開通式
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種族レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
職業レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
【尾撃】レベルが上昇しました。
【尾撃】の武技、穿尾突を修得しました。
【鎌術】レベルが上昇しました。
【鎌術】の武技、十連斬を修得しました。
【煙霧魔術】レベルが上昇しました。
新たに粘霧の呪文を習得しました。
【魔法陣】レベルが上昇しました。
【魂術】レベルが上昇しました。
【邪術】レベルが上昇しました。
【錬金術】レベルが上昇しました。
【指揮】レベルが上昇しました。
【死と混沌の魔眼】レベルが上昇しました。
従魔カルナグトゥールの種族レベルが上昇しました。
従魔カルナグトゥールの職業レベルが上昇しました。
従魔ヒュリンギアの種族レベルが上昇しました。
従魔ヒュリンギアの職業レベルが上昇しました。
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「ううむ、ついにここまで…感慨深いものだな」
我々は現在、最初にシラツキを着水させた『地を巡る大脈河・下流』にいる。正確には『地を巡る大脈河・下流』にまで掘り進め、内側を舗装した水路の水門の前にやって来ていた。
この水路は『灰降りの丘陵』を抜けて我々の街にまで延び、その中を通ってから南側にあるもう一つの水門から外に出て循環するように繋げている。この二つの水門の間では、コンラートが彼の雇っている住人によって急ピッチで港町が建設中だ。ここがティンブリカ大陸と他の大陸間の貿易を行う拠点となるのである。
「イザームちゃん、早く始めようよ~」
「わかっているさ」
じっと水路を見つめていた私を呼んだのは、水門を開くのを見届けるためにやって来たコンラートだ。他にも我がクランメンバー全員と四つの種族の代表者が数十人、それにアンが率いる『蒼鱗海賊団』のメンバーが集まっている。そう、今日は街の整備と水路の敷設が終了したことを祝う式典なのだ。
こんな大袈裟なことにする必要はないと私は思っていたのだが、それに反対したのがコンラートだった。色々と理屈を捏ねていたが、本音はちょっとしたお祭り気分を味わいたかっただけだとセバスチャンがこっそりと教えてくれた。
実際、コンラートは張り切って準備を整えていた。立食パーティーの形式で様々な料理を用意させており、そのどれもが高級な食材を使っているのでまともな味がするらしい。食べられないアバターなのが少しだけ悔しかった。
ただし、そんなお祝いの料理の中にも商人としての工夫が凝らしてある。全ての料理は美味であるらしいが、どの料理もこの大陸の食材と他の大陸の食材を合わせて作っているらしい。つまり同じものを食べたければ、外から食材を輸入しなければならないのだ。
商売と言う概念に触れ始めたばかりの街の住人にもっと積極的な商売を行わせるための措置である。商魂逞し過ぎるだろう!
もっとも、住人達はあまり細かいことを考えずに楽しんでいた。食材云々のことよりも、どうやって料理しているのかの方が気になっているらしい。知らない料理を学び、今ある食材で家族に振る舞ってやりたいそうだ。ふっふっふ、想定よりも儲けに繋がらないようだな?
コンラートとしてはウスバが率いる『仮面戦団』のメンバーも呼ぶつもりだったらしいが、例の争いに加わっているせいで来られなかった。特にウスバ達は好き放題やっているようで、独断でいなくなったかと思えば敵側の住人を暗殺して混乱させているようだ。
ちなみに、例の争いはどんどん話が大きくなっている。プレイヤー対プレイヤーの構図に住人が関わって貴族対悪党の面子のぶつかり合いになったのだが、これに乗じてその貴族が帰属する国が国軍を率いて国内の反社会的勢力を一掃すると言い出したのだ。
するとこれまでは相争っていた悪党達であるが、国の本気度を感じ取ったようでこれまでにない危機感を覚えたらしい。今までの遺恨を今だけは抑えるという条件で同盟を結び、国の軍隊に勝るとも劣らない武装集団となったのだ。
掲示板では前者を『官軍』、後者を『賊軍』と呼んで区別しつつ、動向を逐一書き込まれるようになっている。今では戦いについていけないゲームを始めたばかりの初心者や、戦争の舞台となるルクスレシア大陸の外で活動している者、あるいは争い自体に興味がない者以外はほとんど全員が参加する非公式イベントとなりつつあった。
純粋な数では官軍の方が勝っているらしい。国が軍隊を集めていることもあるが、それ以上に風来者へと正式な依頼として参戦を募っているのだ。依頼という形式であれば抵抗感を抱き難い上に、力を貸す方が後の利益に繋がるからか、参戦するプレイヤーは非常に多かった。
しかしながら賊軍の方には『仮面戦団』のような対人戦に慣れた名だたるPKプレイヤーが揃っている上に、裏の世界の実力者が勢揃いしていた。
実力は最上級だが素行の悪さが原因でクビになった騎士や、幼い頃から徹底的に英才教育を受けた暗殺者など各地の悪党の持つ切り札が集まっている。一人一人の質ではこちらが上かもしれないとのこと。官軍にも精鋭部隊などがいるようだが…どちらが勝利するのか、現在の下馬評では五分であるであるらしい。
ちなみに、コンラートは他の商人と協力してどちらが勝利するかのトトカルチョを行っているようだ。戦争する両陣営にアイテムを売り捌き、その上で勝敗を賭けの対象にする胴元となって金にする…お前、本当にやりたい放題だな!?私も少額を賭けたけども!
閑話休題。そんな立食パーティーを楽しむ皆の前には一段高い段差があって、私とコンラートはその上へと上がる。するとパーティーに集まっていた者達の視線がこっちに集中した。
ううむ、こうして注目を集めて何かを話すのは緊張してしまう。あがり症と言うほどではないものの、私は自分に気合いを入れようと鋭く息を吐いてから口を開いた。
「皆、この記念すべき日によく集まってくれた。皆の力があったからこそ、この水路は完成したのだ。本当に、本当にありがとう。まずはこの感謝を受け取ってもらいたい」
私は心の底から感謝の言葉を述べながら、ここまでの作業について思い出していた。と言っても苦難の道だった訳ではない。マンパワーは十分に足りているし、こちらには鉱人の作業用戦術殻があった。フィールドにいる魔物の襲撃に警戒するくらいだろうか?
それよりも大変だったのは素材集めである。最初の方は我々にも作業を手伝う余裕があった。しかしコンラートからの支援物資が届いてからは事情が変わった。その中身は建材だけでなく、様々な道具もあったからだ。
アイリスも優れた職人であるが、コンラートが用意したのは専門的な用途に使うための魔道具だったのである。しかもどれも最高級品であり、作業の効率は一気に上昇した…してしまったのだ。
作業の効率が上がると言うことは、一日辺りの素材の消費量が増えると言うこと。その結果、皆で集めた素材が枯渇しそうになったのである。
それからは大変だった。連日のように『槍岩の福鉱山』と『餓魂の錆砂海』へと赴いては、時間ギリギリまで素材を集めることになったのである。皆の経験値は稼げたし、様々なアイテムもドロップしたのだが…ずっと同じことをし続けるのはそれなりに苦痛であった。きっとあの時の私は死んだ目をしていたに違いない。
私のポリシーとして仲間達にノルマを課すようなことをしたくなかったので、私は必死に、無心にアイテムを収集し続けた。幸いにも『餓魂の錆砂海』は強い魔物も多いので、こちらに行く時には少し長めにログインするとしてもジゴロウや源十郎が付き合ってくれた。
それに他のメンバーも時間の許す限り素材集めに協力してくれたので、作業が滞ることはなかった。そして想像よりも素早く、美しく立派な街と中型船ならばすれ違えるくらいの幅を持つ水路が完成したのである。
作業について思いを馳せているのは私だけではない。クランのメンバーとパーティーに招待された四つの種族の者達もそれぞれに思い返しているようだ。
「さて、私は長々とつまらない話をするつもりはない。今日、ここにいるのは何のためか?それはここにある水門を開き、我らの街へと水が流れていく。その瞬間を見届けるためだろう!」
「そうだ、そうだ!」
「早く流してくれ、王様!」
「水門!水門!」
住人達は水門コールをして一刻も早く水を流せと急かしてくる。煽るような言い方をしたのは私だけども、こんなにノリノリになるとは思わなかった。
アン達も悪ノリしているのか、一緒になって水門コールに加わっている。それにしても…海賊達が四脚人や闇森人達と肩を組んで木製ジョッキ片手に水門コールをしているのはかなりシュールだった。
隣にいるコンラートをチラリと見れば腹を抱えて爆笑している。クランメンバーも笑いながら水門コールに加わっていた。これはもう水門を開けない限り収集がつかないな。よし、やるか!
「では、水門を開けるぞ!ジゴロウ!エイジ!」
「はいよォ!」
「ふんがっ!」
私が合図をすると、我がクランの力自慢達が水門の左右にある開閉用の巨大な回転レバーを押す。するとゆっくりと金属製の水門が上へと上がっていき、その隙間から勢い良く川の水が水路へと流れ込んだ。
川の水は設計通り止まることなく水路を流れ、街へ街へと進んでいく。その光景を見て、集まった者達は一際大きな歓声を上げるのだった。
次回は1月27日に投稿予定です。




