第2迷宮 ここは何処?僕は誰?
「どうしてこんなことになったんだろうなぁ……」
辺りを見回せば、一切途切れなく取り囲む木目。
地面はちゃんと年輪だし、壁は上に上に続いていて途中で見えなくなった。天井があるのかどうかも分からない。
因みに出口はない。ついでに入口も。
そんな世界の中心に用意された立派すぎる玉座(木製)に深く腰掛け、ため息をついた。
「なんで……」
なんでこんなところにいるのか分からない。いや、ごめん嘘ついた。
分かりたくなかった。理由を説明されても脳が受け付けを拒否してる。
まずは状況確認しようかな。
「僕の名前は東雲大樹」
自分の名前は覚えてる大丈夫。
「18歳」
若返ったりはしてない?いや?なんか手が綺麗になってる?
「鏡……は無いから、スマホ。スマホ……えっ!?ない?」
周囲は更地で何もないし、スマホは多分ベットの上だった。
「今は何日で何時だろ?だめだスマホがない」
時計も見当たらないし、外の様子も分からない。
「昨日は新しい家に引っ越して……日付変わる頃に寝たはず」
勿論新しい家とはこんな不思議空間ではない。もうちょーっと小さくてちゃんと出入り口があった。
そう。こんな野球が出来そうな広い空間じゃなくて、ひとり暮らしで丁度。2人だときついサイズのアパートだったから。
「出口は……」
ない。
すでに壁を叩きながら1周歩き回った後だった。どこで1周かもわからなかったので多分一周半ぐらい歩いた。
ヒビもなければ、足を引っ掛けられるような凹凸もない綺麗な木目だった。
目に映る光景が一切変わらなかったせいで少し気持ち悪くなった。
「ダメだ……」
もうなんかどうしようもなかった。逃げ場は何処にもないし、意識ははっきりしてる(普段より調子いいかも)よって夢オチもあり得なかった。
「この度ダンジョンマスターになりました」
そういうことらしかった。
ダンジョン。
洞穴の迷路の中に絶対に人間を襲うモンスターがウヨウヨいてところどころに宝箱が置いてあってそれを手に入れれば一攫千金みたいなやつ。
一般オタクの僕としては異世界転生者が金策や功績をあげるのに丁度いいやつってイメージ。
一般人は苦戦するモンスターをガンガン狩っていく主人公とか正直好き。
勿論、現代日本にはそんなもの存在しない。強いて言えば東京の駅が現代ダンジョンって言えるかなってぐらい?
いや、何処かに隠されてる可能性は否定したくないけど。
そんな人類の敵の管理者に僕は選ばれたみたいです。