オリジナル技を試そう その五
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従魔ヒュリンギアの種族レベルが上昇しました。
従魔ヒュリンギアの職業レベルが上昇しました。
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リンの賢い戦いぶりに触発された我々は、彼女を見習ってどんな敵だろうと工夫することを意識して戦った。少しだけであるが、魔術の扱いが上手くなったような気がする。気がするだけかもしれないがね。
「やりました!レベル90ですよ!」
「おお、良かったじゃないか」
私がリンのレベルが上昇したアナウンスを聞いていると、アイリスもまた進化可能なレベルにまでたどり着いたらしい。彼女は嬉しそうに声を弾ませていた。
今ここで進化することはないと思うが、今すぐにでも帰りたいと思っていることだろう。私自身もオリジナル技の使い勝手はわかったし、改善点や新たなオリジナル技のアイデアも浮かんでいる。まだログアウトの時間には少し早いが、この辺でシラツキに帰還しておくのも良いか。
「はい!やっと皆に追い付けました。それに、新しい発見もありましたし」
「ああ。まさか即死させるとドロップするアイテムそのものに影響が出るとはな」
今回の遠征で発見したことなのだが、【邪術】を混ぜたオリジナル技で即死させるとドロップアイテムが変化するようなのだ。具体的に言うと低確率ながら全身骨格がドロップするようになるっぽいのである。
全身骨格は命鋼毒蛇以外からも得ているのだが、それは全て即死させた魔物からドロップしていた。逆に言えば普通に倒した魔物からは一度もドロップしていない。まだ試行回数が少ないものの、アイリスと話し合ったところ恐らくは確定だと結論付けていた。
また、即死がドロップアイテムに与える影響はもう一つあった。それはアイテムの品質が必ず『優』になることだ。即死しているが故に外傷がほぼ存在せず、完璧な状態の死体となるのだろう。
これまでも私は【邪術】で何体もの魔物を葬って来たが、必ず『優』になってはいなかった。理由は定かではないが、これは私が即死に特化した魔物になったからだと勝手に推測している。何にせよ、これからはもっと積極的に即死を狙おうと思う。
「グオオ!」
「クルッ!」
私達が今日の探索について振り返っている間、カルとリンは二頭で弱い命鋼の魔物の群れに襲い掛かっていた。二頭とも私の従魔であり、更に同じ龍でもあるカルとリンは連係して戦う場面が多くなるのは目に見えている。特にメンバーによっては空中の敵に対応可能なのがカルとリンだけのこともあり得るだろう。その時を想定して今のうちに二頭だけの連係も鍛えておくべきなのだ。
ただし、まだまだリンは弱いので敵の強さには注意を払っている。今二頭が戦っているのは命鋼雷蜥蜴という発電能力を持つ爬虫類だ。アイリス曰く、外見はサバクツノトカゲに似ているとのこと。そんな蜥蜴がいるとは知らなかった。
命鋼雷蜥蜴はかなり小さく、レベルも低い。しかし、その小ささに加えて敏捷のステータスが高くすばしっこいので攻撃を当てるのも困難だ。実際、リンの【龍眼】を以てしても外すことがあるくらいである。
さらに角のような突起からは電撃を放つことが可能だ。その威力は大したことはないものの、群れが一斉に電撃を浴びせてくるので馬鹿に出来ない威力と迫力があった。
「グオオオオン!」
「クルル!クルルルッ!」
対するカル達は龍としてのフィジカルの強さを遺憾なく発揮していた。馬鹿に出来ない威力である電撃だが、カルはその翼で全て受け止める。どれだけ電撃を浴びようと、カルの翼が傷付いた形跡は微塵も見られない。
これは【龍翼】の効果であった。【龍翼】は飛行時の最高速度や機動力が上昇するだけでなく、翼限定ではあるが物理と魔術の両方への耐性を高めるらしい。飛行能力が上がるだけの能力ではないようだ。
下手な金属製の盾よりも頑丈であり、ジゴロウや源十郎ですら一撃で翼膜に穴を空けられないそうな。豊富な体力と鱗の防御力に加え、大盾のような翼を四枚も持つカルは前衛として完成されつつある。本当に頼もしい子に育ったものだ。
カルが前に出て翼で全ての電撃を受け止め、リンがその真後ろから魔術で反撃する。リンの【龍眼】は未来視だけでなく透視も可能だ。カルの背後に隠れていても敵が見えているので、正確な攻撃を行っている。龍の強さをこれでもかと見せ付けていた。
「クルルルル!」
「グオオ…」
全ての命鋼雷蜥蜴を倒したところで、リンは喜びの咆哮を上げる。ただ、カルの方は疲れたように息を吐いていた。
本来のカルは体力と防御力を活かしてガンガン接近戦を仕掛けるパワーファイターだ。前に出て戦うのではなく、じっとリンを庇い続ける役割は疲れるのだろう。
しかし、リンと二頭で戦うことになれば今のようにカルが庇い続ける状況になることは多くなる。お兄ちゃんなんだから我慢しなさい、などと言うつもりはない。カルはもう我慢してくれたのだから。後で労いながら全身をブラシでしっかりと磨いてやろう。
「そろそろ戻るぞ。カル、アイリスを頼む。リン、乗せてくれるか?」
「グオン」
「クルゥ」
オリジナル技を試すための遠征は特に問題なく終了した。一足早くシラツキに戻った私は甲板でカルとリンのブラッシングを開始し、アイリスは進化をするべく彼女の船室に向かった。
甘えてくるカルとリンの鱗を隅から隅まで磨いている間に、仲間達も続々と帰還してくる。シラツキは空に浮いているので、回収するためにはカルとリンの力は必須だ。ああ、また砂が鱗の隙間に…拠点に戻ったらもう一度ブラッシングしければ。
全員の帰還を確認したところで、私はシラツキを発進させるべく艦橋へと向かう。そこには少しだけ雰囲気が変わったアイリスと、しいたけらしき者がいた。
「アイリスと…しいたけ、だよな?」
「やっぱそう言う反応になっちゃうよねぇ~。アイリスもビックリしてたし」
「あ、あはは…」
進化したのであろうアイリスの変化はそこまで大きくない。身体の大きさはそのままで、岩を思わせる細胞壁は艶やかに輝いている。隙間から伸びる触手はまた数を増しており、作業がさらに捗りそうな雰囲気だった。
逆にしいたけは私が言葉を失うほどに変化している。彼女は大きくなった。それはもう、とてもとても大きくなっている。何せ、艦橋の椅子に座った状態なのに茸の傘の縁が私と同じ目線にあるのだから。
私のアバターの身長はデフォルトのままなので、平均的な日本人の成人男性とほぼ変わらない。つまり、目線の位置は大体165cmから170cmくらいになるのだ。
椅子に座ってこれと言うことは、彼女のアバターの手足が短いと言っても身長は二メートルを優に超えているだろう。我らがクランではルビーに次ぐ小ささだったのに、今ではエイジに並ぶ巨体と言えよう。
身長もそうだが、しいたけのアバターは横幅もかなり広くなっていた。彼女は軸の太い茸から手足が生えていたのだが、身長が伸びるのと同時に軸も相当に太くなったのである。最も恰幅の良い体型のエイジと肩を並べるくらいの胴回りはあった。
しいたけは、そんな巨大な身体を艦橋の備え付けの椅子に無理やり押し込んで座っている。身体に椅子の肘掛けがギチギチにめり込んでいて、とても苦しそうに見える。大丈夫なのだろうか?
「…何があった?」
「いや~自分でもビックリしたよ。賢樹のことを聞いたからさ、闇森人から貰った草木の成長促進剤やら栄養剤やらを試しに手持ち分を全部飲んでから進化したらこうなったんだよね」
「闇森人の薬は危険だとお前が言ったはずだが…」
好奇心のままに錬金術や調薬を行うしいたけは、ポーションなどの薬品について最も詳しい。同時に森の薬草の知識を得るため、街の住民となった闇森人と頻繁に交流していた。
その際、お互いに調合した薬品を交換して研究に役立てているとは聞いていた。闇森人の薬品は、森で暮らし、植物系の魔物との生存競争を生き抜いて来た経緯から植物関連のものの効果が強烈だとも。
その薬を全部って…そりゃあ大きくもなるわ。むしろ二メートル程度に抑えられたのは奇跡ではなかろうか?プレイヤーだからこそこのくらいで済んだのかもしれない。仮に賢樹に使うとするなら、闇森人に正しい用法と適切な用量を聞いてから使いたいものだ。
「進化する時にシステムが辻褄を合わせてくれるって思ってたからね~。上手く行ったぜ!」
「無茶しますね…」
「まあ、しいたけ自身が納得しているのならいいんじゃないか?」
「そーゆーことよ。流石は王様、わかってるぅ!」
「調子の良いことを…」
「あっ、そうそう!知ってる?今話題沸騰中のイベントで投稿された画像のこと!」
「いや、知らない。何かあったのか?」
私は自分が撮影したスクリーンショットを投稿して以来、ほとんどイベントのことをチェックしていない。気が向いたら画像を見ても良いかな、と思っていたせいで結局見ていないのだ。
アイリスに視線を向けると、彼女も知らないのか触手を横に振っている。本当に何があったのだろうか?しいたけに起きた変化以上に驚くようなことにはならないと思うがね。
「いや、それがさぁ…画像が原因で戦争が起きそうなんだよね」
「「…は?」」
ただ画像を投稿するだけのイベントで戦争が起きる。想像の遥か彼方の内容に、私とアイリスは呆けたようにそう呟くことしか出来なかった。
次回は1月15日に投稿予定です。




