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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十八章 建設ラッシュ
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隠れて勧誘 その四

 ジゴロウが困惑して固まっている頃、源十郎達は山を登っていた。その旅路はジゴロウ達とは別の意味で大変なものであった。


「うひっ!」

「また盛大に噴火したのぅ」


 彼らが訪れたのは『赫怒の火山島』。ルクスレシア大陸の南方に浮かぶ小さな火山島だった。島の大きさはかなり小さく、アン達が従魔としている回遊島海獣(アスピドケロン)よりも小さいだろう。


 しかし、その環境は非常に過酷である。島の中心には島の名前にもなっている火山があるのだが、そこは頻繁に噴火を繰り返しているのだ。ほぼ常に火山灰が降り注いでおり、その中に時折火山弾が混ざっているので油断していると大ダメージを負うことがあった。


「それにしても、酷い臭いっすね。硫黄臭いって言うんすか?」

「火山だからねぇ」

「臭いし、火山はうるさいし、上から色々降ってくるし…誰も寄り付かないのもわかるよ」

「しかも採掘ポイントでとれるアイテムはもっと大きな『フラーマ火山島』に行けばあるって言うね」


 これでフィールドに旨味があれば通う者もいるのだが、それも非常に薄かった。確かに稀少な金属は採掘可能なのだが、ここで得られる金属はここよりも数十倍の大きさがある『フラーマ火山島』に行けば容易に得られるのだ。


 しかも『フラーマ火山島』は『島』と呼称されているものの、他の大陸と遜色ない広さを誇る。さらに住民(NPC)山人(ドワーフ)の王国があり、そちらは設備が充実した街があった。


 常に上に注意しておかねばならない無人島と、大きな街のある大陸の一つ。普通のプレイヤーがどちらを選ぶのかは火を見るより明らかだった。


「しかし、こんな立地でなければ魔物プレイヤーは安息の地を得られんということか」

「ボク達も最初は穴蔵で、その次は下水道だったからねぇ…」

「そっちも中々過酷だね。こっちの拠点も何もない場所だけど」


 魔物プレイヤーの現状を嘆きつつも、一行は火山を上へと登っていく。その途中に何度も火山は噴火し、火山灰や火山弾が降り注いだ。ただ、そんな環境だからか山肌に魔物は存在せず、注意を払うべきは上だけなので意外と登山は楽とまで言えた。


 山頂は山肌と同じく草木がほとんど生えておらず、火口が近いからか熱による火属性のダメージを受けてしまうほどだった。そのことについては事前に説明をされていたので、一行はしいたけが作っていた耐火ポーションによってダメージを軽減した。


「ここからは降りるんだよね?」

「そうだよ。火口から降りて、その横穴の奥が目的地さ!」

「あっ、下降中に噴火されると即死しちゃうのでタイミングはちゃんと考えましょう」


 ポップコーンはさらりと言ったが、定期的に噴火する火口の中へ飛び込むのは非常に危険な行為である。噴火のタイミングで突っ込めば、熱と火山弾によって焼け死ぬのは明らかだ。


 源十郎達は頷いてから次の噴火を待つ。しばらくすると轟音と共に火山は噴火し、火口から真っ黒な噴煙と無数の火山弾を噴射した。一行は近くにあった大岩の陰に隠れながら、鼓膜が割れそうなほどの音に耐える。それが収まってから、火口を目指して駆け出した。


「しっかり着いてきてよ!落ちたら即リスポーンだからね!」

「はいっす!」

「頼むよ、お祖父ちゃん!」

「うむ」


 走る勢いのまま、彼らは火口へと飛び込んだ。火口の底では溶岩がグツグツと煮えたぎっており、落ちれば骨の一片も残さずに燃え尽きてしまうだろう。


 ただし、今いる者達にしてみれば全く問題はなかった。シオとポップコーンは最初から飛行が可能であるし、サーラ28は装備の効果で浮遊している。源十郎は飛行がお世辞にも得意とは言えないが、翅を使って空中で落ちる軌道を変える程度なら造作もなかった。


 唯一飛行能力を持たないルビーだが、彼女はその小ささ故に源十郎の肩に乗るだけでその問題を解決している。こうして安全に火口を降りていく一行だったが、溶岩から昇ってくる熱気は耐火ポーションを使っていてもジワジワとダメージを与えていた。


「一秒でも早く横穴に入りたいっすねぇ」

「こっちだよ!なるべく急いで!」


 シオがぼやいていると、サーラ28が火口の内側の一点を指差した。そこには大きな亀裂があり、源十郎達はそこが目指すべき横穴の入り口なのだと覚った。


 亀裂は縦には長いものの、あまり幅はないので全員で突っ込むと詰まってしまうだろう。一行は焦らず、順番に亀裂へと身体を滑らせて奥へと入っていった。


「ふう、ギリギリじゃったのぅ」

「お祖父ちゃんは結構大きいからね」

「意外と涼しいんすね?それに暗いっす」

「でしょ?私たちも初めて来た時は驚いたよ」


 狭い亀裂の先は横穴になっていて、そこは火口に近いというのに気温は常温よりも少し低いほどである。火口と同じくらいの熱気にさらされることを覚悟していた分、彼らの驚きは大きなものとなっていた。


 横穴の入り口付近は溶岩の明かりが差し込んでいるからか、赤い光に照らされて想像以上に明るい。しかし横穴の先には流石に届かないようで、その先は真っ暗であった。


「ほう?採掘ポイントがちらほらとあるのぅ」

「地上よりも横穴の方が採掘ポイントが多いらしいですよ。取れる鉱石の質もこっちの方が上だそうです」

「危険を犯して入った場所の方が良いモノが取れる、っていうのはゲームのお約束っすよね」


 横穴は高純度の鉱石が含まれた鉱床にあるからか、光がほとんど入ってこない割にはキラキラと輝いていた。移動の邪魔にならない程度に採掘を繰り返しながら、一行は幾つも分かれ道がある横穴を進んでいった。


 分かれ道のせいで構造が複雑な横穴は結構な傾斜で下っており、一行は時間をかけて進んでいく。山頂まで登った時の倍以上の時間が経った頃、少しだけ広い空間に出た。そこには深い穴があり、底が見えないほどに深かった。


「ここは…?」

「えっと、ここを底まで降ります」

「またダイブっすか。凄いところにいるんすね」

「文句を言ってもたどり着かないよ、しーちゃん。ここまで来たら行くしかないって!お祖父ちゃん、ゴー!」

「ほいほい」


 底が見えない穴であっても、この先に行かなければ目的のプレイヤーに会うことはかなわない。ならば前に進むしか彼らに選択肢はなかった。


 ルビーに言われるがまま、源十郎は穴へと飛び込んだ。それに続いてシオも穴にその身を踊らせる。さっさと飛び込んでしまった三人を慌ててポップコーン達が追い掛けた。


「ほっ」

「到着!」

「よっと!結構深かったっすね」


 一分以上も自由落下し続け、一行は穴の底に着地した。空中で翅を開いて減速した源十郎はフワリと地面に足を着け、その肩に乗っていたルビーは途中で地面へと飛び降りている。シオは翼を畳んでギリギリまで加速してから、地面に激突する寸前で翼を開いて飛燕の如く方向転換をしてみせた。


 穴の底にはさらに二つの横穴があった。片方は真っ暗で、もう片方は溶岩特有の真っ赤な光によって照らされている。前者はさらに下へと続いており、後者は傾きがほとんどなかった。


「ここまで来たらもう目の前だよ!こっちこっち!」

「おお、ようやくか」

「明るい方で良かったよ」


 続いて降りてきた二人が指差したのは、赤い光が差し込んでくる方だった。もっと地下へと下ることを覚悟していた彼らは目的地が見えてきたことに安堵していた。


 明るい方の横穴を進んだ先にあったのは、溶岩の大河が流れる巨大にして長大な地下空間だった。フィールド名も『星を巡る焦熱河』となっている。大量の溶岩が流れる光景を見た三人は、まるで地獄のようだと思っていた。


「どうよ?凄いっしょ…って、あんまり驚いてないね?」

「いや、驚いてない訳じゃないよ?ただ…」

「似たような場所を知っておるだけじゃ」

「ちぇっ、ビックリさせられるって思ったのに!」


 三人の反応が期待していたよりも薄かったことに拗ねるサーラ28を見て、他の四人は苦笑してしまう。その笑い声に反応したのか、溶岩の大河からゴボゴボと気泡が上がり始めた。


 魔物が来たのだろうと五人はどんな魔物が現れても対応出来るように身構える。そこから現れたのは、一匹の巨大な蜥蜴であった。体長一メートルほどで身体中に溶岩を纏ったその蜥蜴だが、現れた時点ですでに傷だらけである。何かと戦っていたようだ。


「逃がすな!倒せ!」

「「「おおおおおっ!」」」


 蜥蜴を追い掛けるように溶岩の大河から現れたのは、四つの人型の溶岩の塊であった。彼らは石製だと思われる様々な武器で蜥蜴に襲い掛かり、全員で袋叩きにしていた。


 武器の質はあまり良いとは言えないようだが、数の暴力は偉大である。蜥蜴は抵抗虚しく討ち取られ、人型の溶岩達は勝利の雄叫びを上げていた。


「ひょっとして、この人達が目的の魔物プレイヤーなの?」

「その通り。あの人達が次に紹介しようと思っていたクランの『溶岩遊泳部』の人達だよ」


 ルビーの予想通り、人型の溶岩はプレイヤーであった。彼らは倒した蜥蜴を剥ぎ取ったところで源十郎達の存在に気付いたらしい。全員で少しだけ何か話し合った後、五人のもとへと近付いて来た。


 四人の先頭に立っているのは、一回り背が高い女性らしい体型の個体だった。ロングヘアーのようにみえる溶岩の髪を持つ彼女は手を振っている。その動きによって溶岩がボタボタと撒き散らされ、危うく翼に引火しそうになったシオは慌てて高度を上げていた。


「おおっ!ポップにサーラ!それに…おお、本物の源十郎様!」

「さ、様…?」

「はーい、離れて下さーい。えっと、こちらはトロロンさん。『溶岩遊泳部』のリーダーで、源十郎さんのファンです」


 ポップコーンに紹介されたトロロンという女性は、自己紹介もせずに源十郎に詰め寄ってくる。トロロンは憧れの存在に会えて嬉しいようだが、源十郎は詰め寄られた瞬間に増大した熱ダメージと孫からの白い目線に耐えなければならなかった。


 二人の間に割って入ったのはポップコーンだった。トロロンは不服そうだったが、源十郎は内心でほっと胸を撫で下ろしていた。


「それで、先ずは源十郎さん達のお話を聞いて欲し…」

「何でも言って下さい!何でもやります!」


 食い気味に答えるトロロンを見て、源十郎達は交渉が楽だと思うと同時に積極的過ぎて少し怖いとも感じてしまうのだった。

 次回は3月4日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] そっちの意味でも溶岩水泳部になりそうで草。まぁこっちは遊泳部だけど ジゴロウも源十郎も熱烈なファンと会えてよかったね()
[一言] 溶岩遊泳部?……溶岩水泳部……FGO…うっ!あたまが!
[気になる点] 主人公が蔑ろにされてる感がある、土木させられてるし、冷遇されてるし、パーティーの顔じゃなくなってるし、相対的に弱くなってるし、こんなことならパーティー組まなくてソロの方がかっこよかった…
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