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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第二十章 古代兵器争奪戦
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いざ、閻魔城へ

「【降霊術】ねぇ…そんな魔術、初めて聞いたわ」

「私の切り札の一つだ。あまり言い触らしてくれるなよ」


 獄吏(ゴクリ)に案内されながら移動している間、私はどこで他の獄吏(ゴクリ)に出会ったのかを質問された。黙っていても良かったのだが、他でもない獄吏(ゴクリ)が「召喚されたらしいであります」と口走ったので黙る意味がなくなったのである。


 これを知ったとしても、習得するのは非常に難しい。そこまで教えるつもりはないし、教えたとしても実行しようとする物好きはいないだろう。


「ところで私も聞きたいことがある。これまで召喚した獄吏(ゴクリ)は一言も発することはなかった。なのに何故レンキは話せるんだ?」

「俺も気になってたんだよなァ。あいつら、ずっとダンマリだったからよォ」


 レンキというのは目の前の獄吏(ゴクリ)の名前である。獄吏(ゴクリ)にはちゃんと個体名があるらしい。そんなレンキにぶつけたのは、初めて彼を見た時から感じていた疑問だった。


 他の獄吏(ゴクリ)と違って彼だけが言葉を話している。これは彼が特別なのか、それとも【降霊術】で召喚したのが原因なのか。それを知りたかったのだ。


「それは仕方がないことなのであります。自分達のような獄吏(ゴクリ)は閻魔様より武器や防具を授かっておりますが、それを装備すると幾つかの制約を受けてしまうのであります」

「その一つが地上で話せなくなることだ、と?」

「肯定であります」


 私の疑問に対する答えがそれだった。どうやら閻魔様なる存在から与えられた装備品の影響で、地獄の外での行動に制限が加わってしまうようなのだ。他にも地獄の外で行動可能な時間にも限界があったり、地獄の外では食事がとれなかったりと制限は多いらしい。


 戦闘能力に枷を嵌めることはないものの、行動を制限されていることに違いはない。彼らの武器にはそれだけの価値があるということなのだろうか?


「なあ、レンキ。お前達の武器や防具は我々でも購入することは可能だろうか?」

「うーん…正直、わからないであります。閻魔様にお尋ねになるのがよろしいかと」


 武器の取引が可能かどうかはレンキでは判断がつかないらしい。ううむ、未知の武具となればアイリスへのお土産になるのだが。


「閻魔様に会わせてもらえるのは嬉しいんだけど、その閻魔城ってどこにあるのかしら?」

「確かに、建物の影すらありません。水平線の向こうにあるのでしょうか」

「こっちにも事情がござんす。あんまり遠出は出来かねるんでござんすがね」

「明日は作戦の日。帰れないと困りますから」


 私が獄吏(ゴクリ)の持つ武具について考えていると、ママ達は別の方向の質問をしている。彼女らの言う通り、周囲は見渡す限りの荒野で人工物などどこにもない。ルリナの予想通りだとしたら、徒歩でかなりの距離を移動する必要があるのだ。


 もしそうならここで別れることも視野に入れるべきだろう。獄吏(ゴクリ)の本拠地も気になるが、それ以上に明日の方が大切なのだから。


「問題ないであります!入り口は目の前でありますので!」

「目の前?」


 そう言ってレンキが指差したのは、地面にポッカリと空いた穴だった。直径は三メートルほどだろうか。穴の底は全く見えず、どこまでも続く闇が広がっている。まさか、この先にあると言うのではないだろうな?


 まさか閻魔城は地下にあるのか?その質問をぶつける前にレンキは「お先に失礼するであります!」と言って穴に飛び込んでしまう。それを止める隙もなく、私たちは見送ることしか出来なかった。


「どうすんだァ?俺達も飛び込むのかァ?」

「えぇ!?奥がどうなってるのか、全くわからないんですよ!?」


 ジゴロウは飛び込みたくてウズウズしているが、サンゴノジョウなどは警戒しているのか消極的だ。個人的には好奇心のままに飛び込みたい。私も何だかんだ言って好奇心は強い方なのである。


 しかし、今のパーティーのリーダーはママだ。彼女の判断に従うべきだろう。私は何も言わず、彼女が決断を下すのを待っていた。


「行くわよ、あんた達!ここまで連れてきてくれたレンキちゃんの面子を潰しちゃダメだからね!」


 言うが早いかママは穴に飛び込んだ。待ってましたと言わんばかりにジゴロウが笑いながら飛び込み、ウロコスキーも後に続く。ウロコスキーに続いてサンゴノジョウも慌てて飛び込み、あっという間にルリナと私だけが残された。


「最初に誰か一人だけ先行させて、安全かどうか確認させれば良いのに…パーティーのリーダー本人が最初に行くなんて…」

「どうやら苦労しているようだな」

「良いリーダーなのは言うまでもないのですが、何分破天荒なお方ですから。それに…貴方はママ以上に破天荒だと聞いていますが?」

「むっ?否定は出来んか…」


 頭を抱えるルリナに同情したのだが、お前はもっと周囲を振り回しているだろうと言われてしまった。仲間の利益と安全、それに自分の楽しみを優先して行動しているつもりなのだが、端からはそう見えるのかもしれない。私は答えに窮してしまった。


 そんな私を見てクスリと笑ってから、ルリナは先に行きますと言って穴に入る。何だかんだで最後になってしまった。穴がどういう構造なのかはわからんが、すぐに入ったら危ない気がする。少しだけ時間を置いてから、私も穴へと身を投じた。


「おおお!こう言うのは何年ぶりだ…!?」


 飛び込んだ穴は言うなれば巨大な滑り台となっていた。凄まじい勢いで下に向かって滑り落ちていく。少し怖いくらいの速度なので減速させようと杖の先端で壁を突いたのだが、余りにも滑らか過ぎて引っ掛かってくれない。どんどん加速しながら、地下深くへと滑って行った。


 一分ほど滑ったところで、ようやく光が、出口が見えて来る。しかし、相変わらず減速する気配すらみせないので、私は何が起きても良いように心構えをしておいた。


「うえっ!?おわああああっ!?」


 出口から飛び出した私だったが、情けない叫び声を上げてしまう。何故なら滑り台の終点、その先は…断崖絶壁だったからである。高速で外に放り出されたかと思えば、今度はその速度のままに下へ落ちていくのだ。平静でいる方が難しいだろう?


 ただし、私には対応する方法がある。私は装備の効果で飛行することが可能なのだから。私は飛行することで速度を減速し、下へとゆっくり降りていった。


「おう、兄弟ィ!優雅なモンだなァ!」

「飛べるのってズルいわねぇ。こっちはずぶ濡れよ」

「ふむ、下は水溜まりになっていたのか。いや、水溜まりだと?」


 断崖絶壁の下は大きな水溜まりになっていた。魔物の影などはなく、何も生息していないらしい。一応落ちながら魔力探知(マジックソナー)なども使ってみたが、やはり何も住んでいなかった。


 しかしながら、そんなことよりも驚くべきはここに普通の水があることだ。地獄はどこに行ってもマグマだらけであり、マグマではない液体も毒沼だったり血の池だったりと普通の水を見たことはない。ここが特別だということだろうか。


「レンキ、この水は何だ?地獄で普通の水を見たのは初めてだぞ」

「ええと…それについて自分は話す権限を持たないのであります。申し訳ないのであります」

「地獄にもまだまだ秘密がある、ということか」


 レンキは心底申し訳なさそうな雰囲気でそう言った。話す権限を持たないということは、知ってはいるのだろう。ただ、それを話すことは禁じられている、と。無理やり話を聞き出そうとすればここで別れるしかないだろうし、話す権限を持つ者から話を聞けば良いだけだ。


 ママもそれ以上は追求する気はないらしい。私達は水溜まりの脇にある洞窟の奥へと進む。その時、ママとルリナは腰に吊るすタイプのランタンを取り出していた。


 おお、夜目が利く魔物プレイヤーだとまず必要のないアイテムだ。私も【光属性脆弱】を克服するため、ログアウトしている時間に点灯させ続けるのにしか使った記憶がないぞ。


 これが人類プレイヤー、特に人間(ヒューマン)の弱味と言っても良い。苦手なことはないが、何かに特化もしていない。装備の種類に制限はないが、身体に武器や防具になる部位はほとんどない。その分、環境に適応するには相応の準備が必要になるのだ。


 その一つが暗闇に適応するためのランタンなのである。しかし、これでも夜目が利く我々のような魔物よりも視界は悪い。魔物プレイヤーよりはマシなのだろうが、人類プレイヤーもそれなりに苦労しているのだと実感した。


 洞窟自体はそこまで長くはなく、出口はすぐに見えてくる。出口の先には大きな空間が広がっており、そこには巨大で堅牢そうな城が聳え立っていた。


 城は城壁に囲まれているのだが、その城壁の前には堀があって魚が跳ねていた。それだけならばリアルの城と変わらないのだが、堀に満たされているのは我々が落ちたような水ではない。地獄に相応しいマグマなのである。


 城を囲む城壁は全て金属製らしく、その上には大砲や機関銃らしきものがズラリと並べられている。ここに攻め入った者は、城壁にすらたどり着く前に壊滅してしまいそうだ。たどり着いたとしても空を飛べなければマグマに阻まれてしまう。まさに鉄壁である。


 そんな城壁は二重になっていて、その奥に建っているのは和風の城である。城は目算で二十メートル近くはあるだろうか。壁は黒く、柱の部分は朱色に塗られている。立派な天守閣には黄金のシャチホコらしき装飾が乗っており、その尾ひれは天井に接しそうになっていた。


「ここが閻魔城であります!歓迎するであります!」


 レンキが誇らしそうに胸を張りながら閻魔城を背に敬礼する。それと同時に城門の跳ね橋が降ろされ、中に入ることが可能となった。我々は目配せし合ってから、レンキと共に閻魔城へと入っていった。

 次回は8月19日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「なあ、レンキ。お前達の武器や防具は我々でも購入することは可能だろうか?」 「うーん…正直、わからないであります。閻魔様にお尋ねになるのがよろしいかと」 アイテム類もそうだが、出来たら良いで…
[一言] 新素材沢山出てきそうだなぁ… そしてそれらの素材でしいたけとかが研究し始めてその副産物で世界がヤバい
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