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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十八章 建設ラッシュ
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オリジナル技を試そう その二

 リンが発見した敵に向かって歩きながら、私も魔力探知(マジックエコー)を使ってみる。すると、砂の中に二つの反応があった。きっとこれをリンは見たのだろう。逐一魔術を使わねばならない私とは大違いである。


 砂の中に隠れる魔物はこちらに対して不意打ちを狙っているようだ。しかし、既に位置を把握しているので不意打ちなど成功するはずもない。むしろこっちがいつ攻撃するべきか考えるべきだった。


「よし。私が魔術で先制攻撃を仕掛ける。敵の正体はまだわからないから、そこからは流れでやるぞ」

「わかりました!」


 リンには敵の正確な形も見えているのだろう。しかし悲しいかな、リンはプレイヤーと同じ言葉を話すことが出来ない。会話によって聞くことは無理である。


 アグナスレリム様やアルマーデルクス様は話せることから、もっと成長すれば会話が可能になるのだろうが…今出来ないのだから意味はない。今後に期待するしかあるまいよ。


 さて、先制攻撃に使う魔術は何にするか。オリジナル技を使うのは確定として、幾つも作った中のどれを選ぶのかが問題である。ふむ、このフィールドにいる魔物は命鋼の塊だろう。つまり、金属だ。よし、決めたぞ!


「双魔陣、行け…黒雷!」


 空中に浮かぶ魔法陣から放たれたのは、黒い雷であった。雷矢(サンダーアロー)(デス)を組み合わせた、即死効果を持つ雷である。【雷撃魔術】は【神聖魔術】と同じく速度があって回避し辛く、それに触れると通常通りに雷のダメージを受ける上に即死することもある凶悪な魔術になっていた。


 即死効果が発生しなければ、ただ黒くて消費魔力の量が増えた雷矢(サンダーアロー)に過ぎない。だが、今の私の魔力の総量と自動回復速度を考慮すれば誤差であるし…私の少年の心が揺さぶられるカッコ良さがある。普段から使うとことにしよう。


 二条の黒い雷は標的へと真っ直ぐに飛んでいき、地面の砂を弾けさせながら突き刺さった。奇襲しようと待ち構えていたようだが、まさか自分達が先制攻撃されるとは思っていなかったらしい。私の魔術は直撃していた。


「シャアアアアアアッ!」


 魔術が着弾した場所から怒り狂ったようにこちらへ突撃してきたのは、()()のメタリックな蛇だった。長さは二メートル近くあり、太さは平均的な成人男性の胴回りほどあるだろうか。中々恐ろしい見た目をしているではないか。


 リンが砂の上を猛然と進む蛇しか見ていないことから、恐らくは黒雷で即死したのだと思われる。最も効果が出にくいはずなのだが、運良く即死させられたようだ。


 いや、戦闘中は常時使っている【死と混沌の魔眼】の力やその他の能力(スキル)が加わっていることを考慮すると、運だけでもなさそうだ。【邪術】のレベルが上がれば成功確率も上がるだろうし、積極的にガンガン使ってやろう。


 それよりも今は目の前の敵に集中しなければ。まずは【鑑定】しなければ。私はメタリックな蛇を【鑑定】してみた。


――――――――――


種族(レイス)命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ) Lv81

職業(ジョブ):偏食家 Lv1

能力(スキル):【鉱毒牙】

   【重尾撃】

   【蛇絞】

   【蛇眼】

   【筋力超強化】

   【防御力超強化】

   【体力超強化】

   【敏捷強化】

   【隠密】

   【奇襲】

   【暗殺術】

   【連係】

   【熱源察知】

   【眼紋】

   【鋼鱗】

   【物理耐性】

   【魔力捕食】

   【捕食強化回復:命鋼魚類】


――――――――――


 あれは命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)と言うらしい。魔術系の能力(スキル)はなく、当然のように魔力を食べる【魔力捕食】がある。このフィールドの魔物の標準装備と言っても過言ではあるまい。


 他にも色々と気になる能力(スキル)が幾つもあるが、地味に目を引いてしまうのはその職業(ジョブ)だろう。何だよ、偏食家って。好き嫌いしているのか?


 【捕食超絶回復:命鋼魚類】という特徴的過ぎる能力(スキル)があることから、ほぼ間違いなく前にジゴロウが見付けた命鋼のカワハギのような魚類ばかり食べていたらしい。しかも命鋼の魚類を食べた時だけ何かが起きるようだ。


 と言うか、この『餓魂の錆砂海』は砂漠と海に生息する生物を模倣した魔物や植物が生息しているらしい。運が良ければ鮫が蜥蜴を食べるなど、普通の環境では考えられないことシーンを見られるかもしれないな。


「名前は命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)、毒持ちの蛇だ。取りあえず、魔力におびき寄せられるか試してみよう」


 私はローブの内側から二つの【浮遊する双頭骨】を左右に飛ばし、適当な弱い魔術を撃ってみる。すると少しだけ視線を向けたものの、視線を外して我々への突撃を続けたではないか。


 命鋼(ライフメタル)狂鮫(マッドシャーク)とは大違いの反応だ。しかし、私はそこまで動揺しなかった。何故なら、奴は偏食家…魚しか食べたがらないのである。


 視線で追ったことから興味がない訳ではないようだが、何よりも優先するということもないらしい。それなら普通の魔物として戦うだけだ。一体しかいないが、初見の魔物である。慎重に戦おう。


「カル、前衛は任せるぞ。アイリス、触手での拘束を試して欲しい。リン、敵はお前よりもかなり格上だ。無理だけはするなよ」

「グオオッ!」

「任せて下さい!」

「クルルゥ!」


 カルは我々を庇うように前に出ると、翼を広げて命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)を睨み付ける。途轍もなく頼もしい背中だった。


 カルの偉容を前にしても、命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)は速度を落とすことすらなく突撃してくる。能力(スキル)を使って威圧した訳ではないとは言え、カルを見て怯まないのは強者としての自信の表れか。やはり油断するのは危険であろう。


「シィィィィッ!」

「グオオオオン!」


 見た目よりも素早い命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)は、猛毒を持つであろう牙をギラリと輝かせながら蛇特有の大きな口を限界まで開いて突撃する。カルは舐めるなとばかりに爪を立ててその頭を上から叩きつけた。


 私ならグチャっと潰されそうな一撃だったが、命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)は強制的に口を閉ざされただけで大したダメージは負っていない。しかし、カルとの力勝負は分が悪いと理解したのか一度距離を取ってから頭の付け根の襟を開いた。


 大きく開かれた襟には蛇の眼のような模様があり、命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)はそれを見せつけるようにしている。何かして来るつもりか?


「ジュラアアアッ!」

「キュイィィィ!?」


 命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)が喉を鳴らすと、奴の両眼と眼の模様が妖しく輝く。私は何も感じることはなかったし、それはカルとアイリスも同じであった。


 しかし、リンだけは違った。彼女は怯えたように震えながら後退りしている。どうやら自分よりも格下を威圧する能力(スキル)を使ったらしい。レベル的に上である我々には通用しなかったが、リンには効いてしまったのだ。


 彼女のアイコンには恐怖の状態異常が表示されている。しかし、恐怖ならば問題はない。私は素早く【魂術】の怖癒によって状態異常を解除した。


「キュウゥゥ…」

「リンちゃんを怯えさせるなんて、許しません!えいっ!」


 リンは落ち着きを取り戻したものの、激怒したのはアイリスだった。彼女には珍しく怒りを露にして積極的に触手を伸ばした。その触手は光輝いており、命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)をグルグル巻きに縛り上げた。


 縛られた命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)は苦しそうに呻いている。それを見て私は疑問に感じた。相手は【物理耐性】を持っているのに、触手で締め上げられただけでそこまで苦しむものだろうか?


「ひょっとして、それがオリジナル技か?」

「はい!聖輪(ホーリーリング)と【捕縛】の武技を組み合わせたんです!」


 【神聖魔術】の中でも影が薄い敵を拘束する聖輪(ホーリーリング)と、彼女の十八番となっている触手による【捕縛】。それを組み合わせて物理と魔術の両面から敵を拘束する技に仕上げたようだ。


 拘束する力が増しつつ、物理攻撃が通じ難い敵にも効果的。敵を妨害すると言う一点に特化した、アイリスらしいオリジナル技である。


「クルルルルッ!」


 拘束されている命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)に向かって、リンはこれでもかと魔術を連発した。怯えさせられた恨みが籠っているのか、怒濤のごとく魔術が着弾する。アイリスが拘束しているので、命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)は回避することも出来ずに雨のように降り注ぐ魔術を受けるしかなかった。


 しかしながら、アイリスは生産職だ。縛る力を強化しても、それには限界が存在する。命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)は激しく身体を動かすことで触手を引きちぎって自由になろうとしていた。


「まあ、させんがね。第二の呪腕」

「ジュラッ!?」


 その上から私はオリジナル技で拘束する。私はオリジナル技を作る時、ほぼ【邪術】を加えていた。しかし、私の魔術はそれだけではない。深淵系魔術は【邪術】だけではないのだ。


 私は【暗黒魔術】の闇腕(ダークアーム)と【呪術】の様々な呪いを組み合わせていた。その一つが今使った第二の呪腕である。これに組み合わせているのは麻痺(パラライズ)であり、捕まえた対象を麻痺させることがある呪文だった。


 捕まえた時に麻痺させられれば良し、抵抗されたとしても闇腕(ダークアーム)によって押さえ付ける力は健在だ。暗い黄色のオーラをまとった黒く、大きな魔術の腕が命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)の頭を鷲掴みにした。


「シュ…シィィ…」

「グオオオオオッ!」


 第二の呪腕は運良く麻痺させることに成功したらしい。命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)はピクピクと痙攣するだけで、動くことが出来なくなった。その隙を見逃さない。カルは四本の足でジャンプすると、空中で一回転して勢いを乗せつつ尻尾を叩き付けた。


 進化を繰り返す度にカルの尻尾は重く、そして鋭くなっている。思い切り力が乗った尻尾は、命鋼(ライフメタル)毒蛇(コブラ)の首を一撃で切断するのだった。

 次回は1月3日に投稿予定です。皆様、良いお年を。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 長さは二メートル近くあり、太さは平均的な成人男性の胴回りほどあるだろうか  作中で敵が上記のように表現されていたんですが、太さの割にやけに短い蛇ですね。 [一言]  パッと見だけでは…
[一言] 良いお年をー。
[気になる点]  【捕食超絶回復:命鋼魚類】という特徴的過ぎる能力スキルがあることから、ほぼ間違いなく前にジゴロウが見付けた命鋼のカワハギのような魚類ばかり食べていたらしい。しかも命鋼の魚類を食べた時…
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