チンピラの成果ととある能力
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【杖】レベルが上昇しました。
【召喚術】レベルが上昇しました。
【付与術】レベルが上昇しました。
【符術】レベルが上昇しました。
【死霊魔術】レベルが上昇しました。
【言語学】レベルが上昇しました。
【死と混沌の魔眼】レベルが上昇しました。
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ログインしました。地獄との取引だが、コンラートはかなり力を入れるつもりのようだ。私達のようなプレイヤークランに対し、運搬時の護衛依頼をわざわざ出すほどだった。
コンラートが商売するのは当然だが、運搬業務に携わる住民は中々の胆力である。コンラートに忠実なのは、彼よって救われた者ばかりであるからだと聞く。戦う力はないというのに良くやるものだ。
「こっちですぜ、アニキにオジキ!よう、兄弟!」
「ほ〜ん。スゲェじゃねェか」
「…本当に護宝鬼と仲良くなったんだな」
そして現在、私は『怒鬼ヶ夢涅夢涅』のチンピラに連れられて護宝鬼と物々交換を行う場所に来ていた。我々と共にアグナスレリム様の援護へ向かわなかったチンピラ達は、護宝鬼と仲良くなっていた。その方法は、チンピラにしか出来ない方法だった。
今、我々の眼の前で一体の護宝鬼がチンピラと肩を組んでいる。その体毛は、まるでシャンプーのCMでモデルや女優がたなびかせる髪のように艶々であった。
そう、チンピラはその理容師としての技術を用いて護宝鬼の体毛を手入れしてやったようだ。いや、まず手入れさせてもらえるようになった経緯が知りたい。何と言う高いコミュニケーション能力であろうか。
非常に寡黙で一言も喋らず、やり取りも最低限に抑えようとする彼らだが、チンピラが一緒にいれば随分と打ち解けてくれる。逆に言えば彼がいなければこれまで通りの塩対応、とまでは言わないが露骨にテンションが下がるのだ。
それは『怒鬼ヶ夢涅夢涅』のメンバーでも同じこと。チンピラだけが護宝鬼と強く結びついているらしい。チンピラは底なしに良い奴なので、何か予定がない限りは頼めば一緒に来てくれるのが助かるところだ。
相変わらず喋ったことは一度もないのだが、何故か彼らと一定時間一緒にいると【言語学】の経験値が溜まるのは謎であった。私に限ったことではないらしく、不思議に思っていたのだが…その理由までもチンピラは解き明かしていた。
「オジキ。そっちの護宝鬼が毛の動きからしてオジキに用があるみたいですぜ」
「そ、そうなのか。すまない、まだマスターしきれていないんだ」
どうやら護宝鬼という種族は毛の動きによって意思の疎通を図るようなのだ。つまり、彼らは前々から我々に話し掛けていたのだ。それに反応を見せなかったり頓珍漢な答えを返していたりするから彼らは不機嫌になり、我々は彼らが気難しいと感じるのである。
ならば我々も毛の動きをよく見れば良いと思われるだろうが、そう簡単に行くなら苦労はしない。毛の動きは非常に微細であり、風で動いているのか言葉を発しているのか分かりにくいのである。
私の【言語学】はレベルがもう50に到達しているのだが、全く解読出来なかった。一方でまだ30レベルにも達していないらしいチンピラは読み取れる。髪の毛…と言って良いのかわからないが、それへの親和性の高さが物を言うのかもしれない。方向性は全く異なるが、これもジゴロウなどと同じリアルチートというものかもしれない。
ちなみにチンピラのお陰で我々は毛によるコミュニケーションは非常に困難だということは護宝鬼達にも伝わっている。それ故に向こうからもジェスチャーなどで意思の疎通を図ってくれていた。
だが、やはり面倒臭いのだろう。その必要がないチンピラがいる時といない時とで反応が大きく異なるのはそれが理由であった。
「ええと、色々とアイテムはあるが…?」
「ちょいと失礼!ええと…うんうん…えぇっ!?マジかよ!?」
私が手持ちのアイテムを出そうとしたのだが、護宝鬼は何も言わずにこの…何だこれは?錆びた金属製と思われる円盤を私に押し付けてくる。直径は五十センチメートルほどもあり、抱えるにはかなり大きめだ。えぇ?こんなの渡されても困るんだが…?
私が困惑していることを察してか、慌て手チンピラが寄ってくる。彼はフンフンと頷いた後、驚きに声を張り上げた。一体何事だと言うのか。『怒鬼ヶ夢涅夢涅』の他のメンバーも当然わからないので、チンピラが何を聞き取ったのか口に出すのを待っているようだった。
「スゲェっすよ、オジキ!それ、マジでスゲェモンっぽいっすよ!」
「そう…なのか?錆びた円盤にしか見えないのだが…何なんだ、これは?」
「これ、ボロっちいけど鏡らしいっすよ!オジキが王様だって教えたもんで、持ってきてくれたらしいっす。まあ、そこまでお気に入りじゃないから手放したってのが本音っぽいっすけどね」
鏡…?これが?私の目にはただの錆びた円盤にしか見えないし、王様だと聞いて何故この鏡が必要になるのか全くわからないのだが…とりあえず【鑑定】してみよう。私は押し付けられた王冠の情報を閲覧してみた。
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錆びた国見鏡 品質:劣 レア度:T
王とその側近にのみ使える道具。
国を俯瞰することが出来るが、錆びているため本来の性能を発揮出来ない。
王とは国を治める者。己が国土も知らずして、どうして統治出来ようか。
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国見鏡…王を私とするならば、側近とはクランメンバーに違いない。自国を俯瞰視点から観察し、統治に役立てるためのアイテムであるようだ。
私は興味本位で鏡を起動してみようとする。鏡面についた錆の隙間からぼんやりとした光が溢れ…すぐに光は消えた。錆びているのが原因かと思いきや、私の前に仮想ディスプレイで驚きの表示が現れていた。
「『国家の領域設定が出来ていません』だと?」
ちゃんと動かなかった原因は私が『国家の領域設定』なるものを疎かにしていたことらしい。気になった私はメニュー画面を開くと隅々まで読み、自分のステータスをチェックしていく。すると、取得可能な能力の欄に見覚えのない能力があるではないか。
その名は【国家運営】。能力一覧なんて久しく見ていなかったので、全く気付かなかった。取得に必要なSPは…200だと!?【邪術】の倍のSPが必要になるようだ。
「ただ…取れちゃうんだよなぁ、これが」
新たな能力を取得することはなかったので、SPは余りに余っている。その大半を消費することになるが、取得すること自体は可能だった。
貧乏性なところがある私は躊躇ったものの、自分で思っていたよりも好奇心も強い人物だったらしい。震える指でこの【国家経営】という能力を取得した。
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SPを消費して【国家運営】を取得しました。
使用時はステータス画面より操作して下さい。
称号、『新米国王』を獲得しました。
運営インフォメーションが届いています。
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「これは…!」
「あん?」
「運営から?」
私が【国家運営】の能力を取得した瞬間、色々なことが一気に起きてしまう。まず【国家運営】という能力そのものについて見ていこう。この能力は非常に特殊で、取得時に現れた説明文にある通りステータス画面から操作しなければ能動的には使えないのだ。
【国家運営】を使うと自分の所属する土地や街、建物やそこで暮らしている人々の人数と種類などについて詳細な情報が掲載されているのだ。具体的に言えばかつては『霧泣姫の秘都』と呼ばれていた範囲と水路が私達の所有物であり、ここが国という設定になっていた。
そして国王と国民は自国の領土内で様々な恩恵を与えられる。誤差レベルではあるがステータスが向上し、生産系の能力の効果が増大するようだ。
ただし、恩恵を得るには対価が必要だ。国民となったものたちは、納税の義務と定められた法律を遵守することを求められる。納税はプレイヤー相手でも容赦なく徴収され、手持ちの金銭から天引きされるようだ。わざわざ徴収しに行かなくても良いのはゲームの良いところだろう。
称号の『新米国王』は【国家運営】の能力を得た者達が自動的に得られるらしい。能力を使えば使うほど、そして…能力を維持すればするほど称号の格が上がっていくようだ。
そして運営インフォメーションの内容とは、【国家運営】という能力を得た者が現れたという連絡だった。わざわざ流れるということは、プレイヤーでは私が初めてであるようだ。まあ、仮に条件を満たしていてもSPを200も使うのには勇気がいるだろう。
それから私は【国家運営】という能力について熟読していく。ふむふむ、なるほど。そういうことか。ならば、私が次にやるべきことは唯一つだな。
「…なぁ、兄弟。私は決めた」
「あァ?どうした、藪から棒にィ?」
「急になんっすか、オジキ?」
「私達で国を作るぞ」
「「…はァ?」」
私のなんの脈絡もない建国宣言に、ジゴロウとチンピラは意味不明とでも言いたげな顔でこちらを見ている。アイリス達にも連絡をしなければ。私は二人を放置しつつ、他のメンバーに送るメッセージの文面を考えるのだった。
次回は12月29日に投稿予定です。




