侵攻準備 集合地点へ
今回から新章です。
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【知力超強化】レベルが上昇しました。
【精神超強化】レベルが上昇しました。
【体力回復速度上昇】レベルが上昇しました。
【魔力回復速度上昇】レベルが上昇しました。
【魔力精密制御】レベルが上昇しました。
【錬金術】レベルが上昇しました。
【鑑定】レベルが上昇しました。
【指揮】レベルが上昇しました。
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遂にこの時が来た。源十郎から帰還するとの連絡を受けた直後、コンラートから『総攻撃を仕掛ける日時がわかったよ( ̄▽ ̄)ゞ』との連絡があった。その日時はリアルタイムで二日後の夜となっていた。
今日は休日であるので、きっと官軍に参加しているプレイヤーがこの日にして欲しいと願ったのだろう。そのお陰で我々もちょうど良いタイミングで仕掛けられるというものだ。
ただし、休日だからこそ都合をつけるのが難しい者もいる。我々が勧誘したクランであれば『モノマネ一座』が該当していた。彼らはリアルでも大道芸の一座という話なので、今日のような休日は稼ぎ時なのだ。
しかしながら、彼らは元から戦力として参加してもらう予定ではない。むしろ、彼らの仕事は既に終わっているのだ。きっと今頃は客の前で公演を行っていることだろう…今度、リアルで観に行こうかな?
「イザーム、もうすぐ到着しますよ」
「ああ、わかった」
私達は今、シラツキに乗って高高度を飛行していた。集合の場所は既に決めており、そこへ向かっている最中なのだ。
生産職であるアイリスとしいたけは上空で万が一に備えて待機することにしている。二人は街で略奪して入手したいモノがあるのだが、安全面を考慮して降りないことにした。
代わりに私達がそのアイテムを探すことにしている。ちゃんとメモしているので、忘れることは絶対にないだろう。ジゴロウや源十郎が大暴れすれば、否が応でもそちらに戦力が集中するはず。その間に掠め取らせてもらおうか。
「予定の時間よりも結構早く着きそうだねぇ」
「提案者が遅刻するのは言語道断だからな。むしろ誰よりも早く到着しているくらいの方が良い」
集合予定の時刻よりもゲーム内の時間で二時間ほど早く到着するように出発している。言い出しっぺである私が遅刻するのは示しがつかないからだ。
そうこうしている内に集合場所の真上にまでたどり着いた。私は艦内放送で到着したことを伝え、艦橋から甲板に出る。一分も経たない内に待機する二人以外のシラツキに乗っていた全員が集まった。
「いよいよだなァ、オイ。強い奴が残ってくれてりゃァいいんだがよォ」
「楽しみですな、上様!」
うむ、全員の士気はかなり高いようだ。かく言う私も久々に悪役っぽいことが出来ることに高揚しているのは自覚している。舞い上がって自滅することだけはしないようにせねば。
ちなみに、源十郎とルビーはここにいない。二人は陸上ルートでここまで来られない者達と共に、アン達の船に乗ってこちらまで来る手はずになっているのだ。勧誘した者達にとってもアン達にとっても、お互いに知っている者達がいれば気まずくならないだろう?
対象者は『溶岩遊泳部』の一行である。リーダーのトロロンは源十郎の頼みという時点で今回の戦いに参加を表明するほどの大ファンであるらしい。彼に行ってもらえばきっと士気も高まるだろうと思っての人選だった。
全員がいることを確認してから、我々は降下を開始する。アイリスとしいたけがおらず、加えて羅雅亜が空を駆けることが可能になったお陰でカルとリンの力を借りれば一度に全員が降下可能になった。やはり機動力は正義だな。
我々が集合場所としていたのは、標的であるフォティンの街に近い小さな入り江である。フォティンとはあまり難易度が低い草原のフィールドと森のフィールドを挟んだ場所にあり、実は賊軍に与している悪党のアジトがあった場所だった。
コンラート曰く、ここは最も早い段階で官軍によって制圧された場所の一つだとか。しかも官軍のお膝元ということで再びここをアジトとして使う者達が現れる訳がなかった。だからこそ、その裏をかいてここを集合場所として利用することにしたのだ。
「うひゃ~!荒れとんなぁ~!」
集合場所に降り立った七甲の一言が、この入り江の現状を簡潔に言い表していた。幾棟かあった木の小屋は無惨に焼け落ち、普段使いされていたであろうテーブルや椅子は破壊されて打ち捨てられている。ここで激しい戦いがあったことを如実に物語っていた。
これを再び使える状態にしようと思えば、使えるモノなどほとんどないのでいっそのこと残骸を全て片付けねばならないだろう。おっと、いかん。ここしばらく建築作業が続いたからか、自分ならどんな工程で撤去作業を行うかを考えてしまっていた。
「プレイヤーが散々暴れた挙げ句、失火で燃えたらしいからな。襲撃したプレイヤーの何人かは巻き込まれて死に戻りしたらしいぞ」
「間抜けっすね。ちゃんと段取りとか決めてなかったんすか?」
「コンラート話だと、偶発的にこの場所を発見したプレイヤーのパーティーがいたらしい。そいつらはフォティンで急遽募った他のパーティーと共にここを攻め…手柄の取り合いになったそうだ」
「何それ?お粗末な話ね」
兎路は事の顛末を聞いて心底馬鹿にしたように鼻で嗤った。彼女はそう言うが、これから我々も初めて顔を合わせる者達と街を襲撃するんだぞ?彼らと同じようなことにならないとは限らない。今言った一言がブーメランにならないように気を付けねばならないだろう。
さて、この入り江がボロボロになった経緯はどうでも良い。今は他のクランがここに来るのを待つと…うおっ!?
「ありゃっ!?絶対一番乗りだと思ったのに!」
「…チッ」
私が背もたれの折れた椅子に私が座ったと同時に、集合場所の脇の森から一頭の翼の生えた虎が飛び出して来た。あれが誰なのか、私は既に聞いている。『ザ☆動物王国』のタマであった。
彼の後ろに続く形で、次々と獣系の魔物達が姿を表した。黒いオーラを纏った狼、セイよりも小柄で手足と尻尾が長い猿、鋼のような光沢の体毛を持つ熊、何故か二足歩行で前足にメリケンサックをはめたマッチョな兎など個性豊かな面々が揃っている。珍獣の博覧会のような状態であった。
初めて見る魔物ばかりなので、既に彼らと接触している者達以外の全員が興味深そうに彼らをしげしげと眺めている。それは向こうも同じことだったらしく、彼らもまた我々をじっくりと観察していた。
ただし、ジゴロウだけは露骨に嫌そうな表情で小さく舌打ちしていた。最悪のファーストコンタクトだったせいか、ジゴロウはタマのことが苦手であるらしい。なるべくタマとジゴロウは離れた位置で暴れてもらいたいものだ。
「『ザ☆動物王国』の方々で良いのかな?」
「そうそう!確かイザームだっけ?タマだよ!よろしく!」
タマはその場で座りながら、招き猫のように片方の前足を挙げて挨拶をした。獰猛そうな虎であるはずなのに、コミカルな動きのお陰でとても愛嬌がある。小さいサイズの招き猫を作れば売れるのではないだろうか?
私が下らない妄想をしていると、タマはチラチラと別の方向を見ているようだ。視線の先にいたのはうつ伏せになって大欠伸をしてるカルと、急に現れた『ザ☆動物王国』のメンバーを警戒しているリンだった。
「ねぇねぇ!あれって龍だよね!?」
「ああ。二頭とも私の従魔だ」
「龍って初めて見たよ!ちょっと遊んでもいい?良いよね!?」
タマはヌッと顔を近付けて尋ねて来る。いや、虎が迫ってくるのは凄い圧を感じる。普通に怖いのだが…即答するわけにはいかなかった。カルもリンも良い子なのだが、接し方を誤るととんでもないことになりかねないからだ。
「厳つくて黒い方のカルはおおらかだが、白銀の方のリンは女の子で警戒心が強い。無理に近付くと…」
「平気だって!じゃっ!」
「あっ!?おい!」
私の言うこと聞かずにタマはカル達に向かって突撃していく。リンは慌てて飛び退くが、タマは翼を持つ窮奇である。彼は追い掛けるようにして飛んでしまった。
「ゴアアアアアアアッ!!!」
「うえぇっ!?ぎゃあああああっ!?」
その瞬間、それまで眠そうにしていたカルが怒りの咆哮と共にタマへと飛び掛かったのだ。普段はとても大人しい上におおらかだが、それは決して他者を警戒していない訳ではない。身内だと認識している者達危険が迫ると容赦なく襲い掛かるのだ。
その強さは龍という強力な種族故に成熟しきっておらずとも我々と遜色ない力を持ち、しかもジゴロウや源十郎に鍛えられているのでその力を十二分に発揮出来る。正直、並みのプレイヤーでは全く歯が立たない強さであった。
魔物だらけの森で戦ってきたタマは決して並みのプレイヤーではないのだろうが、まさか襲われるとは思っていなかったらしい。反応が遅れてカルにのし掛かられ、その喉笛を思い切り噛まれてしまった。
「止めろ、カル!落ち着け!口を離すんだ!」
「ゴルルルルル…」
「ひっ、酷い目にあった…!」
カルとしてはそのまま噛み砕くつもりだったのだろうが、私は急いで止めた。私に止められたことでカルは不服そうに唸りながら口を放す。タマは声を震わせながら何か言っているが、これに関しては完全にお前が悪いだろ。
ただ、これから共に戦う相手を攻撃した事実は変わらない。釈明するべく『ザ☆動物王国』のメンバーの方を振り向くと、彼らは一様に呆れていた。いい薬だとか、これで懲りれば良いのにとか呟いている。おおう…君達も苦労しているようだな。
「何かスゲェ声がしたけど、何事だよ?」
「ヒャッハァ!マジで龍がいるぜ!」
そんなとき、入り江にやって来たのは『不死野郎』と『怒鬼ヶ夢涅夢涅』の一行だった。続々と集まってきたようだ。この調子で時間までに全員が集まれば良いのだが。
次回は3月16日に投降予定です。




