迷路を作ろうと木を並べたって、切ろうと思えば切れるだろうし、見栄えが悪くなるだけだ。
色々考えて思いついたのは結局のところモンスターを沢山配置するというシンプルなものだった。
早速モンスター生成をしてみようと思ったので、直ぐにマスタールームを出た。
「ここら辺に特典でもらったスライムのスポーンブロックを置いてみようか。これで、リーフスライムっていうモンスターが生まれるはず」
マスタールームから少し歩いたところ、入口から見れば奥の方まで来ていた。
スポーンブロックは通常のモンスター生成の100倍のDPを消費することで、生成できる。
2時間に1体、1日でそのモンスターが12体勝手に生産されるようになるというものだ。
少し割高だが、半永久的に機能するのでこれを設置しておけばそのうちモンスターで溢れるようになるだろう。
それに、10日ほども放置すれば十分元を取ることができる。
切羽詰まった状況ならまだしも、これを使わない手はない。
ダンジョンマスター就任の特典であるスライムのスポーンブロックは、そのダンジョンの属性に合わせたスライムが生成されることになっていたようだ。
僕の場合、主属性が木属性なのでリーフスライムが生成される、リーフスライムのスポーンブロックを貰っていた。
ということで。
「リーフスライムって気になるから1匹だけ別に出しちゃおう」
初めてのモンスター召喚でどうしても好奇心を抑えきれなかった。
だから、スポーンブロックとは別にスライムを生成することに決めた。
DPの無駄遣いはもちろんするべきではないけれど、1体ぐらいなら問題ないと思いたい。
モンスター生成の感覚を掴むためにも必要だと思う!
そんな言い訳を脳内で考えながらも、やっぱり初モンスターは個別で生成することに決めた。
「モンスター生成!」
やっぱり声に出して宣誓する必要はない。でも、気分は大切だよね。
ダンジョン操作から、モンスター生成を選ぶ。
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モンスター生成
F
プラント 10
シード 10
ウィスプ 10
ゴースト 50
スライム 100
ラビット 100
バット 100
ゴブリンキッズ 100
:
:
E
リーフスライム 500
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モンスターを生成しようとすると、生成できるモンスターの一覧がズラーっと現れた。
ダンジョンのランクからFランクのモンスターしか今のところ生成できないようだった。
リーフスライムが唯一Eランクとして個別にあるのは、バグかブロックのせいだろう。
「リーフスライムってEランクなんだ。一個だけランクが高いな。安くなってるのはダンジョン属性との一致だっけか」
モンスター生成はダンジョンの属性と種族と一致点があると生成時のDP消費が抑えられるという利点がある。
プラントやリーフスライムなどが安くなっているのは、木と光の属性の一致や種族の樹霊と植物族、霊族の一致なのだろう。
結構安くて使えそうなモンスターがいるようで安心した。
最初はアメーバからです。みたいな感じだったら詰んでいただろうから。
今のところDPを稼ぐ手段は日付超えに貰えるものしかないので10分の1は本当にありがたい。
「さてと、さっそく生成しますか!プラントとシードも気になるけど、最初は予定通りリーフスライムにしておこう、DPを消費すると追加でスキル付けられるのか……ふーん」
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スキル モンスターの1/2倍DP
吸収 採集 調合 収納 魔力操作 念話 etc……
才能 モンスターの1倍DP
知能 天才 個体意識 王
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「スキルはこんなもんか、普通のスキルは見た感じ分かるけど、才能ってなんだろう」
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才能
生成 又は 進化時のみ取得可能なスキル
生成時にはそのモンスター生成と同じ値のDPを消費する
知能
通常の個体より高度な思考が可能になる
天才
通常の個体より能力の取得が早くなる
個体意識
マスターの指示なしでの行動が可能になる
王
同種族が従うようになる
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「なるほど理解、じゃあ、リーフスライムに知能、天才、個体意識をつけて、スキルは、サポートって事で、収納とかでいいかな、後は採集も付けておこうか」
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種族 リーフスライム E
レベル 1
スキル
突進 再生 採集 収納
2500DPで生成します
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「よし!生成します!」
そう宣言すると、目の前の空間にどこからかほわほわとした淡い光の球が少しずつ集まってきた。
その光の球は1点に集まり形を整えながら大きくなっていったと思うと、途端に強く光った。
ホワホワと淡い光が目の前に集まりだしたと思うと、強く光って弾けた。
「キュイッ!」
その光の中から現れたのは、楕円状で緑色のに透き通っている身体、大きさは小さく30センチあるかどうかぐらい、頭?のてっぺんからは双葉の木の芽が生えている生き物だった。
これがリーフスライムってやつなのだろう。
「お!やった。これは当たりだな、思ってた以上に可愛い。緑のわらび餅に葉っぱが生えた見たいな感じだな。良かった、アメーバみたいなのが出なくて」
「キュイ!キュイ!」
創作物のスライムという魔物は、たまに気持ちの悪い粘液だったり、無駄に凶暴な見た目だったりするので、可愛いゼリーのような生物であるのが本当に良かった。
このスライム人懐っこいようで、今も僕の方へ向いて何やら鳴いている。可愛い。
「よろしくな!スライム…えっと、どうせならかわいい名前が良いよな………。じゃあエメラルドだ。スライム、今日からお前はエメラルドだからな」
そう言うとスライム、エメラルドの身体が発光した。そして、その後に脳内に声が響いた。
【新たな眷属を手に入れました】
「おっ?なんだ?」
「キュイ!キュイ!」
眷属がなんなのか気になるが、エメラルドが甘えるように近づいてくるので、身体を撫ででやるとエメラルドの体は嬉しそうにプルプルと震え、頭の葉っぱをブンブンと犬のように振った。
「おぉ、プルンプルンだ。よろしくなエメラルド」
「キュイ!」プルプル
「よし、さてと、眷属ってなんだろな」
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眷属
ダンジョンマスターが自分のモンスターに対し名付けることにより眷属とする
眷属としたモンスターは能力値が大幅に上昇する
眷属とするモンスターの能力値の一部はマスターの能力値に加算され、能力の一部がマスターに付与される
眷属と出来るモンスターの数はマスターのレベル又はダンジョンのランクが10上がるごとに増えていく
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「うん、なるほど?この子が眷属になって能力が上がったってことか」
少し長ったらしいがそういう事だろう。
「キュー!」プルプル
エメラルドの方を見てみると鳴いて反応してくれた、可愛いのでもっと撫でておく。
「そして、その一部がこっちに来ると、……うん、なんか心なしかちょっと強くなったような?」
いや、元々ダンジョンマスターになった事で強くなっちゃった体に慣れてないからよくわからない。
後肌がプルプルになった様な?気のせいかな?
「つまり、この子が強くなればなるほど俺も一緒に強くなるってことか。よろしくな!エメラルド!」
「キュイ!」プルプル
目の前にいるプルンプルンのこの小さい子がどこまで強くなれるのかわからないが、せっかく自分の眷属となり、パートナーとなったのだから、沢山可愛がって強くしてやらないと!
と意気込んで撫でていたら結構経ってたらしく、疲れたのか遂には腕の中でグデっとし始めた。
この状態も十分愛らしく愛でていたいのだが、流石にいつまでも撫で続けているわけにも行かないので、手を止めてモンスター生成の続きを始めた。
ずっと撫でていたので、もう手遅れかもしれないけど。
今いる場所の木の根元の発見され辛そうなところに壊されないようににリーフスライムのスポーンエリアを配置することにした。
スポーンエリアは外からの侵入者が壊そうとすれば壊せてしまうらしい。なのでなるべく奥まった分かりづらいところに配置しなければいけない。
奥に置きすぎて侵入者までモンスターが届かなかったら意味がないし、難しいところだ。
そのうちスポーンエリアを閉まっておける隠し部屋を作っておきたい。
スポーンエリアを出してみると、それは一辺10センチぐらいの光の箱であった。
最初に見たダンジョンコアのように緑色に光っていて、手に持っているのにほとんど質量を感じさせない。
それを近くの木の根元に埋めるとする。
シャベルみたいな物があればよかったんだけど、手で掘るか。
「キュー!」
しゃがんで地面を弄ろうとすると、俺のやりたい事を察知したのかエメラルドが鳴いて俺の手のあった場所に来た。
そこでプルプルしたと思うと、少しずつ下に下がっていった。
土を収納して地面を掘ってくれてるんだろう。
やばい、うちの子がかしこ可愛い過ぎて辛いです。
数分でエメラルドが半分ほど埋まったエメラルド自身は30センチあるので10数センチは掘れただろう。
もう十分なのでやめさせることにした。
「エメラルド、ありがとう!もういいよ」
「キュー!」プルプル
エメラルドが掘ってくれた地面にスポーンエリアを置く、どっか一部は見えていないとだめらしいので、土をかぶせる時に頭を出しておく。
スライムのスポーンは無事に置けたので、他のモンスターのも作っていこうと思う。
これからの執筆活動、少しでも応援して頂ければ幸いです。
平和な松ノ樹