ほんのちょっぴりの人望
決意した直後、アンナがとった行動は食事だった。
牢獄ではまともなものを食べさせて貰えなかったので、王宮の食事が恋しくなったのだ。
食堂で席に座ると、料理がどんどん運ばれてきた。口に運ぶと感動のあまりアンナは涙した。それを見た使用人たちが慌てて料理長を呼んだ。
「アンナ妃殿下、なにか不手際がございましたでしょうか?」
「こんなにも、食事とは温かなものだったかしら?」
「はい?」
アンナは涙を拭うと、料理長に微笑んだ。
「とても美味しいですわ。ありがとう。」
「え?」
料理長だけでなく、使用人たちもポカンと口を開けた。アンナ姫が自分に仕える者を労ったことなどいままで一度もなかったからだ。
アンナは皆を見渡した。
「ごめんなさい。急に変なことを言って驚かせてしまって。でも、これが私の本心よ。いままでは身分を重視し過ぎていてあなた達への感謝を表に出さないばかりか、接し方がよくわかっていなくて余計酷いことをしてしまったわ。許してほしいとは言わないけれど、これからは自分が思ったことを正直に表に出していこうと思っているから、こんな私をこれからもよろしくね。」
そしてまだ少し涙を浮かべていた王女の微笑む姿はとても愛らしかった。
またたくまにこの出来事は城中の使用人に広まり、アンナ姫は幼く、王女としての重責のあまり従者への接し方がわからなかったが、本当はちゃんと人に感謝できる方なのだという認識が広がった。
いままでのアンナが王女の重責など意識しているわけがないのだが、、、
しかしアンナは嘘をついたわけではない。ありがとうと言ったのは本心だし、いままでは自分は王女だからと何をしてもいいと思っていた。しかし牢獄にいれられて処刑を目前にして人望の大切さを知ったのだ。だからこれからは人望のためにも感謝を伝えるのを怠らないようにするからよろしくね。という意味である。ただタイムスリップしたことがバレたらまずいので少し抜粋しただけだ。
城内での人望をほんのちょっぴり上げることに成功したアンナであった。