第11迷宮 木工作業
武器類が全体的に高いため自分のステータスの器用さを信じて、武器を作ることはできないのかと思って、色々と調べてみた。
僕のダンジョンに落ちている枝なんかを有効活用できるといいなという思いで。脳内辞書。
「杖の作り方……なるほど」
武具生成のスキルを得て、素材を加工することで、武器として使用可能なことが分かった。
そして、杖には別に魔道具生成のスキルも必要だということも分かった。
素材は用途サイズの木材で十分足りるようなので、杖とか木刀なんかは作れそう。
因みに、それ用の木材なんかもちゃんとショップで売っていた。
しかし、それに必要なスキルを得るのにそれぞれ5000DPが必要らしい。
2つ必要なので10000DPだ。
上手いこと杖を作れれば、一本1000DPとまでは言わないけれど、700DPぐらいでは売れるだろう。
ショップ並のが作れればショップより気持ち安い980DPとかで売れるかも知れない。
今の総DPと素材が用意できるのは今の時点で僕ぐらいなものだろうし、元を十二分に取れると思ったので、思い切って武具生成と魔道具生成のスキルブックと初心者木工キットを購入した。
そう、スキルブックだ。スキルを得るのには、そのスキルブックというのが必要らしい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
武具製作 5000DP
武器と防具を製作することが可能になる
魔道具製作 5000DP
魔法や魔力を込めた道具を製作することが可能になる
魔力操作のスキルを習得していない場合使用不可
初心者木工キット 3000DP
木工に必要な初心者用のセット
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ショップから購入してみると、それらはすぐにその場に現れた。
そこにあったのは一冊の本。小説の単行本のようなサイズの本なのだが、上等な皮のハードカバーである。
これがスキルブックか。
表紙には武具製作や魔道具製作と彫られている。
目の前に落ちているそれをそのまま手に取り、中身をパラパラと覗いていくが、その中には文字が一切書いてないし、絵すらも書いていなかった。
全てのページがまっさらな白紙だ。
これでどうやって知識を得るのか、ダンジョンコアから知識を授かったように体の中に入ってくるのだろうか。
そんなことを思いながら一応全てに目を通す。
そして、全てのページを流し見た後にその本を閉じようとすると、たちまちその本は消えた。
その瞬間、容量が増えたというか、自分の出来ることが増えたような、不思議な感覚に襲われた。
「ステータス確認!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
スキル
ダンジョン操作 身体強化 魔力操作 精神強化 経験強化 再生 木属性魔法 農業 採集 商売 武具作成
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ステータスを確認すると、ちゃんと武具作成というスキルが載っていた。
「良かった、これでいいんだ。もう一冊も」
その場にあったスキルブック2冊を読み終えると、早速作業を始めることにした。
「よし、杖を作ってみるか。そこら辺の枝にヤスリを掛けながら魔力を込めていけばいいんでしょ。楽勝!」
「キュイ!!」
まず、散歩しながら使えそうな枝を拾ってこようと思って、玉座から立ち上がろうとしたが、その前にエメラルドが枝を渡してくれた。
僕の独り言から行動を理解して、散歩した時に拾ってあった枝を渡してくれたようだ。
なんか使えそうだと思って持っておいて貰ったやつだ。
大量の才能をつけたけれど、ここまで有能だとは思ってなかった。
最初の時も僕のやろうとしたことを理解して穴掘ってくれたりしていたので今更かもしれないけど。
「ありがとうエメラルド!」ナデナデ
いつもより多めに撫で回す。
「キュー♪」プルプル
少し賢いペットぐらいだと思っていたので、少し驚いたが、ありがたくその枝を受け取ると床に座って製作を始めることにする。
杖の作り方は簡単だ。
20センチ程の枝から、横枝などの要らない部分を全て切り落とす。
そのあと、ヤスリを掛けて持ちやすくしながら、魔力を通しスキルを使う。
一言で言えば簡単そうな作業だし、僕もそう思ったので手を出したのだけど、実際にやってみるととんでもなく難しかった。
何回もやっているのだけれど、枝を加工するところで、余計なところを切ったり削ったりしてしまって、不恰好な姿になってしまう。
その為に魔力を扱う際になんだか上手く出来なくて、折れてしまったり、手元から吹っ飛んだり、爆破して木っ端微塵になってしまったりするのだ。
毎回ちゃんと見た目は結構綺麗に出来ていると思うのだけど、杖にするにはダメみたいだった。
器用だからでなんとかなるものじゃなかったらしい。
ようやく上手くできたと思っても絶対に武器と判断されていないだろうというものになっていたりする。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
魔力の籠った枝 F−
ダンジョン産の魔力の籠った枝
少し折れにくい
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それからずっと、エメラルドが集めてくれる枝をひたすら試行錯誤し、加工していった。
マスタールームの地面に座ってひたすら腕を動かし続ける。
辺りには、折れづらくなった枝と木屑が散らかっていく。
そうして製作を始めてから4時間以上が経過し、木工スキルと各種職業が付いたところで、作っていた杖は今までのものより綺麗で、そして明らかに魔力が通るものだった。
ようやく杖といっていいものが出来たのである。
「よっしゃ〜!これは出来たでしょ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
粗悪な杖 F
魔力伝達 F
何も無いよりかはましな片手杖
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ついに出来た作品が説明欄で馬鹿にされるという。
こんな残念な結果を目の当たりにしたことで、集中も途切れた。
「はぁー」
疲れが急に出たので、道具を放り投げてそのまま後ろに倒れる。
因みに最初にこのくらいできるだろうと馬鹿にした杖はこれである。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
初心者のステッキ E
魔力伝達 E
初心者用の片手杖
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
全然届かなかった。
正直スキルを取得してから始めたことなので簡単に出来ると軽く考えていた。
それが何時間もかけた挙句に、一個下のランクしか出来ないなんて!
しかし、一応ものになるものが製作出来たので、ここから頑張れば元が取れる。
因みにその杖をマーケットに300DPで試しに出してみると数分で売れた。
きっと初心者の杖に1000DPを出してまで買いたくはないような、けち臭い人が居たのだろう。
……同類かな?
そこからも暫く色々試しながら杖の製作をしていた。
慣れてきたのか、十数本同じランクのものは作る事ができたがそれ以上のものは作れなかった。
それら全て半ばヤケクソに全てマーケットに放出した、売れないことはないので安心だ。
思っていた以上に上手くいかなったのでもう諦めて、果物と作った杖を売ったDPでちゃんとした杖を買うことにする。
ふと隣を見てみると、僕が作業している間にせっせとエメラルドが採取してきてくれた木の枝が積み重なって、小山のようにになっている。
どうしようかなこれ。
マーケットに出して売れるか試してみようか……いつでも取り出せるし。
木の枝の山を片付けると、気分転換と金策のために外へ散歩に出かける。
言っても全部自分の家みたいなものだけど。
ダンジョン内の果物は、一本につき1日に1〜3個ほどちゃんとしたやつがなるようで、適当になるか回るだけで結構見つけることが出来た。
そこから自分で食べる分や予備を抜かした300個を全て10DPで売り、そこからそこそこ使えそうな両手杖を買った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
丈夫な杖 E+ 5000DP
魔力伝達 E
なかなか壊れない丈夫な両手杖
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
魔力伝達は初心者の杖と同じほどなので悪くないし、丈夫な木製の杖であれば、木属性魔法をかける事で金属のように固く出来るので、杖で叩いて攻撃出来ると思ったのだ。
結局杖1本手に入れるのに結構なDPを使ってしまった。
これは暫く生産職するべきかな。
遅めのお昼は初めてちゃんとキッチンを使って、果物を焼いてみた。
結構美味しかった。
「キューッ!」プルプル
ーーーーーーーーーー
所持 30200DP
獲得 杖×14 +4200DP
果物×300 +3000DP
消費 武具生成 -5000DP
魔道具生成 -5000DP
木工セット -3000DP
杖 -5000DP
差引 19400DP
これからの執筆活動、少しでも応援して頂ければ幸いです。
平和な松ノ樹