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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第二十二章 深淵の決戦
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投票イベントのクエスト

 ログインしました。塩獣(ソルティア)の上位種とは一通り戦ったが、手応えは十分にあった。アイテムのドロップこそ渋かったものの、塩獣(ソルティア)よりも与し易いという結論が出た。


 塩獣(ソルティア)は突拍子もない攻撃をしてくることが多かった。一方で上位種になると人型になったり獣型になったりしたことで、形状に囚われた攻撃方法に固執してしまっていたのだ。


 人型であれば武技や魔術と共に侵塩が飛んで来るし、獣型も素早い動きで触れられたら侵塩の影響を受けてしまう。だが逆に言えば予測不能な動きはしてこないので、結局は普段通りに戦えば良いだけなのだ。


 人型ならば闘技場で対人戦の経験を積んでいる者達の敵ではなく、獣型も地上にもっと強い魔物がゴロゴロいる。中和剤の準備さえあれば恐れる必要はないのだ。


 ただし、さらに上位種が現れたならば話は異なるだろう。そのレベルからは我々と同等以上の地力がありそうだし、決して油断は出来ない。


 深淵の探索の話はさておき、今日は例のイベント、『王太子婚約者投票戦』が始まる当日だった。投票結果には大して興味はないものの、クエストについてはチェックしておくべきだ。さて、どんなクエストがあるのかなっと。


「ふむ…何と言うか、意外と無難なモノが多いな」


 投票券を得るためのクエストの内容は意外と普通なモノが多かった。魔物の討伐数や功績や植物の採取数によって追加の投票券と報酬のアイテムが得られるというもの。この辺は意識せずとも自然と得られることだろう。


 ただ、一部のクエストは少し毛色が変わっている。プレイヤー同士でアイテムの売買やパーティーを組んでフィールドを探索することなど、プレイヤー間で交流することを奨励しているようなのだ。他にもNPCに挨拶をするやNPCと共同作業を行うなど、NPCとの交流も奨励していた。


 『アルトスノム魔王国』では日常的に交流している。むしろ住民の大半を占めるNPCと交流せずに過ごす方が難しい。このクエストは放っておいても達成しそうだ。


「しかしなぁ。まさか対人戦も推奨されているとは」


 一方でプレイヤー同士の戦闘もクエストに入っていた。これはPKを推奨するものではなく、相手に承諾を得ることを前提としていた。そうでなければクエスト達成にはならず、ただのPK扱いになるらしい。こうしておかなければ合法的に不意打ちしまくる連中が現れるのだから、ちゃんと予防線は張ってあるようだ。


 また、対人線にもちゃんとルールがある。体力が三割を切るまでダメージを受けた時点で敗北扱いで、戦闘終了後にお互いの体力と魔力は全回復する。戦闘中は魔術や能力(スキル)を除いて回復することは出来ない。ポーションをガブ飲みが許されるなら、資源を持っている方が強いのだから。


 さらに体力が少なくなった場合にのみ使える能力(スキル)は、体力が三割に近くなった時点で使えるようになる。要は体力が七割の状態で戦えという意味だろう。体力の多さが強味なプレイヤーにとっては不利なルールに見えるが、代わりに防御力が上昇するので感覚はあまり変わらなさそうだな。


 対人戦のクエストは対戦回数と勝利数であって、勝率は関係ない。敗北など気にせず対人戦を楽しめということだ。それは良いのだが…


「おう、兄弟ィ!闘技場に行くぞォ!」

「…そうなるよなぁ」


 対人戦でアイテムまで得られるとなれば、我が兄弟分が歓喜するのは想像に難くない。絶対に来ると思っていたが、もう来たのか。ジゴロウは私の部屋の扉を砕かんばかりに叩いている。わかったから叩くんじゃない!


 今行くと応えると流石に叩くのは止めた。だが、扉を開けた瞬間に肩を叩いて私を急かす。ええい、止めろ!先に日課の水やりがあるんだ!


 ジゴロウと共に賢樹への水やりを行った後、私達は足早に闘技場へ向かう。するとかなりの人数が闘技場の前に集まっていた。同じことを考える者がこんなにいたということだろうか?


「集まってんなァ、野郎共ォ!」

「おいおい。オメェが呼び出したんだろ、ジゴロウ」


 どうやらジゴロウが集めたようだ。集まっているのはマックやウロコスキーなどの武闘派が中心である。対人戦をガッツリやるつもりだろうし、対人戦が好きな者達を集めるのは当然と言えた。


 少し意外だったのはトロロン達『溶岩遊泳部』の一行も参加していることだ。あまり対人戦には興味があるようには見えなかったのだが、そうでもないらしい。溶岩地帯でブイブイ言わせていた実力を見せてもらおう。


「それで…こんなに集めてどうするんだ?順番などは決めているのか?」

「あん?そんなモン、適当でいいじゃねェか」


 いいわけないだろ。グダグダになるのが目に見えている。闘技場は広いが、同時に何組も戦わせるのは流石に無理だからだ。仕方がない。ここは私が一肌脱ぐしかあるまい。以前に行った対戦会の時のノウハウを活かすのだ。


 私は数人のNPCの国民と共に臨時の対戦会の進行を請け負った。闘技場は広いが限度がある。一度に戦わせられるのは二組が限界だろう。回数を熟したい者達を満足させるため、私は奮闘せざるを得なかった。


「援軍に来ました!」

「助かるよ、アイリス」


 対戦会を運営していると、アイリスを筆頭に次々と運営側として手伝ってくれる者達が増えていく。主に生産職のプレイヤー達なのだが、彼らにも手伝いについて思惑があった。それは手伝うだけで次々とクエストがクリアされていくからだ。


 クリアされるのはNPCと共同作業するというクエストだ。手伝いのために彼らを呼び寄せたことが功を奏した形である。さらに時間が空けばプレイヤー同士でアイテムの交換を行ってそちらのクエストもクリアしていく。裏方仕事でも利益があるとなれば、手伝ってくれる者が現れるのも自然な流れと言えよう。


「報酬は思ったよりも美味しいな」

「そうですね!」


 私の呟きにアイリスは嬉しそうに返す。クエストの報酬はポーションなどの消耗品、そして金属や魔石などの素材アイテムだった。どれもこれもいくつあっても嬉しいアイテムである。


 しかも、この報酬のアイテムを物々交換してもクエストクリア扱いになるのだ。自分が不要なアイテムを交換すれば、不要なアイテムを処分しながら必要なアイテムと報酬のアイテムが貰えるということ。不要物が二つのアイテムに化けるのだから、やらないという選択肢はなかった。


「それにしても…改めてジゴロウは強いことがよくわかる」

「連戦連勝ですか…同じプレイヤーだとは思えませんよ」


 少し時間が出来たタイミングでアイリスとジゴロウの戦いぶりを観戦する。やはりジゴロウの強さは圧倒的だ。虚実を織り交ぜた駆け引きと、的確に打ち込むただの拳が武技並の威力がある。そして一度武技を使えばとんでもない威力で体力を削り取るのだ。


 ジゴロウは鬼という種族(レイス)の強みを限界まで引き出しているプレイヤーと言っても過言ではなかろう。私も自分のアバターの性能を限界まで引き出せるように頑張らなければなるまい。


「はぁい、イザームちゃん。手伝いに来たわ」

「ママか。助かるが…参加しなくても良いのか?」


 続々とやって来る助っ人であるが、意外だったのはママがこちら側に来たことである。てっきり参加者側だと思っていたので思わず尋ねてしまった。


「今日はこっちね。対人戦は明日にしようと思ってるのよ」

「そうなのか。ところで、ママは誰に投票するつもりなんだ?」

「あ、それは私も思ってました。誰か推しがいるんですか?」


 コンラートと縁のある令嬢に投票するように頼んだのだが、ママはそれを断った。そんな彼女が誰に投票するのか、気にならない訳がない。それはアイリスも同じだったようだ。


「フフフ、良く聞いてくれたわね。私が投票したのは…………この娘よ!」


 そう言ってママが可視化した投票画面に表示させたのは、一言で言い表すならば薄幸の美少女である。淡い水色のドレスに身を包み、角度によっては紫色にも見える黒髪をたなびかせながら窓の外を物憂げに眺める姿は様になっていた。


 確かに美しい少女ではあるが、わざわざママが投票する理由がわからない。だが、その理由はすぐに本人の口から語られた。


「ちょっと前に依頼を受けて知り合ったの。とっても優しい娘だったのよね。優勝は無理でしょうけど、精一杯応援したいの」

「なるほどな」


 精一杯応援したい、か。どうやらママはクエストの報酬欲しさと打算からではなく、真の意味でこのイベントを楽しむつもりらしい。少し羨ましい気持ちになりながら、私はせっせと対戦会の進行と運営に精を出すのだった。

 次回は5月22日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ママみたいに純粋に応援したい人が居ると楽しいイベントなんだろうな。
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