第20迷宮 この世界に繋がる何処か
「どうしてこんなことになったんだろうなぁ……」
そこは、周囲が木目に囲まれている空間だ。
この世界にあるマスタールームと比べてしまうと小さく感じるが、それでも人が1人住むには十分すぎる広さがある。
高い天井からは外の柔らかい光が多く差し込んできて少し暖かい。
そんな光に照らされるこの空間は、御伽の国のようで美しく幻想的に見える。
そんな空間だったが、実際に人が1人住んでいるわけで、沢山の家具があった。
寝具や棚、椅子に机。
それらの家具は木製で統一されているのでこの場所の雰囲気を壊す事はなかった。
しかし、この部屋の一角、一部のスペースだけは違った。
そこにおかしなものがあるわけではない。
その一角に置かれていたのはなんの変哲もない机と椅子だ。
しかし、机の表面は黒く、プラスチックか樹脂で出来ているのか光をはね返している。
それに、骨組みは鉄で出来ているようだった。
椅子も、革でも張られているのか光を照り返し、寄り掛かっても大丈夫そうな立派な椅子であった。
それだけで、全体が木調であるこの世界の雰囲気といかに合っていないのかが感じられるだろう。
その中でも特に際立って不自然に感じるのは、机の上に乗っけられているパソコンだろう。
そのデスクトップコンピューターは現在進行形で使われているようで、画面を煌々と照らしていた。
そこから発せらるこの世界に満ちる自然な光とは全く異なる人工の光が、前の椅子に座っている青年の顔を明るく照らし出していた。
とても青ざめた酷い表情だ。
その画面にはこの世界に起きた変化について纏められたサイトが表示されていた。
世界各国に現れたダンジョン、それらがどういうものなのか、日本に現れたそれがどういうものだったのかなどが様々な見方から詳細に書かれているもののうち1番大きなページだ。
そして今は、そのサイトに追加された一番新しい項目が開かれている。
そこに書かれていた文章や乗っていた画像は、青年を青ざめさせるには十分過ぎるほどの効果があった。
青年に強く抱えられているスライムが心配そうに体を揺する。
脱力し、椅子に全体重を預けると、その場の主たる青年がぼそりとそう独りごちた。




