同行するのは…
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種族レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
職業レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
従魔ヒュリンギアの種族レベルが上昇しました。
従魔ヒュリンギアの職業レベルが上昇しました。
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モッさんから悪魔についての事情を聞いた後の経験値稼ぎは非常にスムーズに進んだ。一度やったことを繰り返すだけなので、効率よく行えるようになったのである。カルもリンも賢くて助かる。
リンが疲れたところで切り上げてログアウトした二日後、我々は再びシラツキのラウンジに集まっていた。集まる目的はこれからの方針について話し合うためだ。
何故間が空いたのかと言うと、単純に全員で集まれるタイミングが今日しかなかったからである。リアルの生活の方が大事なので当然の配慮だろう。そして今はまだログインしていないメンバーが来るのを談笑しながら待っていた。
「キュキュッ!」
「ふっふっふ!ボクのプルプルボディがお気に召したようだね!」
「ふふっ、そうですね」
「かわいいっすねぇ~」
アイリスとルビーとシオの三人は、一緒に連れてきたリンと遊んでいる。どうやらリンはルビーの独特の弾力を持つ身体が気に入ったらしい。楽しそうにその表面を押したり覆い被さったり甘噛みしたりしていた。
ルビーはされるがままに粘体の身体で遊ばれ、アイリスとシオは興奮してはしゃぐリンを見たり撫でたりして癒されているようだ。存分に可愛がって、存分に癒されてくれ。
「どぼじで…うごごごご…」
「ダメでござるぞ、しいたけ殿。解放すればリン殿に飛び付くでござろう?」
「暴走しがちな性格を治せとは言いません。ですが、少なくともリン様を怯えさせない程度の分別を付けていただかなければ解放も出来ません」
「およよ…」
アイリス達がいる場所の反対側ではネナーシの蔓で拘束されたしいたけがぶら下がっている。彼女はリンを見た瞬間に突撃しようとしたので、すかさず彼が拘束してくれたのだ。その時にリンはとても怯えてしまい、今もしいたけからなるべく離れた場所に居続けようとしていた。
そんなしいたけをネナーシとミケロが監視し続けている。頭は冷えているので降ろしてももう暴走するとは思えないが、拘束を解けばリンの方が怯えてしまうだろう。しばらくはこのままでいてもらうぞ。
「キキッ!」
「うおっ!」
「それで…ああっ!?おい、モモ!何やってんだ!?」
「ははは、構わんよ。元気で好奇心旺盛。良いことじゃないか」
闘技大会の予選の時のことを私に語ってくれていたセイの肩から、彼の従魔であるモモが私の肩に飛び移った。この小猿のように見えるモモだが、実際は植物の魔物である。身体は樹木で出来ているし、尻尾の先端には未熟な桃が成っていた。
モモは私の顔をしげしげと眺めてから、三つの眼窩に指を突っ込んだ。闘技大会の時には飲み物を仲間の従魔に持っていく気配りを見せていたが、本質的に悪戯好きなようだ。実害はないがビックリするから止めて欲しい。
「だが、そろそろ勘弁して欲しいかな。悪戯も良いがね、それよりもあっちの子と仲良くして欲しい。いいかな?」
「キキッ!」
「キュゥ?」
私は肩に乗っていたモモを下ろしながらリンの遊び相手になって欲しいと伝える。すると、モモは片手をピッと挙げてからリンの方に歩いていく。そしてリンが行っていたルビーをつつく遊びに参加した。
リンは少し驚いた様子だったが、すぐに仲良くなって遊んでいる。仲良くしてくれるのならありがたい。遊び相手が出来ればリンも喜ぶだろう。
「ここが勝負所や!革命するで!」
「むむ!?これはいかん!」
「うーん、どうしよーかなー。パスするー」
「やった!これで勝てるかも」
「うふふ、なら革命返しさせてもらおうかしら」
「ファーーー!?」
「容赦ないねぇ」
「ハッハァ!面白くなって来たなァ、オイ!」
そしてラウンジ中央では最初にここへ集まった者達が集まってトランプ遊びに興じていた。これはアイリスの作品ではなく、ガチャの景品らしい。七甲の私物であり、色々なトランプゲームを楽しめるようだ。
アイテムとしての機能も面白い。表裏のデザインを登録されているものに自由に変えることが可能で、しかも現金やアイテムを賭けることも出来るのだ。賭けに使うお金やアイテムはトランプのケースに放り込む形式になっており、計算も自動でやってくれる優れものだった。
今はジゴロウ、源十郎、ウール、紫舟、邯那、そして七甲の六人で大富豪を行っている。羅雅亜は邯那の後ろから趨勢を見守っているようだった。
七甲が革命でカードの強弱を入れ換えて勝負を仕掛け、ウールと源十郎出せるカードがないのか困りながらパス。革命によって勝ち目が出た紫舟が喜ぶが、その直後に邯那も革命を行ってカードの強弱を元に戻す。羅雅亜は苦笑し、七甲と紫舟が悲鳴を上げ、それを肴に爆笑するジゴロウが瓢箪に入れた酒を呷る。何と言うか、親戚の集まりのような状況だった。
「遅くなりました!」
「悪いわね」
そうこうしているとエイジと兎路の二人がやって来た。最初からのコンビである二人はログイン時間が被っているし、頻繁にパーティーを組んでいる。息もピッタリなので、二人と行動すると自動的に頼れる盾と強力な剣が活躍してくれる。本当に良いコンビだと思うのだが、セットにされると兎路が嫌がるので口には出さなかった。
二人が来たことでこの場にいないのはモッさんだけになった。どうやら最近は仕事が繁忙期にあるようで、彼のログインする時間帯は遅くなりがちだった。だからこそ先日、私が残業のせいで遅くにログインした時にちょうど時間が合ったのである。リアルを優先するのはクランの大前提なので、私を含めた全員が文句を言うことはなかった。
「すみません。今日も遅くなりました」
二人の到着後からさらに待っていると、ようやくモッさんがやって来た。その間に遊び疲れたリンはアイリスの触手を編んだ揺り篭で眠り、賭けトランプで負け続けた七甲が白い羽毛を更に白くして横たわっている。もう少し早く来てくれていればまだマシだったのだろうが…諦めてくれ、七甲よ。
「おぉぅ、モッさぁん…遅いでぇ…」
「…何があったので?」
「ルビーと邯那に搾られちまっただけだァ。自分のトランプでなァ!」
そう言ってジゴロウはゲラゲラと笑う。おい、そんなに笑ってやるな。見ろ!七甲は更に白くなって萎れているじゃないか!真実を語ったジゴロウ本人は悪びれることもなく酒を呷り続けている。
全く我が兄弟分ながら遠慮がない奴だ…まあ良い。これで全員が揃ったのだから、早速話し合いを始めよう。モッさんに合わせた時間帯なので、もうすぐログアウトしたい者が出てくる時間だからだ。
「全員揃ったところで始めようか。知っての通り、そろそろ街の拡張を始めることにした。なるべく協力して欲しい」
私は一旦ここで区切り、全員の顔を見回す。そのことに不満を抱いている者はいない。アイリスやルビーのように表情が分かりにくかったり顔そのものがなかったりする者もいるのだが、私だけでなくほぼ全員が同じことが可能だった。なぜなら表情以外の部分で表現出来ているからだ。
アイリスならば触手の動きで、ルビーならば表面の震え方で、紫舟ならば下顎を打ち合わせる時の音で判断可能である。一々確認する必要がないので、言葉を話さずとも仕草だけで察することが出来るお互いにとって便利だった。
「しかし、何よりも優先しろとは言わない。現にモッさんとウール、紫舟は進化に関わるクエストのために抜けることになっている」
「すみません」
「ごめんねー」
「お土産たくさん持って帰るからね!」
全員が三人のことも知っているので、これについても異論が出ることはなかった。ここまでは既知の話題であり、ここからが本題の話し合いだ。
「そこで、だ。三人と一緒に行きたい者はいるか?いたら正直に言ってくれ」
「目的地はどこ?」
「テラストール大陸です。人類を殺すというクエストの関係上、戦争が起きている場所が都合が良いですから」
「戦争だァ?」
首を捻りながら尋ねたのはジゴロウだった。同じように源十郎も知らなかったのか、少しだけ身を乗り出している。どうやら二人はテラストール大陸で行われている戦争のことを知らないらしい。そのことについてモッさんは簡潔に説明した。
「森人に獣人に蟲人の三つ巴かァ…あんまり興味ねェなァ。要は縄張り争いだろォ?勝手にやってろって感じだぜェ」
「蟲人の国か…ふむ」
説明を聞いたジゴロウは一瞬で興味が失せている。ジゴロウは他人の縄張り争いに首を突っ込むのに興味がないらしい。アイリス達の表情がなくても感情が理解出来るというのに、ジゴロウの戦意をかき立てるツボや逆に萎えさせるツボがわからない私であった。
逆に源十郎は興味が湧いたようだ。源十郎からすると自分と同じ系統の種族の国があると聞けば興味が湧くのも当然である。これはモッさん達の手伝いなどとは関係なくついていきそうだな。
「これを踏まえた上でどうするか決めて欲しい。三人と行きたい者はいるか?」
「儂は興味があるのう」
「じゃあボクもお祖父ちゃんと一緒に行く!」
「ルビーが行くなら自分も行きたいっすね」
同行したいと手を挙げたのは源十郎とルビーとシオの三人だった。他には…いないな。よし、なら決まりだ。テラストール大陸に行くのは六人で、残りは全員で城壁と街の拡張のために行動することになる。さあ、これから忙しくなるぞ!
次回は10月31日に投稿予定です。




