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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十八章 建設ラッシュ
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隠れて勧誘 その二

 ジゴロウがウロコスキーと戦い始めた頃、源十郎達も他のクランに接触するべく洞窟を進んでいた。同行しているのは『不死野郎』のポップコーンとサーラ28である。その洞窟は『光喰いの洞窟』という非常に不人気な名前のフィールドだった。


 不人気の理由は幾つもあった。第一に街から遠く、行き来するだけでも相当な時間が必要になること。第二に得られるアイテムも大したことがないこと。これだけでも普通のプレイヤーが避けるようになるのも自然なことだろう。


「だからこそ、魔物プレイヤーが潜むにはうってつけという訳じゃな」

「そう言うことですね~」


 源十郎に同意したのはポップコーンだった。半透明で浮遊している彼女は、洞窟の天井から垂れ下がる鍾乳石をすり抜けながら進んでいる。幽霊系の魔物だからこそ可能なことだった。


 すり抜けることこそ出来ないが、サーラ28もまた装備品の効果で浮かぶことが可能だ。シオも自前の翼で浮かんでおり、地面を歩いているのはルビーを肩に乗せた源十郎だけだった。


「それで、この洞窟にはどんなプレイヤーがいるの?そろそろ教えてよ」

「ダメダメ!見てのお楽しみって言ったでしょ?」

「ハードル上げて大丈夫っすか?ウチのクランも大概色んな種族(レイス)がいるんすけど」


 源十郎達は合流した時からどんなプレイヤーのクランと引き合わせるつもりなのか聞いていたのだが、サーラ28は頑なに教えようとしなかった。これだけ引っ張るからには相当に特徴的なのだろうが、だからこそシオは期待外れになるのではないかとむしろ心配していた。


 彼女達の心配など何処へやら、ポップコーンもサーラ28も絶対にビックリするというスタンスを崩さない。二人がひた隠しにしていることを全く気にせず、素直に楽しみにしているのは源十郎ただ一人であった。


 彼らが道なりに進んでいると、急に真っ暗な場所にたどり着いた。【暗視】の能力(スキル)があれば大丈夫だろうと思った三人だったが、その予想とは裏腹に全くと言って良いほど周りが見えなくなってしまった。


「うわっ!?とっても暗いね!」

「あだっ!?うぅ、頭をぶつけたっす…」

「ここは【暗視】の能力(スキル)があっても真っ暗だから気を付けてね~」

「カンテラとか持ってきても明るくならないんですよね。こんな場所が幾つかあるから、不人気になっちゃったんですよ。このエリアの採掘ポイントでだけ採れる鉱石もあるんですが、苦労に見合わなくって」

「ふむ…しいたけへのお土産に持って帰るかのぅ」


 上述の理由に加え、この暗闇エリアの存在がこの『光喰いの洞窟』というフィールドが不人気な最大の理由だった。光を喰う洞窟を象徴するエリアなのだが…アクセスが悪く、実入りが少なく、探索も面倒となれば行く気になる者の方が少ないというものだ。


 すぐ近くすら見えない暗闇にルビーは驚き、注意を怠っていたシオは鍾乳石に頭をぶつけて短い悲鳴を上げる。ダメージは受けていないし、これはアバターなので本当に身体が痛くなることもない。だが、急に固いものにぶつかって驚くなと言う方が酷であろう。


 源十郎ただ一人が正確に鍾乳石を回避しつつ、採掘ポイントを見付けて歩くのが遅くならない程度に採集していく。全く影響を受ける様子のない源十郎を、ポップコーンとサーラ28は不思議そうに眺めていた。


「あの、ひょっとして見えてます?」

「む?いや、見えてはおらんよ。儂は特別な視力も探知系の能力(スキル)も持っておらんのでな」

「じゃあどうしてそんなに迷いなく進めるんですか?」

「何、最近のゲームは凄いのでな。空気の流れもリアルじゃろう?それで大体は把握しておるのよ」

「こっ、これが闘技大会優勝者の実力…ッ!」


 造作もないことのように言ってのけた源十郎に、ポップコーンとサーラ28は戦慄する。能力(スキル)に頼らない察知などを息をするかのように行える者でなければ、闘技大会では上位に食い込むことすら難しいのかもしれない。そんなことを二人は考えてしまっていた。


「いやいや、源十郎さんが凄いだけっすよ」

「そうそう。似たようなことが出来る奴がもう一人クランにいるから感覚が麻痺してるけど、お祖父ちゃんがちょっとオカシイだけだから」

「酷い言われようじゃのぅ」


 だが、それは勘違いだとルビーとシオは訂正した。源十郎とジゴロウの二人はあくまでも例外的な存在であり、超能力染みた真似など使えなくて当たり前だ。だからそんなことが出来なかったとしても、対人戦の上位には到達出来ると励ましたのである。


 実際、本戦にまで勝ち残った七甲達は優れたプレイヤーではあるものの、源十郎とジゴロウのような能力(スキル)に頼らない技術などほとんど使えない。彼らは自分の能力(スキル)を鍛え、知恵を搾って使い方を工夫し、的確な戦術で立ち回り、仲間との連係を磨いたことで勝ち上がったのだ。


 しかし、それを聞いた二人の表情が晴れることはなかった。源十郎の行為が普通のプレイヤーには不可能であれど、そんなこと技術がなくても上位に食い込むことが可能なのは理解した。だが、ならばそれが可能な者が鍛練し、工夫し、戦術を練り、連係すればどうなるのか?その答えが闘技大会の結果として既に示されていることに気付いたのだ。


 驚愕している雰囲気こそ鳴りを潜めたものの、二人は引き攣った顔で乾いた笑いを浮かべている。二人がどうしてそんな反応をしているのかわかららなかったので、シオは首を傾げ、ルビーは表面をプルプルと震わせた。


 そんな話を交えつつしばらく暗闇の中を進み、ようやく暗闇エリアを突破した。ここは洞窟なので暗いものの、【暗視】を持つ彼女らにしてみれば真昼のような明るさである。


「…で、ボク達の後ろにいるのは誰なのかな?」

「おっと、敵っすか」

「やはり尾行されておったか」


 だが、暗闇エリアを抜けて一息つく暇はなかった。ルビーは能力(スキル)によって、源十郎は勘で暗闇エリア内から尾行されていることに気が付いていたのだ。二人に合わせてシオも後ろを振り向き、いつでも矢を放てるように構えていた。


 既にバレているのならば隠れていても意味がないと観念したのか、暗闇エリアから足音と共にゆっくりと姿を表す。それと同時に仕掛けるつもりだった三人であるが、尾行者の姿を見て思わず硬直してしまった。


「えぇ!?何、こいつら!?」

「どうなってるんすか…?」

「何と、儂らに瓜二つではないか!」


 暗闇から現れたのは、源十郎達と全く同じ姿をした五人組だった。同じなのは姿だけではない。彼等の武装まで全く同じなのだ。源十郎ですら動けなくなるほどの衝撃であった。


 動けない三人とは逆にポップコーンとサーラ28はニヤニヤと笑っている。イザームと同じ理由で表情のわからないサーラ28はともかく、ポップコーンが浮かべる笑みは悪戯が成功した子供が浮かべるそれであった。


「ね?絶対にビックリするって言ったでしょ?」

「いやぁ、良いリアクションでしたね~!」

「全くだね!初見の人を驚かせる、その瞬間は何度味わってもたまらない!なぁ、皆!?」

「「「「はい、座長!」」」」


 中央に立っていた偽物の源十郎は、バリトンボイスで笑いながら芝居掛かった仕草で両手を大きく開く。他の偽物達もまた、同じようにポーズを決めていた。


 ここで三人は全てを察した。彼らこそ、ポップコーン達が紹介する予定だった魔物プレイヤーなのだと。敵ではないとわかったので、三人は構えを解いた。


「本当にビックリしたっすよ。えっと、どんな種族(レイス)なのか聞いても良いっすか?」

「もちろんさ!僕達は全員が投影魔獣(ドッペルゲンガー)…他人の姿を真似る魔物さ!」


 そう言って偽物達は示し合わせたようなバッチリのタイミングでポーズを変えると同時に彼等の背後が爆発し、特撮ヒーロー番組のように五色の煙が上がった。源十郎達は自分達の姿でヒーローのポーズを決めるのを見て、とても複雑な気分にさせられた。


 源十郎達の反応は予想通りだったのか、ポップコーンとサーラ28の二人はニヤニヤと笑うのを止められなかった。三人の反応は自分達も通った道であり、この洗礼を他人が浴びるのを見るのが本当に楽しいようだった。


「じゃあ改めて紹介するね。この人達は『モノマネ一座』っていうクランだよ」

「ご紹介に与りました『モノマネ一座』の座長、パントマイムと申します。以後、お見知りおきを」


 そう言って源十郎の偽物こと、パントマイムは優雅に一礼してみせる。後ろに控える座員達も同じように一礼しており、その様子は公演を終えた後のカーテンコールそのものだった。彼らは頭を上げると同時にその場で一回転すると、本来の姿へと戻った。


 投影魔獣(ドッペルゲンガー)という魔物は人型の黒い靄としか言い様がない姿をしていた。顔のパーツは存在せず、常に輪郭がぼやけている。そんなパントマイムは右半分が白色で、左半分が赤色の派手な燕尾服に同じく白と赤の縦縞柄のシルクハットを被っていた。


 他の座員達も男女の別や色の違いはあれど、同じような派手な出で立ちである。本体が黒い靄であることを考慮しなければ、誰もが芸人の一座だと思ったことだろう。


「パントマイムさん達はリアルでも大道芸の一座をやってて、練習時間を伸ばしながらゲーム内でも皆を楽しませようと思ってるんだよ!」

「ああ、主観時間が引き伸ばされるっすからね」

投影魔獣(ドッペルゲンガー)を選んだのは、様々な姿をとることで新たな芸のヒントになるかと思った次第でして。皆様の姿も良い刺激になりました」


 パントマイムは嬉しそうにもう一度優雅に一礼してみせた。しかしその後、彼は自嘲するように言った。もう一つの目的は全く果たせておりませんが、と。


「皆様には釈迦に説法でしょうが、ご存知の通りこの大陸ではこの姿で街に入ることが叶いません。プレイヤー、住民を問わずもっと多くの方に我々の芸を見てもらおうと思っても、プレイヤーにすら攻撃されることも多いのです。結局、この洞窟の奥底で近寄ってくる魔物を倒しながら芸を磨く日々が続いておりますよ」

「うわぁ、それはキツいね…」


 寂しげなパントマイムとその一座に同情するルビー達だったが、源十郎はこれは交渉に使えると内心でほくそ笑んでいた。彼はイザームから交渉については全面的に任されている。彼はそのためのカードを一つ切ることにした。


「ふむ、パントマイムよ。儂らなら、お主らが住民に芸を見せる場を提供出来るぞ」

「…何ですって?」

「そのためにはまず、儂らの()()に付き合ってもらう必要がある。どうかの?」

「お聞かせ願えますか?」


 面白いように食い付いたパントマイムに、源十郎はこの勧誘はほぼ成功したことを確信する。そして彼らの目的について語るのだった。

 次回は2月24日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] おー、ナイス勧誘。 住民への福利厚生にもなるし一石二鳥やね。
[一言] そういや魔物だろうが何だろうが気にしない奴らしかいない都市が一個ありましたねぇw
[一言] 魔王国に誘致か。住民の娯楽が増えるし良さげ。
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