巣の完成と新たな隣人
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種族レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
職業レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
【考古学】レベルが上昇しました。
【言語学】レベルが上昇しました。
【指揮】レベルが上昇しました。
従魔カルナグトゥールの種族レベルが上昇しました。
従魔カルナグトゥールの職業レベルが上昇しました。
従魔ヒュリンギアの種族レベルが上昇しました。
従魔ヒュリンギアの職業レベルが上昇しました。
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水路の開通式を終えた後、我々は早速フェルフェニール様の巣の製作を開始した。フェルフェニール様に何か希望はあるかを尋ねたところ、地獄の土の色が落ち着くから使って欲しいと言われた。
そこで我々は足しげく地獄へ通うようになった。不気味な獄獣達を倒しつつ、今度は地獄の土をせっせと掘るのだ。最近は杖や大鎌よりもスコップを握っている時間の方が長い気がする…魔術師としてそれはどうなのだろうか?
とにかく、そうやって再びかき集めたアイテムを使って我々が作った巣の外見はまさに宮殿であった。地獄の穴を囲う円形の壁の内側には、フェルフェニール様が通るのに十分な大きさの大きな門がある城が築かれている。その大きさは街にある我々の城よりも大きかった。
ただし、城の内側は空洞になっていてハリボテのようなものである。巨大なフェルフェニール様が中で暮らすのだから、壁や柱があったら邪魔にしかならないのだ。これは我々の怠慢ではなく、実際に暮らす方のことを考えてのことだった。
しかし、その分外見の装飾には物凄く気合いが入っている。地獄の土を用いているので赤黒い建物には、龍や植物などのレリーフが彫られていた。それらは繊細と言うよりも力強いデザインであり、テーマは二頭の龍の決闘だと作者である疵人の職人が語ってくれた。
また城壁の上や門の左右にはフェルフェニール様の石像が安置されている。その出来は中々のもので、今にも動き出しそうなほど精巧であった。
「いいね、うん。気に入ったよ」
「そう言っていただけたら、建築チームの皆も喜びます」
そうやって手間隙かけて作り上げた巣は、フェルフェニール様のお眼鏡に敵ったようだ。彼は声を弾ませながら舌を伸ばして城門を開いて城の中へと入る。フェルフェニール様が狭い巣をご所望だったこともあり、彼の身体は狭い箱に入った猫のようにギチギチに城に詰まっていた。
息苦しそうに見えるのだが、フェルフェニール様はご満悦である。本当に居心地が良さそうに目を細めていた。初めて会った時も地獄に通じる穴に詰まっていたようだし、きっとそう言う生態なのだろう。
「いやはや、土を盛るだけでも良かったんだけどね。存外に立派なものを作ってもらって嬉しいよ、うん」
城門の部分から頭をヌッと出したフェルフェニール様は、とても嬉しそうだった。これだけ喜んでもらえたのなら作った甲斐があったと言うものだ。
「これだけの巣を作ってもらったんだ。お礼しなければならないね、うん。さて、何なら釣り合いがとれるとしたら…こんなところだろうね、うん」
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クエスト:『フェルフェニール様のお宅を大改造!』をクリアしました!
報酬が贈られます。
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自分達の街を整備するのとは異なり、これはフェルフェニール様からの正式な依頼である。クランとして依頼を受諾しているので、今ここにいない仲間達の下にもクエストの完了メッセージが届いたことだろう。
肝心の報酬だが、豪勢なことに二種類もあった。一つ目はレベルアップした時にももらえるSPだ。能力の進化などで必要になることも多いので、あればあるだけありがたい。しかも10SPと5レベル分ももらっていた。
SPも嬉しいのだが、二つ目の報酬はその上を行くモノ…と言うか能力だった。その名も【幻影召喚:神代闇龍帝】。フェルフェニール様の力を借りられると言うものだった。
当然だが、フェルフェニール様の全力を借りられる訳ではない。それは余りにも強すぎる。そうではなくて、フェルフェニール様の幻影が現れて一発だけ攻撃してくれるようなのだ。
ただし、使える回数はリアルタイムで一日に一度だけ。しかもクラン全体で一度である。クランの全員が使えるものの、他の誰かが既に使っているとその日はもう使えないのだ。
「幻影は君達くらいに小さくなるし本物には遠く及ばないけどね、小生は腐っても龍帝さ。そこそこ威力は出ると思うよ、うん」
「いえ、十分過ぎる報酬です。ありがとうございました」
十分過ぎるというのは私の本心であった。使い勝手は悪いものの、攻撃に使える能力が貰えたことだけでも望外の報酬である。これ以上を望むのは強欲が過ぎると言うものだ。
「それにしても、今日は君だけなのかい?触手の娘はどうしたのかね?職人の長だったようだし、直接礼を言いたかったのだがね、うん」
「アイリスは山の向こう側に住む新たな隣人に…護宝鬼に呼び出されております」
これまでの間、我々は主に建築に従事してきたがそれだけしか変化がなかった訳ではない。最大の出来事として、『槍岩の福鉱山』で毛むくじゃらの存在と接触を持ったことだった。
彼らの種族は護宝鬼と言うらしい。『護宝』とあるように彼らは自分にとっての宝を守護する特性がある。我々を遠目から観察していたのは、我々が不用意に彼らの宝がある領域へと踏み込まないか監視していたのだ。
そんな彼らがどうして我々と関わりを持つようになったのか。それは正にアイリスのお手柄であった。彼女は建築の合間に息抜きと称して護宝鬼とその騎獣の石像を作っていた。遠目に遭遇した際、作ってみようと言っていたアレである。
彼女はその石像を持った状態で素材の収集へと向かい、監視としてやって来た者に見せ付けるように地面に置いてから立ち去った。その次に収集に行った時、今度は向こうから彼女に接触してきたのである。
「よくもまあ気難しい彼らが心を開いたね、うん。気晴らしに彼らの巣の近くを飛んだことがあるけど、小生相手でも容赦なく攻撃してきたからね、うん」
「心を開いた訳ではありませんよ。彼らの街に近付くことは許されていませんから」
フェルフェニール様は感心しておられるが、実際はそこまでの間柄にはなっていない。彼らは山の向こう側にある湖の上に築かれた街に住んでいるようなのだが、そこに近付くことは禁じられているからだ。
前述したように彼らは自分にとっての宝を守護する特性を持つが、それには個体によって相当な差があるらしい。自分が興味を持ったモノを片っ端から収集し、興味を失えばあっさりと捨てる者もいれば、他人にとってはガラクタにしか思えない一つのモノを後生大事に抱え続ける者もいるのだ。
我々に興味を抱いたのは前者の好奇心が強い者達であり、後者の一つのモノに執着する者達は我々と関わることに消極的どころか否定的だ。彼らは我々を外敵に限りなく近い存在だと認識しており、それ故に街にも近付けないでいた。
それに彼らとの取引もクセがある。我々が彼らの興味を引く何かを提供すれば、興味を失った何かをくれる…つまり物々交換なのである。しかも彼らが興味を持たなければ成立しない上に、渡されるアイテムもガラクタのことがあるランダムな取引なのだ。
比較的に彼らの興味を引き易いのは加工された美術品だ。アイリスや疵人の緻密な彫刻や、闇森人の木彫り、狩猟した獲物の骨などを加工した四脚人の装飾品、鉱人の金属工芸品などが人気である。
意外と、と言っては失礼かもしれないが武具はあまり人気はなかった。それは彼らにとって武具など必要がないからだ。
「君は護宝鬼達の戦いを見たことがあるかい?」
「ええ。取引の最中に一度だけ。集まりすぎたからか魔物が寄って来まして…絶対に喧嘩を売りたくないと思いましたよ」
護宝鬼達は強い。それも尋常ではなく強いのだ。取引は『槍岩の福鉱山』の開けた場所で行うのだが、そこを狙って魔物が来たことがある。その際、我々は彼らの力を見せ付けられたのだ。
まず彼らは全身の毛を自由に伸ばして操ることが可能だ。アイリスの触手ほど精密ではないが、数と力においては彼らの方が圧倒的に上である。何せ鞭のような毛を打ち据えられた岩は砕け、絞められた魔物はグチャグチャになってしまったからだ。
彼らの強さはそれだけではない。彼らは巨大化することも可能である。戦闘となった途端、騎獣と共に五倍ほどの大きさに巨大化していた。『槍岩の福鉱山』にはいくらでもある槍のような岩をへし折ると、投げ槍にして投擲した時には度肝を抜かれたものだ。
瞬く間に全滅させると、すぐに身体を元のサイズに戻していた。侮っていた訳ではないが、あそこまで圧倒的な力の持ち主とは思わなかった。大きさと見た目で判断してはならないという教訓になったよ。
「それが良いね、うん。そうだ、今日は地獄に行くのかい?」
「いいえ、今日のところはお暇させていただきます。実は友人の依頼で大きな貝類の上に砦を作ることになっていて、その素材集めを開始しなければなりませんので」
「そうかい?じゃあ頑張ってね、うん」
実はフェルフェニール様の巣が完成間近に迫った時、アンが例の回遊島海獣を従魔として手懐けることに成功したらしい。その背中に彼女達の拠点となる砦を築くのが、我々の次の事業となるのだ。
我ながら忙しないと思わないでもないが、やることがないよりはマシと言えよう。フェルフェニール様の激励を背に、私は回遊島海獣の殻の上へと向かうのだった。
次回は2月4日に投稿予定です。




