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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十九章 魔王の侵攻
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対戦会 その一

 対戦会については本当についさっき決まったことなので、参加者を募るところから始まった。どのくらいの人数が腕試しをしたいと思っているのかわからなかったので、対戦会と言えるほどの人数が集まるかどうかすら不安だった。


 しかしながら、私の不安は杞憂に終わる。対戦会をすると言った途端に、続々と出場希望者が現れたからだ。特に戦わせようと思っていた七甲とチンピラは二人とも参加希望らしい。どうやら上手く行きそうだ。


 ただ想像以上に人数が集まったが故に、むしろ誰と誰を戦わせるかのマッチングの方が頭を悩ませることになった。一人ではどうしようもなかったのだろうが、そんな私に手を差し伸べてくれる者達がいた。


「ありがとう。助かるよ、アイリス」

「ふふっ、どういたしまして」


 真っ先に手伝ってくれたのはアイリスだった。彼女は大量に余っている木材を使って名前の札を作ってくれている。それと同時に対戦表もまた作っていた。


 トーナメント戦か総当たり戦にする予定だったものの、人数が多くなったせいで断念せざるを得なくなった。希望者全員が戦えるようにするための措置である。私の想像以上に血の気が多い者達はいたようだ。


 私?当然出場しないよ。運営側として動く必要があるし、何よりも時折半ば強要されるジゴロウや源十郎との模擬戦でお腹一杯である。大体、魔術師が一対一で戦う状況になどほぼない。自衛以上に戦える必要はないはずだ…あの二人は許してくれないのだが。


「ウスバ達もありがとう。むしろお前達は参加者側だと思っていたがな」

「一対一、それもお膳立てされた試合ではあまり気乗りしませんね。やはり戦いは何でもあり、殺るか殺られるかの緊張感がなければ面白くありません」


 アイリスの他に手伝ってくれているのはウスバ達『仮面戦団(ペルソナ)』のメンバーである。ウスバにも言った通り、私は彼らは参加者として戦うと思っていたので意外であった。


 どうやらウスバ達は試合形式、それも一対一というのが好きではないらしい。確かに、これまでの戦いでも基本的には多対多が多かった。一対一という状況は相当に珍しいのだ。


 よく考えれば当然のようにPK達も出場していた闘技大会にいなかった。一人でパーティーを襲撃することを生業とする『仮面戦団(ペルソナ)』のメンバーにとって、一対一の試合形式は物足りないのかもしれない。


「そう言えば闘技大会にも出場していなかったか。ん?その理屈ならジゴロウのようにパーティーの部に一人で出場すれば良かったんじゃないか?」

「…誰もその発想に至らなかったんですよ。まさか個人の部があるのに、一人で出場出来るとは思わないでしょう?」

「ああ、確かに」


 何気ない私の疑問に、ウスバは悔しさを滲ませながらそう答えた。まあ、気持ちはわかる。私もジゴロウがパーティーの部で出場したと知った時は唖然としたものだ。


 ウスバ達は最初から不可能だと思っていたらしい。悔しげな様子から、可能だと知っていれば出場していたのは明白だろう。もしそうなっていたならば、パーティーの部であるのに一騎討ちが発生していたかもしれないのか。少し見てみたかった気がする。


 奇襲とかが出来ないので完全な実戦とは異なるのだが、ウスバ達にとって不利ならば構わないようだ。何ともストイックな連中である。


 そんなこんなで出場しないウスバ達は、出場希望者に配るための木札に数字を書いている。この数字によって何試合目に誰と戦うのかが決まるのだ。


「これで、よし。完成です」

「わかった。そう言うことで、ルビー。頼むぞ」

「任せてよ。それをアイリスに言えば良いんだね?」

「その通りだ」


 対戦表と木札が完成したところで、私は最後の協力者であるルビーに一つ仕事を頼んでいた。対戦会には参加しない彼女はピョンピョンと跳ねながら、参加者達のいる雑踏へと紛れていった。


 私は対戦表の完成と、木札を配ることを通達する。すると参加希望者は列を成して並んだ。ここで大人しく順番待ちで並ぶ辺り、自分勝手が過ぎる者はいないらしい。


「配り終わったな。では、これより数字を読み上げていくぞ」


 木札を配り終えたところで、私はアイリスから渡された箱を掲げた。箱の上には穴が空いており、中にはもう一つ用意していた木札の束が入っている。私が箱の中身を取り出し、そこに書かれていた数字を読み上げるのだ。


 その後、読み上げた数字が書かれた者の名前を対戦表の左から順番に書いていく。対戦相手が誰になるのか、手持ちの数字だけではわからないようにする措置だった。こうすることで、今から発表するまで対戦相手が誰なのかわからないようにしたのである。


 初対面の者が多いということもあって、どの出場者がどんな戦い方をするのか、そしてどんな弱点があるのかわからない。だからこそどの対戦カードも気になるのだが、その中でも特に注目すべき組み合わせが幾つかあった。


「次、十四番!」

「はぁ~い」

「次、二十二番!」

「おう、俺だァ」

「あ、あらまあ…」


 希望者にとって最も戦ってみたい相手であると同時に、最も勝ち目が薄い相手がジゴロウと源十郎の二人であろう。その対戦相手が誰になるのかは、出場者と観戦者の両方にとって注目すべきことだった。


 その内の一人であるジゴロウの対戦相手がちょうど決まった。それは初対面の私に強烈なインパクトを与えた『Amazonas』のママ、アルテミスだ。ジゴロウは楽しめそうだと舌なめずりをしており、ママは困ったように頬に手を当てている。ママがどんな戦い方をするのか興味があるし、個人的にも注目の対戦カード言えるだろう。


「次、五番!」

「おっ、自分でござんすね」

「次、三十四番!」

「ハイハイハーイ!」


 次に注目すべき対戦カードはウロコスキーとタマの組み合わせだ。クランのリーダー同士による直接対決は他にない。ある意味、クラン同士のプライドを懸けた戦いになりそうだ。


 実際、二人ともかなりヤル気になっている。獣と爬虫類、今のところどちらが強いのか。その格付けが今日、決まってしまうのだ。


「次、一番!」

「俺だ」

「次、十九番!」

「うむ」

「マジかよ…」

「ドンマイ、お兄ちゃん」

「骨は拾ってあげる」

「もう敗けたことにすんじゃねぇ!まだわかんねぇだろうが!」


 ジゴロウと対になる強者として有名な源十郎の相手はマックに決まった。サーラとポップは可愛そうなものを見る目で彼を見ている。マックは怒鳴っているものの、『俺が勝つ』ではなく『まだわからない』と後ろ向きなことを言っていた。正直、勝てないだろうと自覚しているようだ。


 ただ、源十郎は対戦そのものを楽しみにしているらしい。ジゴロウもマックは筋が良いと言っていたし、有望な若者に稽古をつけてやるつもりでいるのかもしれない。頑張れ、マック!


「最後に残ったのは…」

「ワイやな」

「俺っすよ」

「「あぁん!?」」


 そして最後に残っていたのは七甲とチンピラの二人であった。無論、これは偶然ではない。我々が仕込んだ結果である。


 ルビーに頼んだ仕事とは二人の木札に書かれた数字を盗み見て、それをアイリスに伝えることだった。数字を聞いたアイリスは、抽選する箱の中からその数字が書かれた木札を除いて私に渡している。そうすることで、他の参加者には何の迷惑もかけずに二人を確実に対戦させられるようにしたのだ。


 落ち着いているかと思ったが、二人ともまだ熱くなったままであるらしい。私がまだ言っていない番号を口にしようとした時、その前に二人は自己申告してくれた。その気遣いはありがたいのだが…自己申告のタイミングが被っただけでにらみ合いを始めていた。


「ここで当たったのは、きっと唐揚げの神さんが白黒つけろっちゅうとるんやな」

「へっ、そうかもな。キッチリ俺が勝って、唐揚げにレモン汁なんてのは軟弱者の発想だってことを証明してやんよ」

「そんなけったいなことを言えるんも今のうちやぞ。唐揚げにレモン汁こそ至高やっちゅうことを、その中身が足りん頭に叩き込んだるわ」

「「ふん!」」


 二人はそんなことを言ってから背中を向けて離れていった。あの、二人とも?信念を持って何か言ってる風だが、内容は下らないんだぞ?そこら辺をわかっているのか?


 私は頭を抱えながら対戦会のルールを発表することにした。このルールは『仮面戦団(ペルソナ)』のメンバーが一緒に考えてくれたものである。あくまでも対戦会であって、賞品などがない上に参加人数も多い。しかも一度に複数の試合を行える訳でもない。そこを踏まえた上で定められたルールだった。


「ルールを説明するぞ。先に体力が半分を切った者を敗北とする。武技と魔術は自由だが、奥義と秘術、それに回復アイテムは禁止。また、試合の時間は最大で一分とする」


 用意されたルールは四つある。死亡するまでやるとリスポーンしてしまうせいでここから強制的に退去させられてしまうからだ。敗北した上に対戦会から追放されるのはあまりに可哀想だろう。


 奥義と秘術を禁ずるのは、死亡させないことと関連している。と言うのも、奥義や秘術には威力が高すぎて即死させかねないものがあるからだ。限定的な状況でなければ使えない場合が多いものの、死亡させるリスクを抑える処置であった。


 回復アイテムの禁止は体力の残量で勝敗を決める関係上、体力の回復を許可するとグダグダになりかねない。下手をすれば引き分けが量産されるのではないか?それを考慮した形だった。


 そして最後の試合時間の制限であるが、これは試合数が多いので、一試合で長い時間をかけると終わるのが明日になってしまうからだ。あくまでもリアルを優先するスタンスは決して変えるつもりはなかった。


 こうしてルールも決まったところで、対戦会を始めることになった。さて、出場者達はどんな戦いを繰り広げるのだろうか?私は観戦するのを楽しみにしながら移動するのだった。

 次回は6月28日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 超短期戦ですね。これだとテクニック系の戦闘スタイルのプレイヤーより、シンプルなパワー系の方が有利かも。
[気になる点] 〉真っ先に手伝ってくれたのはアイリスだった。彼女は大量に余っている木材を使って名前の札を作ってくれている。それと同時に対戦表もまた作っていた。 なのにこの後、ルビーがアイリスに伝言に…
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