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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第五章 湖の死闘
52/688

アサシン・ルビーよ

――――――――――


種族(レイス)蛙人(トードマン) Lv12~15

職業(ジョブ):戦士 Lv2~5

能力(スキル):【舌】

   【槍術】または【斧術】

   【敏捷強化】

   【水棲】

   【暗視】

   【粘液】

   【雷属性脆弱】


――――――――――


 これが襲ってきた蛙人(トードマン)のステータスだ。正直に言えば、鼠男(ラットマン)と変わらないな。蜥蜴人(リザードマン)の漁師よりも弱いし、武装も貧弱だった。村長なら我々同様、麦の穂を刈るように倒せるだろう。


 しかし、とにかく数が多かった。さっきだけでも百以上倒したんじゃないか?数で圧殺されれば蜥蜴人(リザードマン)の村は簡単に潰されるに違いない。


 今でこそ縄張りへ侵入するのは散発的だが、一斉に侵攻されたら村は崩壊するだろう。そこまで追い詰められたなら、龍王(アグナスレリム)様が動き出すと思うがな。


「どう考えても数が多すぎる」


 これが、今回の調査の唯一にして最大の成果だ。この異常増殖が、何故起こったのか。これを解き明かすことが全ての謎の答えだと思われる。


 そこで村長に事情を説明すると、老獪そうだった彼が狼狽を露にした。彼曰く、確かに蛙人(トードマン)は自分達よりも繁殖力は上だが、流石に百を超える戦士がいるのは普通ならあり得ないとのことだ。


 蜥蜴人(リザードマン)の村では総人口の約五百に対し、戦士は約五十人だった。蛙人(トードマン)の総数は推定で千だと言われており、集落における戦士の人数の割合が蜥蜴人(リザードマン)と同じであれば戦士は百前後のはずだ。


 しかし我々が百以上倒したのに、相手にはまだまだ余力がある様子だった。十中八九、総数が膨れ上がっている。やはり、その原因と蛙人(トードマン)の異常行動は無関係ではないのがより明白となったわけだ。


「当面の目標は蛙人(トードマン)の巣を目指すことだな。きっとそこに何がある筈だ」

「それは解るけどよ、あれだけいたら俺達でも突破なんざ今のままじゃ無理だぜ?」


 そこなんだよなぁ。無数にいる蛙人(トードマン)を倒しながら進むのは現実的じゃない。絶対にどこかで誰かが倒れ、そこから戦線が崩壊するのが目に見えている。


 一番無難なのはチマチマとレベルを上げて、全員が30レベル位に達してから挑む方法だ。これなら進化によって格段に強くなっているはずなので切り抜けられる可能性は高い。


 その代わり、時間が非常にかかる。今、最もレベルが低いのは24レベルであるアイリスだ。彼女が6レベル上げるまでに、何百匹の蛙人(トードマン)を狩ればいいのだろうか。ネットゲームでは良くあることらしいが、気が遠くなりそうだ。


「なら、ボクが行くよ!」


 そこで名乗りを上げたのはルビーだった。なるほど、彼女は暗殺粘体(アサシンスライム)。隠形に優れ、更に水辺でも音もなく活動出来る。うってつけの人材、もとい魔材というわけだ。しかし、これにも問題がある。


「一人で、か?」


 彼女と同じレベルで隠形が可能な仲間はいない。となれば自ずと単独行動をしてもらう事になる。流石に厳しいのではないか?見つかったとしても恐らくは逃げ切れるだろうが、それでもかなり危険であることは確かだ。


「大丈夫だって!逃げ足には自信あるし!」

「そうか…なら、我々は陽動として派手に戦って奴等の気を引くとしよう。皆もそれでいいか?」


 残った四人で暴れれば、多少はルビーの負担も減る筈だ。同行出来ない者達による精一杯の援護である。


「いいぜ。雑魚をダラダラとプチプチ潰すよりゃずっといい」

「ルビー、無理しないでね!」

「頑張るのじゃぞ」


 皆も納得したようだな。源十郎は反対するかと思ったが、むしろお孫さんの活躍を嬉しく思っているらしい。似た者同士という訳か。


 出発は一度ログアウトして休憩してからにした。龍という化け物との遭遇や蛙人(トードマン)との連戦で精神的な消耗が激しいと判断したからだ。幸いにもここは安全な場所だ。見張りを残す必要もないので、揃ってログアウトするぞ。



◆◇◆◇◆◇



 戻って来ました。おや、私が一番乗りか。そう言う日もあるわな。


 さて、この時間に何をしておこうか。何をするにも時間が微妙だぞ。うーん…


 あ!そうだ、思い出した!SPに余裕が出来たら取ろうと思っていた能力(スキル)があったじゃないか。ステータス上昇系の能力(スキル)だよ!【知力強化】と【精神強化】、それに【体力回復速度上昇】と【魔力回復速度上昇】だ!


 いやいや、すっかり忘れていたよ。これから連戦になるし、イベントで得たSPも余ってるから今すぐ取得しよう。必要SPは前と変わっていないな。よし、取得!


――――――――――


SPを消費して【知力強化】を取得しました。

SPを消費して【精神強化】を取得しました。

SPを消費して【体力回復速度上昇】を取得しました。

SPを消費して【魔力回復速度上昇】を取得しました。


――――――――――


 SP26を突っ込んだぞ!【鎌術】と合わせて38SPを使った訳だけど、まだまだ余っている。けど、後から必要になるかもしれないし、これ以上は注ぎ込まないでおくか。


「戻ったぜ」

「イザーム、早いですね」

「うおお、燃えてきた!」

「これこれ、落ち着かんか」


 おっと、ここで皆が到着か。四人がほぼ同時というのも珍しいのかな?


 そんなことより、蛙人(トードマン)の縄張りに出発だ。さぁて、精々派手に暴れてやりますか!



◆◇◆◇◆◇



「うひゃあ、一杯いるなぁ」


 ボクは暗殺粘体(アサシンスライム)のルビー。魔物だけのパーティー、『夜行』の斥候職だよ。今、ボクは一人で蛙人(トードマン)の巣に侵入してるんだ。


 水の中をスイスイと泳げば見付からずに忍びこむのは以外と楽だったよ。途中で見掛けた蛙人(トードマン)は全員気付かせずに倒したから、【暗殺術】のレベルが上がった。やったね!


 とまぁ、道中は楽だったし警戒もされてないんだけど…思ったより巣が広くて蛙人(トードマン)の数も多いね。ここからは慎重にならないと!


「……」


 ボクは粘体(スライム)の身体を薄く伸ばして壁や地面、屋根の上を伝って奥へ奥へと進んでいく。藁葺き屋根のせいで音が鳴った時はヒヤッとしたけど、バレなかったよ。ギリギリセーフ!


「ここだね」


 ボクが当たりを付けた建物は、どれよりも大きい家。きっと重要な施設だよ。物陰から観察すると、思った通り警備が厳重だ。


 数もそうだけど、何よりも敵が強そう。これまで見てきた蛙人(トードマン)よりも筋肉質だし、顔付きもなんだか厳めしい。私達と同じ、20レベル台だと思う。


 それが十体で周囲を囲んでるって言われたら、忍び込む何て無理だと思うでしょ?でも、大丈夫!ボクには秘策があるんだ!


「液状化、発動!」


 これはボクの身体が完全な液体になる能力(スキル)。『風と探索の女神』ホリュセさんの加護を貰った時に使えるようになった、多分ボクだけの能力(スキル)だ。


 ゲーム内の一日に一回しか使えないし、戦いには向かないけど、ほぼどんな場所にだって潜入できるから便利なのは確かだよ。それに蛙人(トードマン)の巣は蜥蜴人(リザードマン)の村とほとんど同じ立地条件だから、水が至る所にある今の状況にはうってつけ!


 地面に染みている水に紛れて家に近付いて、土壁の隙間から潜入に成功!上手く行った!


「わわっ!」

「ゲコ?」


 あ、あっぶなぁ~!潜入したのはどこかの廊下だったんだけど、液状化が切れた時に丁度角から巡回の蛙人(トードマン)が曲がってきたんだよ!き、気付かれたかと思ったぁ~!


 急いで飛び上がって梁にくっついたボクは、それを伝って移動する。家の構造は単純みたいで、梁の上を行けばどの部屋も覗けそうだね。色々見て廻ろう。


 うーん。大量発生の原因っぽいものは無いなぁ。魔物の素材で出来た装飾品がぎっしり詰まった宝物庫っぽい場所や同じような武器庫はあったけど、中身は大したことなかったし…


 だってさ、装飾品ならアイリスが良い物を作ってくれるもん。この前だって装備したら移動速度が上がるアイテムの開発に成功してたし。アイリス印の装飾品に比べたら、蛙人(トードマン)が集めたお宝は残念に見えちゃうんだよね。


「あと調べていないのは、ここだけ…うん?声が聞こえる?」


 家の構造から見て中央に当たる場所が最後の部屋だね。梁を伝ってそこへ近付くと、部屋の中から声が聞こえる。何かありそうだね!身体を細くして壁の隙間から中に入ろう!


「ッ!?」


 く、臭い!?何?この臭いは!?ボク達のアジトがある下水道も臭いけど、ここの臭さは毛色が違うよ!何て言うか…そう!理科室の薬品の臭いだ!刺激臭とか腐卵臭って奴だよ!


「ゲロォ…ゲゴゴゴォ…」


 刺激臭が満ちる部屋の中にいたのは、今まで見たどの個体よりも大きい、()()蛙人(トードマン)だった。何でメスだと解ったかって?今まさに卵を産んでいるからだよ!


 うげぇ、一つ一つが人間の頭位の大きさがある蛙の卵って…ううっ!気分が悪くなってきた…。


「ゲゲゴォ…ゲェ…」


 気分の悪さは我慢して…このメスが原因かもしれないね。だって声を出す度に卵の入ったジェル見たいなのを産んでるんだもの。一回の産卵で十個前後の卵を産んでるみたいだね。そりゃあ、無尽蔵に増えるよ。


「いけるかな…?いや、やるんだ」


 この蛙人(トードマン)が原因なんだとしたら、ここで倒してしまえばクエストをクリア出来ると思う。だったら終らせてみせる!


 ボクは何の根拠も無く暴走している訳じゃない。ちゃんと倒せる可能性の方が高いと思っているんだ。


 ボクの【暗殺術】レベルは13。そこまでで手に入れた武技は二種類ある。一つ目は夜襲。効果は夜、具体的にはゲーム内で午後6時から午前6時までの間に、奇襲の成功率が上昇すること。今は大体午後7時だから、効果があるね。確実に気付かれてないし、ほぼ確実に成功すると思う。


 二つ目は断骨。効果は斬撃武器による切断が発生し易くなること。ハッキリと書かれて無いけど、これって首を斬り落として即死させ易くなってるんだと思う。奇襲じゃなくても効果があるから便利だよ。


 んで、武器は『蒼月の試練』で貰った二本の短剣だね。イザームに【鑑定】してもらった性能はこんな感じ。


――――――――――


白の短剣 品質:神 レア度:G(神級)

 あらゆる魔を祓う白亜の短剣。破壊不可。所有者固定。

 真の力は持ち主の成長と共に解放されるだろう。

 初期効果:【切断力上昇】Lv3、

      【対魔物ダメージ増強】 Lv3


黒の短剣 品質:神 レア度:G(神級)

 あらゆる魔を飲み込む漆黒の短剣。破壊不可。所有者固定。

 真の力は持ち主の成長と共に解放されるだろう。

 初期効果:【敏捷増強】Lv3

      【変形】


――――――――――


 最初は戸惑ったよ。だって二本あるけど、他の皆よりも武器の能力が少ないんだもん。私だけ冷遇されてるのかと思って落ち込んだこともあるけど、そうじゃなかった。ボクのレベルが20になった時に解放された【変形】。これがありきの武器だったんだ!


「変形、混沌の黒白剣!」


 黒の短剣は変形して白の短剣と合体させる事が出来るんだ!そして合体した時、武器自体の攻撃力は上がって、更に両方の能力を使える。合体には制限時間があるけれど、不意討ちの一回に使うならそれで十分だよ!


「ふっ!」


 ボクは梁から音もなく蛙人(トードマン)の後ろに降りると、混沌の黒白剣を横薙ぎに振るう。皮、肉、そして骨を断つ感触が確かに伝わってきた。


ゴトリ…


 鈍い音を立てて蛙人(トードマン)の頭が床に落ちる。即死させるのは成功だ!


――――――――――



種族(レイス)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

職業(ジョブ)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

【短剣術】レベルが上昇しました。

【暗殺術】レベルが上昇しました。

称号(タイトル)、『見えざる暗殺者』を獲得しました。


――――――――――


 おおお!やった!久しぶりの称号(タイトル)だ!どんな内容なのかな…


ブヂュルルルルルルルル!!!


 えええ!?な、何それ!蛙人(トードマン)の死体から剥ぎ取って逃げようと思ったら、死体から凄い勢いで卵が出てきたよ!?正確な数はわからないけど、数百個はあるんじゃ…?新しい称号(タイトル)で喜んでいる場合じゃないよ!一つでも多く潰さないと…!


「ゲロ?」

「ゲコゲコ?」


 ヤバっ!今の汚い音が他の蛙人(トードマン)を呼んじゃった!折角ボクが無音で暗殺したのに!けど、まだボクが犯人だってバレた訳じゃない。急いで逃げよう!それから皆に報告だ!


 ボクがこのクエストを終らせてしまうつもりだったけど、やっぱり隠しクエストは一筋縄では行かないか!ちょっと悔しいけど、やれることはやったさ!

 サブタイトルで遊んで見ました。面白いですよね、あのシリーズ。


 ルビーの武器は合体武器です。合体時間は短いですが、一撃で暗殺するなら時間なんて飾りですよね。

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【誤字報告】 「それは解るけどよ、あれだけいたら俺達でも突破なんざ今のままじゃ無理だぜ?」 ⇩ 「それは判るけどよ、あれだけいたら俺達でも突破なんざ今のままじゃ無理だぜ?」  水の中をスイスイと泳げ…
[良い点] ォェェェェェェ(蛙恐怖症の叫び)
[一言] ルビーの一人称視点で、一人称が「私」と「ボク」が混在しているのが少々気になりました。なにかルールがあり分かれているのかと思いましたが、わたしは見つけられず……。変換忘れ、変換ミスなのかなと気…
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