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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第二十一章 いざ、建国へ
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『マキシマ重工』の野望

 プレイヤーを魔導人形(ゴーレム)にする。その光景を想像した私は…思ったよりもワクワクしなかった。何故なら、それは鉱人(メタリカ)が戦術殻を操縦しているのと同じことであるからだ。


 よって私が気になるのは、その技術をミケロが仕えるという一点に集約される。ミケロにしか出来ないことは数あれど、魔導人形(ゴーレム)関連に応用出来そうな技術となると心当たりは…一つだけあるな。


「【魂術】か?」

「ご明察の通りです、イザーム様。実は昨日【魂術】のレベルが70に到達したのですが、その際に『憑魂』という呪文を使えるようになったのです」


 ミケロ曰く、この『憑魂』という呪文は物体に魂を移し替える呪文なのだと言う。最初はミケロ本人が行ったという転生、つまり異なるアバターで最初からやり直すのかと思った。だが、どうやらそうではないようだ。


 転生だとそれまでの肉体は消滅することになるのだが、憑魂では肉体はなくならない。あくまでも『憑く』だけ…乗り移るだけなのだ。それも制限時間付きであり、効果が切れたら元々の肉体に戻ってしまう。さらに元の肉体が大きなダメージを受けたり死亡したりした場合、強制的に効果が切れてしまうようだ。


「『プレイヤーを魔導人形(ゴーレム)にする』ではなく『プレイヤーを魔導人形(ゴーレム)に乗せる』というのが正確なところか」

「そうなります。鉱人(メタリカ)の戦術殻と似ていますね」


 戦術殻に直接乗り込む鉱人(メタリカ)と、魂だけで乗り移る『憑魂』。前者は戦術殻ごと死亡するリスクはあれど、魔力が続く限りいつまでも戦える。後者は魔導人形(ゴーレム)が壊れたとしても問題ないが、制限時間もあるし急所となる本体が無防備になりかねない。それぞれに長所と短所があった。


 ただし、この情報を公開すれば興味を持つ者は少なくないだろう。擬似的な転生を経験出来るし、ちゃんと本体を保護する環境を整えればリスクを減らしつつ探索することも可能びなる。制限時間の兼ね合いから遠出は難しいかもしれないが、それでも使ってみたいと思う者は多いと思う。何せ私自身もやってみたいのだから。


「面白そうだな。被験体になる立候補者を募ってみたらどうだ?きっとすぐに集まるだろう」

「俺もそう思う。だからよ、実験に使うための魔導人形(ゴーレム)を作ろうって話をしてたんだ。まあ、そりゃハリボテでも良いから適当に作るだけだな」


 とりあえず『憑魂』を使うだけの魔導人形(ゴーレム)で良いのならば、凝った作りにする必要もないだろう。マキシマの言う通り、ハリボテのマネキンめいたモノを用意するだけでも十分だ。


 実験を行う時は私が選ばれなかったとしても、是非とも私も立ち会いたいものだ。いや、何があっても押し掛ける。そのくらいのつもりでいよう。


「まあ、素体が出来るまではこの話は後回しだ。それよりも俺達ゃ、アイリスの嬢ちゃんと色々相談してぇんだよ」

「武具と防具の件ですよね。魔導人形(ゴーレム)関連の武具に関してですけど、そちらの規格に合わせることも可能ではあります」


 規格…?ああ、そうか。今日アイリスとマキシマが話し合う内容は、量産する武具の規格についてなのか。基本的にオーダーメイドで武具を生産するアイリスだが、実は量産する武具もある。それは私が作った不死(アンデッド)の軍団の武具なのだ。


 獄獣(ゴクジュウ)との戦いのために量産した不死傀儡(アンデスパペット)を始めとした不死(アンデッド)の兵士は、主に外へ出る住民や街に住むプレイヤーに貸し与えている。手間を掛けて作った配下を遊ばせておくには勿体ないからだ。


 この気軽に借りられる兵士は評判が良く、地道に実は量産している。経験値を積んで進化もするので私としてもありがたい。少しずつだが、不死(アンデッド)の兵団も結構な規模になっていた。


 主に盾として雇われることもあって、時々破壊されてしまうこともある。その際には弁償してもらうが、破壊される時には同時に武具も失うことが多い。そこで不死(アンデッド)の兵士の大きさと、装備させる武具は規格化しているのだ。


 量産品とはいえ、大量の武具を作ることはアイリスの経験値稼ぎにもなる。アイリスとしても望むところとばかりに大量の武具を生産していた。


 こうして私とアイリスの生産したモノを組み合わせて兵団が組織されている訳だが、この武具にマキシマは目を付けたようだ。試作機の魔導人形(ゴーレム)のために新たな装備を用意するのは面倒だ。そこで武具はアイリスに量産してもらおうと考えたのだろう。


 ただ、話の流れから考えて武具の規格が問題になったようだ。我々の規格と『マキシマ重工』の規格に違いがあり、どちらかが合わせる必要が出てきた。今日はそのすり合わせを行うため、アイリスがここまで足を運んだのだろう。


「おお!助かるぜ!」

「ですが、こちらの規格に合わせて下さるのなら今すぐにでも在庫を用意出来ますよ。それに試作品の武器も提供出来ます。どうしますか?」

「試作品!?むむむ…」


 マキシマは自分達に合わせてもらえると聞いてその顔に隠しきれない喜色を浮かべるが、続くアイリスの言葉によって悩むことになる。アイリスは自分の能力(スキル)を鍛えるために武器を量産しているが、同時に彼女自身の趣味として様々な武器を作っていた。


 決して上質ではない素材だったとしても、彼女の作る武具は上質だ。それに最近は以前のイベントの謎キャッチャーで私が入手した変形武器の製作に凝っているらしい。魔導人形(ゴーレム)作りに夢中なマキシマ達だが、アイリスの浪漫溢れる武具には魅力を感じずにはいられないだろう。


 それがわかっているからか、マキシマは悩むように腕を組んでいる。他の社員も同じように悩んでいるようで、全員が難しい顔付きになっていた。


「それにようやく古代の技術を使った兵器の製造にも着手出来るようになったんです。ようやく魔力を使った小型ビーム兵器の試作品が完成して…」

「わかった!そっちに合わせる!」

「え?初耳なんだが…」


 追撃とばかりにアイリスが述べたのは、古代の技術を一部復活させたという驚愕の事実だった。遺跡などから銃器が発見されることは度々あるようで、我らが狙撃手たるシオも弓矢だけでなくライフル銃などを使うこともある。銃を扱うための能力(スキル)職業(ジョブ)もあるそうだ。


 これをアイリスならばいつか再現するとは思っていたが、まさかビーム兵器だって?シラツキの主砲に使われているようなモノを小型化したということか?いや、凄すぎるのでは?


 寝耳に水だったこともあり、私は呆然としてしまう。だが、マキシマは食い気味にアイリスの方針に従うと言った。彼の側からすれば浪漫の権化と言っても良いビーム兵器を使用テストも兼ねるとはいえ格安で提供してもらえるのだ。規格云々でゴネるよりも遥かに利益があると踏んだのだろう。


「ごめんなさい!試作の段階に入れるようになったのが一昨日だったんです。試作品が完成してからお披露目したくて…」


 キラキラと瞳を輝かせるマキシマ達を華麗にスルーしつつ、アイリスは私に謝罪した。確かに驚かされたものの、これは彼女が謝ることではない。むしろ誇るべき偉業と言える。私は首を横に振って、その必要はないと言った。


「それにしても、凄いじゃないか。強力な兵器になりそうか?」

「将来的には、ですかね。問題点は四つ。小型化したと言ってもまだまだ大きいこと、小型化の弊害で威力が著しく落ちること、魔術に比べて魔力の効率が悪いこと、それと魔術に対する防御力が高い相手には効果が薄いことです」


 アイリス曰く、試作段階ということでSF作品で使われるような拳銃サイズなど夢のまた夢、現状では大砲のような大きさが限界だそうだ。魔導人形(ゴーレム)であっても片手で持つには大き過ぎ、両手で抱えるか肩に載せるしかないらしい。私の筋力では持ち上げることすら無理そうだ。


 威力が落ちたことと燃費が悪いことも問題だろう。それは殲滅力と継戦能力が低いことを意味するからだ。これは武器としては明確な欠点と言えるが、アイリスの求める水準を満たしていないだけで十分強力な武器である可能性もある。評価を下すのは完成してからでも遅くはなかろう。


 そしてある意味で最大の欠点は、ビーム兵器が魔術に対する防御によって防ぐことが可能であることだと言う。どうやらビーム兵器とは魔力による攻撃らしく、魔術が効きにくい相手には効果が薄いようだ。


 この問題は威力を上げればある程度解決するのだろうが、そのためには技術的な問題がある。やはり試作を重ねてノウハウを蓄積する必要がありそうだ。


「こちらとしても試作品の性能テストを行ってもらうことになりますし、互いに利益のある取引になると思います」

「おう!普通の魔導人形(ゴーレム)はもう少し小型にするぜ!」

「…普通の?」


 サムズアップしながらアイリスの要求を全面的に飲んだマキシマがサラリと言った言葉が私には引っ掛った。『普通の魔導人形(ゴーレム)』は規格に合わせたサイズにするということは、規格外になる『普通ではない魔導人形(ゴーレム)』を作るつもりなのではないか?


 私の抱く疑問に気付いたのか、マキシマはニヤリと笑う。そして言った。当たり前だろう、と。


「せっかく『憑魂』なんて面白ぇ呪文があるんだ。擬似的に魔導人形(ゴーレム)に乗れるってんなら…作るしかねぇだろ?大型人型兵器って奴をよ!なぁ、お前ら!」

「当然だ!」

「やってやるぜ!」


 どうやらマキシマ達はアニメで出てくるようなロボットを自作するつもりのようだ。そう言われると普通の魔導人形(ゴーレム)よりも巨大な人型ロボットの方が乗りたい気がする。余裕があれば彼らに協力しよう意思を固めるのだった。

 次回は12月5日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 小型化はいつの世もブレイクスルーが無いと達成されませんよね。イザームの符術みたいな事前に仕込んどいて消費される分威力が上がる系統の魔術をマキシマ重工全員で覚えて、ひたすらカートリッジ式…
[一言] ついにビームサーベルとビームナギナタにビームライフルが!
[良い点] 経験値を積んで進化もするので私としてもありがたい。少しずつだが、不死アンデッドの兵団も結構な規模になっていた。 勝手に進化していく兵団はやっぱりヤバいな。 ずんぐりむっくりタイプかガンダ…
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