第4迷宮 これが僕のステータス?
自分にあてがわれた木製の立派な玉座に深く腰掛けながら、頭を空っぽにして思考放棄しようとしていた。
しかし、気がつくと頭の中は色々なことで溢れかえってしまう。
これから、ダンジョンマスターとしての何が起こるかわからない未来のこと。
今までの大変だった時もあったが結局楽しかった学生生活のこと。
そして家族や友人達の中から自分の存在が消えてしまう上に自分の敵として来てしまうかもしれないということ。
そんな映像が脳裏に浮かんでは消えて、ひとしきり悲しんだ。
玉座に腰掛けてから、結構な時間をかけて自分の中からそれらの感情を消化し切れたと思う。
不思議と涙は出なかった。
さて、これからは自分以外の全てが敵と化す理不尽な状況になるだろう。
さっき、もういっそ死んだ方がマシじゃないか!ってほど辛い目にあったけれど。
僕はまだやりたいことだって色々あるし、もちろん死にたくなんてない!
だから、なんとかこの先を生きていくためになるべく早く行動を開始しないといけない訳だ。
正直、このままずっと現実逃避していたい気持ちもある。
しかし、そんなことしていたらすぐに時間は過ぎ去って行ってしまうだろう。
ダンジョンマスターのすべきこと、つまり今の自分がするべき目標が、自分のダンジョンの整備とこのダンジョンの入り口をもとの世界に開くことだとはっきりした。
その上で、現状出来る事。
なんだろうか……。
まずは、ダンジョンマスターになって変わった自分の能力をきちんと把握しておくべきかな?
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名前 東雲 大樹 年齢 18
種族 ダンジョンマスター 性別 男
レベル 1
HP 4000
MP 3000
力 700
魔力 800
敏捷 600
器用 700
スキル
ダンジョン操作 身体強化 魔力操作 精神強化 経験強化
称号
職業
初級ダンジョンマスター
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「おっ!これが僕のステータスか!」
ダンジョンコアによって頭に直接流された情報から、自分のステータスを確認することができるのがわかったのですぐに見てみることにした。
目の前に現れたこんなゲームみたいな画面。
ちょっとワクワクしてしまっている自分がいるのに気がついた。
「種族、ダンジョンマスター……」
しかし、そのせいで、薄々そうじゃないかと思ってはいたが、種族から人間では無くなってしまったことがこれではっきりとわかってしまった。
今までの人生を全否定されたような気がして、少し気分が落ち込むけれど、そういう時間はしっかりとった。
逆に人よりも上位種族?になったことで能力も恐らく上がっているのだから、この先のことを考えるとよかったのかもしれない。
そういう気持ちでどんどん見ていこう。
ステータスの平均値がいくらかなんて、他の人のステータスがいくらかなんて見れない以上、分かりっこない。
僕は何故か巻き込まれてしまったダンジョンマスターであって、異世界転移した勇者様じゃあないので当たり前だ。
でも、軽く見た感じ、魔力が高いから魔術師タイプってところかな?
ちゃんと魔法が使えればの話だけど。
「それで、職業は初級ダンジョンマスター。能力とかはあるのかな?」
職業のところをタップしてみると、パッと画面が切り替わった。
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初級ダンジョンマスター
新しくダンジョンマスターに成った者
ダンジョン操作のスキル手に入れる
ダンジョンの創造により経験を積む事が可能になる
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「なるほど、この職業でダンジョン操作のスキルを貰えてる訳か」
これで、これからダンジョンを創っていくたびに経験値みたいなのが貰えるようになって、自分のレベルが上がようになると。
戦闘以外でも能力上げられるのは大きいだろう。ダンジョンマスターが戦闘する機会ってあんまり無さそうな気がするから。
最後に、メイン。
沢山書いてあるスキルの欄も見ていく。
身体強化など、ぱっと見ただけでどういう能力なのか分かりそうなのも結構あるが、一応全部確認しようと思う。
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ダンジョン操作
自分が支配するダンジョン内でメニュー画面を開くことが可能になる
身体強化
身体能力が強化される
魔力操作
魔力を操ることが可能になる
精神強化
精神が強化される
経験強化
経験によるスキル獲得が可能になる
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僕が、こんな精神不安定な状態でもある程度思考とかが働いて、何かをしようと動けているのはこの精神強化のおかげなのかも。
でも、こういうスキルのせいで、性格が変わってしまうみたいなことがあるかもしれない。
そういう意味で少し怖い気もするけど、無かった場合も怖いのであったほうがいい気もする。
ダンジョンマスターって多少の非情さも必要そうだから。
精神を強化って、保護する程度だよね?急に、テキスベテコロス……。みたいな感じにならなければ問題ないと思う。
他……魔力操作も気になるけど、魔法スキルみたいなのはまだ使えないみたいだし、魔力が何かは特に解らないから、とりあえず置いておこう。
直ぐに使えそうなスキル、ダンジョン操作かな。
メニュー画面を開くって書いてあるけど、どういう事だろうか?
とりあえず、使えそうなものは使ってみよう。
自分のステータス内のスキル欄を一通り見てみたところ、今すぐに使えそうなスキルは一つしか無かった。
頭の中にはそのスキルの使い方も入っていたので、折角だから使ってみることにした。
「ダンジョン操作!」
別に声に出して宣誓する必要は全くない。
なんとなく言ってみたくなっただけ。
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無名ダンジョン
ランク 1
主属性 木
副属性 光
種族 樹霊
エリア1
スペース(小) 森
モンスター無し
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実際にスキルを使おうとしてみると、目の前に現れていた半透明の画面の表示が変わった。
メニュー画面を表示する!みたいなことが書いてあったのだけど、おそらく今見えているこの半透明な画面自体こそがダンジョン操作スキルの産物。
メニュー画面なのだろう。
今はこのダンジョンの情報が表示されているみたいだ。
他にも色々出来るみたいだけど、せっかくこれが表示されたので、そのまま自分のダンジョンの情報を見てみることにした。
ランクは、まだダンジョン自体に何にも出来ていないからもちろん1で。
主属性は木か、完全に周り樹に囲まれてるからね。
そして、副属性が光と。
属性によってダンジョンからの恩恵が変わるみたいだけどまだよくわからないから保留で。
種族ってなんだろう、モンスターがその種族しか使えないみたいな感じかな?
知識を漁ってみると、属性や種族によって召喚できるモンスターに補正がかかったりするらしい。
樹霊という種族が弱くないといいんだけど。
ダンジョンエリアって言うのはこのダンジョンマスターの部屋、マスタールームの外にある迷宮空間で、それはまだ小さいサイズが一個しか無いみたいだ。
それでも1km四方あるみたい。これが大きいのか小さいのかは正直わからない。
でも1kmって目的地まで直線で来られたら、多分大人の足で10分程度じゃないか?
命を賭けるには少し狭すぎる気がする。
ダンジョンについては全て見終わって、他に見れないようだったので、そのままダンジョン操作スキルによって出される画面を色々いじっていた。
メニュー画面の他の機能は、このダンジョン内の地図や映像を見ること。
DPという色々なことをして貯めることのできるポイントを支払って色々と弄ったり出来ることが分かった。
おっ、ダンジョンマスター掲示板とかあるんだ。
あとで確認しておこう。
他の人の阿鼻叫喚を眺めるという趣味悪くも楽しい時間を過ごすには、まだ気力が足りない。
一応、メニュー表示からの一通り今の自分の能力を確認したのだが、もう色々ありすぎて疲れてしまったため、今日はこの外にあるはずのダンジョンエリアの探索は諦めることにした。
この空間だけでも見て回ろうと思ったんだけど、見渡す限り360度木目である、つまり全て壁だ。
唯一物は玉座があるだけなので、おそらく正真正銘のラスボスの決戦用みたいな部屋なのだろう。
今現在この場所でやるべき事、出来ることは無かった。
「んんっ、疲れたぁーー!今日はもう終わり!」
メニュー画面を閉じて、思いっきり背伸びをする。
混乱していっぱいいっぱいだったので気づかなかったけれど、案外ここの空気は心地よかった。
うまく言い表すことが難しいのだけど、澄みきった自然の空気って感じがする。
今の日本ではなかなか味わえないものだと思う。
深呼吸をしているだけで、なんだか気持ち良くて楽しい。
思ったよりもダンジョンマスターっていいものかもしれないと、希望が湧いて来た。
「どっか寝れるようなところないのかな?」
ひと段落した後、どこかに流石に布団とは言わないけど、横になれる場所が有ればいいんだけど、と思って散策を始めた。
しかし、なにもない空間を歩き回って玉座の他に何かないかな?とか、壁まで行ったらどっか開かないのかな?と触ってみたりしたのに何も見つからない。
この場所で寝なきゃいけないといけないのか。
と、思いながらも、ダメ押しにともう一回メニュー画面から地図を開いてみることにした。
そして、このマスタールームのマップをきちんと確認したところ、この丸い部屋の脇のところには全く見分けがつかなかったが、扉があるのがわかった。
そして、その先にはちゃんとした自室が用意されているように書いてある。
「こんなのダンジョンマスターじゃないとわかんないじゃん」
もちろんそれで十分だし、隠し扉で他の人に見つかりづらいのはいいことだけど……。
扉の位置ちゃんと場所を覚えられるまではマップを見ないと僕自身が自分の部屋すら行くことが出来なさそうだった。
やっとのことで見つけたその扉を開けてみると先には広く長い廊下があった。
廊下の途中には扉がいくつかあり、その中にはちゃんとした風呂場とトイレ、広めの私室、更にはキッチンまでがあるのが地図からわかった。
幾つか空き部屋もあったので、倉庫などとして活用できるだろう。
「至れり尽くせりじゃないですか。でも、ここまでされると逆に怖いな」
ありがたく使わせて貰うんだけどね、と。
さっきまでは、最悪ダンジョンが育つまであの部屋でほぼ野宿みたいな感じになるのかと残念に思っていたのだけど。
下手な一軒家よりもいい自室のスペースに、さらにテンションが上がってきていた。
早速一直線に私室向かって、扉を開けると、そこはさっきのマスタールームを小さくしたような場所だった。
しかし、マスタールームと違い広めの窓が付いていて外からの光が差し込んでいる。
物語に出てきそうな森の中のログハウスのようであり、幻想的で素敵な空間だった。
ちょっとメルヘンっぽいかもだけど。
でも、ここなら何年、何十年居ても飽きる事はないだろうと心から思えるような空間だった。
その部屋をちゃんと観察してみると、ご丁寧に僕の私物が丁寧に全て揃って置いてあった。
というか、自分の引っ越し用に持ってきた物、ベットや机までもが自分が運んだ通りに、部屋のサイズに合わせて多少レイアウトが変わったりしているところもあるが全てそこに置いてあった。
さらに、持ってきていない漫画や問題集、服などまであった。
本気でこのまま籠城出来るかと思ったりしたのだが、どこを探しても食料だけは何もなかった。
早速兵糧攻めにあったみたいだ。
その部屋にあったベットに早速ダイビングをかますと、さっきまでの頭痛による疲れなのか、それとも、種族を変えられたらしい疲れなのか、気が抜けて眠気が湧いてきた。
こうなったら僕がこのベットの誘惑に勝てないのは18年間で学んでいるので、今日はもう寝てしまうことにした。
さて、明日からどうなるか。
「おやすみなさい」
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所持 10000DP
超日 +100DP
差引 10100DP




