進化と転職(リン編二回目)
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種族レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
職業レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
【魔法陣】レベルが上昇しました。
【邪術】レベルが上昇しました。
新たに死界の呪文を習得しました。
【暗殺術】レベルが上昇しました。
【指揮】レベルが上昇しました。
従魔カルナグトゥールの種族レベルが上昇しました。
従魔カルナグトゥールの職業レベルが上昇しました。
従魔ヒュリンギアの種族レベルが上昇しました。
従魔ヒュリンギアの職業レベルが上昇しました。
従魔ヒュリンギアの種族レベルが規定値に達しました。進化が可能です。
従魔ヒュリンギアの主人、イザームが進化の操作を行って下さい。
従魔ヒュリンギアの職業レベルが規定値に達しました。転職が可能です。
従魔ヒュリンギアの主人、イザームが転職の操作を行って下さい。
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空を飛んでティンブリカ大陸へと帰還している最中の我々だが、あまり速度を出していなかった。その理由はもちろん、マック達が甲板にいるからである。彼らがいるのに全速力を出したなら、場合によっては海へと落下してしまう者が出かねないのだ。
「お疲れ様でした、イザーム」
「イッザーム!プリーズ!ギブミー!アイテーム!」
「はは、開口一番にそれか」
シラツキの艦橋に入った私に声をかけたのは、アイリスとしいたけだった。補佐としてトワもいるのだが、彼女は静かに頭を垂れるだけだった。
ただし、アイリスが私を労ってくれたのに対し、しいたけは即座にアイテムを要求してくる。言われなくても渡すから待っていなさい!
私は苦笑しつつも、二人が求めていたアイテムをそれぞれに渡した。アイリスは興味深そうに、しいたけは艦橋の床を転がり回って喜んでいる。おい、しいたけ。あまり暴れるんじゃない!お前は以前とは違って妙に大きくなっているのだから!
思った通り、しいたけは頭を計器にぶつけて踞っている。痛みなどないにしろ、視界は大きくブレたはずだ。運動が尋常ではなく苦手な彼女が動きを止めるにはそれだけでも十分なのだろう。
「あの乱戦の中で見付けられたのは流石です!」
「運が良かっただけだよ。さて…シラツキ。今の速度だと帰還するのにどれくらい時間が掛かりそうだ?」
『約四時間デス』
「ありがとう。帰還したらログアウトするくらいの時間になるかな」
ゲーム内の四時間は、現実では一時間である。今の時間から考えて、ちょうど普段からログアウトしている時間くらいになるだろう。なら、今の内にリンの進化と転職を行うとしようじゃないか。
「二人とも、ここは頼んだ。私は甲板に出てくる」
「皆さんと交流するんですね?」
「それだけではないよ。ちょうどリンのレベルが上がったから、進化と転職をしようと思ってね」
「それはおめでとうございます!こっちからもモニターしておきますね!録画もしておきます!」
「お、おお。好きにしてくれ」
捲し立てるアイリスに圧倒され、私はただ頷くことしか出来なかった。と言うか、シラツキって録画も出来るのか。モニターに様々な映像を映せることは知っていたが、録画まで可能だとは知らなかった。
やはり普段から接しているアイリスとしいたけの方がこの浮遊戦艦シラツキの機能を把握しているようだ。一応、シラツキの持ち主は私なのだが…情けない限りである。
喜んでいるアイリスと踞るしいたけのいる艦橋から退出した私は、戦友達のいる甲板へと出た。そこにはティンブリカ大陸に運んでいる戦友達だけでなく、我がクランのメンバーも全員が集まっている。それは彼らとの交流をより深めるためだった。
彼らは共に戦った戦友ではあれど、またお互いのことをあまり知らないのも事実。これから同じ街で暮らす以上、お互いのことを少しでも知っておいた方が良いだろう。
「おう!兄弟も来たのかァ…っと、悪ィなァ!」
「うわあああっ!?」
「またアニキの一人勝ちかよぉ!」
「降りておいて正解でござんしたねぇ」
甲板に現れた私へ真っ先に声をかけたのはジゴロウだった。どうやらマックとチンピラ、それにウロコスキーの三人と共にポーカーを行っていたらしい。交流ってそう言うことなのか?
そしてジゴロウは運が良いのか、連続で勝っているようだった。マックとチンピラはボコボコにされているのか悲鳴を上げている一方、ウロコスキーは上手く躱しているようだ。何となくだが、最終的にウロコスキーだけは損をせずに終わりそうな気がした。
「お前も入るかァ?」
「いや、止めておく。毟られそうだし…もっと大切なことがあるからな」
「大切なこと?」
「ああ。今日の戦いでリンが進化出来るようになったんだ」
「そいつぁ目出度い話でござんすね。近くで見せてもらってもよろしいでござんすか?」
「リンが嫌がらないように配慮はしてくれよ」
龍に憧れて蛇系の魔物を選んだウロコスキーにとって、リンの進化は興味を抱かずにはいられないのだろう。彼の気持ちは理解出来るし、そもそも隠すつもりなら教えていない。嫌がらないようにするならば全く問題はなかった。
嬉しそうに尻尾の先で甲板を叩くウロコスキーを尻目に、私は別の仲間達の様子を窺う。全体的に和気藹々としており、交流は上手く行っているようだ。特に各クランの女性陣が集まっている場所は大いに盛り上がっていた。
「わぁ!これオシャレですね!」
「でしょ?ウチの街って結構良い感じの装飾品が手に入るのよね」
「それに、アイリスが作ってくれるアイテムもセンスが良いわねぇ」
「そうなんですか。私達にも作ってくれますかね?」
「順番待ちは守ってもらうよ!何たってウチのナンバーワン職人なんだから!」
「ナンバーワンって、じゃあ二番目は誰よ?」
「そりゃしいたけでしょ」
「しいたけとアイリスだと方向性が全然違うじゃない」
「うふふ、そうねぇ」
うむ、あの間に割り込む勇気は私にはない。別のことろに目を向けよう。男達は小さなグループを作っているのだが、その中でも特に大きなグループとなっているのは源十郎を囲んでいる者達だった。
彼らはどうやら源十郎から戦いについてのアドバイスを受けているらしい。甲板の広さは限られているので模擬戦こそ行っていないが、可能ならばすぐにでもやりたい雰囲気であった。
「ふむ…帰ったら修練場のような場所を作った方が良いか。いや、それならばいっそのこと…」
「グオォン?」
「クルルゥ?」
「おお、すまんな。考え事をしていたよ」
私が独り言を呟いていると、いつの間にか近付いていたカルとリンが不思議そうな鳴き声を出しながら鼻先を寄せて来た。私は謝りながら二頭の頭を撫でて落ち着かせた。
それにしても、こちらから探そうとしていたリンが自分から来てくれたのは好都合だ。早速、進化させるとしようか。
「リン、今から君を進化させる。そのために先ずは君の意思を問うぞ」
「クルルッ」
「能力のことだが、進化させるか新しく増やすか。どちらが良い?」
「クルゥ」
「進化させる方が良いのだな?」
「クルッ!」
カルやリンとのやり取りも手慣れたものだ。リンもまた、カルと同じく能力の進化を選ぶらしい。やれることを増やすのも悪い選択肢ではないのだが、特化させた方が自分の役割を全う出来るのも確かである。リンはそこがわかっているのだろう。賢い子だ。
さて、ではどの能力が進化の対象なのかを見てみよう。対象なのは【知力強化】、【精神強化】、【水魔術】、そして【光魔術】の四種類であった。
確かカルも二回目の進化の時は四種類の能力が進化の対象だった気がする。ただし、カルとは随分と毛色が異なっていた。ガンガン前に出るカルと後方から支援するリンの個性の違いが出た形である。
「【知力強化】、【精神強化】、【水魔術】、【光魔術】。この内のどれが良い?」
「クルッ!クルルッ!」
「ええと、【水魔術】と【光魔術】か?」
「クルルゥ!」
「わかった。では、進化しようか…皆、少し離れてくれ」
私はリンが進化した後のことを考えて周囲の者達に少しスペースを作ってもらうように頼んでおく。彼らは事情を把握していないので不思議そうな顔付きだったが、何も言わずに退いてくれた。
ただ、ウロコスキーなど私の会話を聞いていた者達はむしろ興味津々と言いたげな視線をこちらに送っている。ご期待に添えるかはわからないが、リンが進化するその瞬間をその目に焼き付けるが良い!
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従魔、ヒュリンギアの【水魔術】が【水氷魔術】に進化しました。
従魔、ヒュリンギアの【光魔術】が【神聖魔術】に進化しました。
従魔、ヒュリンギアが進化を開始します。
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「クルル…クオオオオオッ!」
「「「おおお!?」」」
リンは翼を大きく広げながら、空に向かって力強く咆哮する。カルのように腹の底を震わせる重低音ではないので威圧感はないものの、彼女の美しい鳴き声は甲板全体に響き渡った。
それと同時にリンの身体は光に包まれた。カラカラと言う音を立てて鱗が剥がれ落ち、甲板の上に転がっていく。そして光が消えた時、彼女は二度目の進化を終えていた。
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従魔、ヒュリンギアが劣白銀龍に進化しました。
従魔、ヒュリンギアが劣白銀龍に転職しました。
転職に伴い、ヒュリンギアが【治癒のオーラ】を獲得しました。
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リンは劣白銀龍に進化したらしい。カルのような唯一の個体ではないようだが、そんなことはどうでも良い。重要なのは進化によってより強く、そしてより美しくなったことだ。
首や胴体はあまり変わっておらず、代わりに翼はかなり大きくなっている。鱗は以前にも増して輝いており、白銀の名に相応しかった。
特筆すべきは尻尾であろう。長さは倍以上になっていて、色も相まって金属の鞭のようだ。カルのように刃にはなっていないものの、近付こうとする敵への牽制に使えそうだ。
また、増えた能力である【治癒のオーラ】はとても汎用性があるだろう。彼女の近くにいるだけで味方を回復させることが出来るのだから。ただし、一応主人であるはずの私は傷付いてしまうのが悲しいところである。
「すげぇ…これが龍の進化か」
「綺麗…!」
甲板にいる誰もがリンの美しさに見とれている。それを見て私は誇らしい気持ちになるのだった。
次回は5月19日に投稿予定です。




