第15迷宮 最強の装備
「おはよ。エメラルド」
「キュー!」
昨日は初めての戦闘で疲れていたのか、果物集めも出来ずに食事をして汗を流したらすぐに寝てしまった。
敵がグロい……トラウマになりそう……うわぁ……。
なんてことを言っておきながら、いざ寝ると夢も見ずにばっちり熟睡してました。
いつもの金策は出来なかったが、だいぶ減っていたDPが昨日ドロップした魔石のおかげで6000まで回復している。
さらに、ゴブリンからドロップした棍棒も500DPで3本出したのだが、朝起きたら全て売れていた。
なんと、これ全部で8000DP。えっ、急にこの世界がヌルゲーに感じてきた。
だって、大量のゴブリンを蹴散らすだけで1日1万弱ものDPを獲得出来るんだ。
いや、慢心は良くないけど。
この調子で、今日も真のダンジョン攻略をしていこう!と思ったのですぐに準備をする。
今日は、昨日よりも深いところまで行きたいなぁ。Dランクの方が得られるDPが多いから。
なので、まず、昨日手に入れたDPで装備も強化しようと思う。
というのも、昨日ジャージの腕が燃やされてしまったので、入手したDPでとりあえず動きやすそうな服を買おうかなと。
メニューからショップを開いて装備を探していく。
「布の服が1000DP。能力は付いてないのか」
その他になると能力付きで5000DP以上する。
皮の鎧ぐらいがちょうど良いのかな。3000DPで防御力もありそうだ。
そのまま一覧を眺めていると、ちょうどいいものを見つけた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
若草の服 E
敏捷UP(微小)
草で編まれた風通しの良い軽い服
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草で編まれたということは、木属性魔法で硬く強化出来るだろうし。
それに敏捷UPというステータス強化がついてるのだ。
微小で10%らしい。十分破格な上昇率だと思う。
でも初期でこんだけ上がるってことは最終的に服だけで300%UPとかいきそうで怖いな。
それはそれとして、僕の為にあるんじゃないかという作為的なものさえ感じさせるほどぴったりな装備だった。
でも、その分そこそこ高値だった。能力付与された服なので5000DPもする。
DPが初期値で稼ぐあてが無ければ絶対に手を出せないラインだ。
「これを買って、早く回れるなら!」
「キュイ!」
少し悩んだが、それでも買ってみると、ファンタジーの吟遊詩人が着ていそうな大きなマントの様な黄緑の服が出てきた。
袖を通してみた感じサイズは問題なく、着心地も悪くない。
少しヒラヒラするのが気になるぐらいか。
「結構かっこよくない?どう?」
「キュー?」
うーん。なんかごめん。
後、問題は、羽織る感じの上着だったので、結局ジャージは着たままという点ぐらいかな。
腕の部分は隠せたので気にはならない。
私服のTシャツよりはジャージの方がマシだと思うのでこのままでいく。
インナーもそれっぽく合わせたら、この世界観と相まってオシャレだろう。
そのうちバイオリンとか練習し始めてもいいかもしれない。
それとは別に、3000DPを使ってDランクの回復ポーションを1つ買った。
万が一のために1つだけ用意しておくだけで精神上違うだろうから。
「よしっ!いくぞ!」
「キュイ!」
装備は十分整えた。持ち物も昨日より充実している。
準備は万端!
早速マスタールームの後方へ移動して扉を開こうとする。
今日もまた、もやに飲まれた。
次の瞬間には、薄暗い通路。ダンジョンの中に立っていた。
いつ来ても不気味な場所だなぁ。
それでも、大量のDPが獲得出来るとなれば気の持ちようが変わってくる。
自分ながら、金の亡者みたいな考え方だなと思ってしまう。
現金なやつだ。
それでもそう思うだけで、足の進み具合が変わっていくのだから面白い。
そんな調子で、出会ったゴブリンたちを打ち倒して行った。
経験値の分配は距離によって出来なくなるようで、昨日は先走ってしまったせいでエメラルドに経験値を分けることが出来てなかったらしい。
なので、なるべく近づいてモンスターを倒すように気をつける。
「あれ?道が違くない?」
「キュー?」
ルーズリーフにマッピングしながらダンジョン内を進んでいたのだが、昨日の紙と矛盾が生じてしまった。
マッピング上昨日はあったはずのT字路が今日は右折しかなかった。
もしかしてこのダンジョン不思議な感じになってるのか?ローグライクゲームって言うんだっけ。
無限に挑めるやつだ。そんなゲーム性より安全性を取りたかったんだけど。
それからは意味ないと思ってマッピングは諦めた。
その分昨日よりもスピードが上がっていると思う。
その勢いのままで半日も経たずにまたモンスターハウスにたどり着いた。
そこは昨日と同じようにモンスター達で溢れていた。
「いくよ!エメラルド!」
「キュー!」
今回はレベルの上がったエメラルドと共に部屋へ突入する。
前回楽に勝てたけれど気を抜かないようにする。魔法で一発しくじったしね。
エメラルドは極力攻撃を受けないように、あんまり離れないでねと言ったところ、僕の近くの敵を転ばせるように突進してくれている。
かしこ可愛い。
そしてそのまま、魔法を使ってくるゴブリンすら問題なくクリア。
魔法自体は分かっていれば対処できるし真っ先に倒したので。
昨日はここでやめたんだけど、意外と余裕だったしもうちょっと進んでみようかな。
「エメラルドまだ大丈夫そう?」
「キュイ!」
「元気だね!それじゃどんどん進もうか!」
最初の小部屋を超えて進んだ先は明らかにモンスターが強くなっていた。
ゴブリンリーダーや真剣を用いるゴブリンナイトやゴブリンマジシャンなどのDランクの上位存在らしきゴブリンが多数現れる。
刃物持っているゴブリンは相対していて危険を感じたが、まだ結構な能力差があるみたいで十分見切って対処できた。
身の危険を感じると、服のせいで体が物理的にカチカチに固まってしまう。
なんていうある意味弱点が増えているのも分かった。
無意識に魔法を使ってしまったみたいだ。意識すれば大丈夫だった。
昨日と同様に途中休憩を挟みながら、進んでいった。
魔石はなんと昨日の約2倍の量である70個も集まった。
昨日みたいにほとんどEランクということもなく、Dランクの拳ぐらいの大きさの魔石もその半分ほど拾えているので、うん万の稼ぎだ。
「何を買おうかなぁ、ダンジョン大きくしちゃうか」
「キュー♪」プルプル
危ない。危険なダンジョン内で調子に乗らないようにしないと。
そろそろ帰っても良いかなって思った頃、ちょうどいいタイミングでまたモンスターハウスがあるのを感知した。
中にいるモンスターの強さを鑑定していけそうだったらこれで今日は終わりにしよう。
そう思って軽く中を覗こうとすると。
何か大きなものが凄いスピードで飛んできて、近くの壁に当たるとドゴンッと凄い音がした。
僕たちが外にいるのがばれて牽制の先制攻撃を食らったのかと思ったら。
「えっ!?」
そこには、背中から黒い羽の生えた女の子が倒れ伏していた。
そして、その子を飛ばしたであろう大きな棍棒を持ったトロールのようなモンスターがゆっくりと近づいてくる。
「エメラルド!ポーション!」
「キュ!」
僕は色々考える前にあのモンスターに向かって駆け出していた。
周りにはこれまで見なかったゴブリンの大きいやつやゴブリン亜種などの死体がゴロゴロ転がっているので、恐らくさっきの子がやったのだろう。
ダンジョンマスターになって、これから人を殺すのかも知れない!
でも!今ここで助けられる命を見捨てるのは後で絶対に後悔する!
「僕が相手だ!デカブツ!」
そう叫び、およそ3倍ものサイズがあるその敵と相対した。
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所持 6600
獲得 棍棒 500×3
消費 若草の服 5000
Dポーション 3000
差引 100
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平和な松ノ樹