表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: K.NOT

 寝ている間、人間は生きていて、同時に死んでいるのだ。というようなことを、誰かが言っていたような気がする。

 それを彼女に話してみると、彼女はくすくす笑いながらこう答えた。

「我思う、故に我あり。ある哲学者の言葉。それってつまり、考えていることができない睡眠時間中は、死んでいるのと同じ。けれど、身体は生命活動を維持し続けている。だから生きながら死んでいる。そう言いたいんじゃないかな」

 私はよくわからなくて、首を傾げて見せる。彼女は嫌な顔もせず、一つの分かり易い例えを持ち出す。

「例えば、そう。沢山のチューブに繋がれて生き永らえている眠り姫は、本当に生きていると思う」

 問い掛けは私に向けて。

 わからない。そう率直に答えると、彼女は笑顔で頷いた。

「そう、分からない。判らない。それでいいの、生きているかどうかなんて。生きていること自体に、何か意味があるわけじゃないんだ」

 読みかけの本を閉じて、彼女はソファから立ち上がる。

「私たちが、今まさに見ている景色だって、夢なのか現実なのか判らない。夢の中で見る夢のように、覚めてみるまで判らない」

 ゆっくりと歩いてゆく先には、大きな鉄の扉が聳えている。その傍らにあるパネルに何事かを打ち込むと、重い扉はのんびりとスライドしていく。

 その先に現れたのはだだっ広い空間と、沢山の円柱状のカプセル。床に対して垂直に立ち、半透明になったカプセルの中には人影が浮かんでいる。更に人影からは様々な管が伸び、カプセル底面に接していた。

「夢かどうか、なんて、覚めてみるまで判らない。だから、確かめたいなら手を貸すよ。私は、たった一つの冴えたやり方を知っているから」

 差し出された拳銃は、目が覚めるように冷たかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ