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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十七章 育てよう、駆け回ろう
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素晴らしき秋の一面・動 その二十五

 闘技大会のペアの部の決勝。トーナメントに残った猛者を打ち倒して勝ち上がった二組は、両方とも特殊な戦い方をする者達だった。


 片方は以前にもこのペアの部で優勝した経験のある邯那と羅雅亜である。戦士と馬という特徴的な二人は、いつものように騎乗した状態で闘技場に現れた。


「「「キャアアアアアアアッ!!!」」」


 二人が闘技場に現れた瞬間、観客席からは黄色い声援が飛んでいる。完全武装の邯那が重厚な馬鎧を装備した羅雅亜の上に乗る姿はとても凛々しい。強さをリスペクトする男性プレイヤーも多いが、それ以上に女性人気が強いのである。


 対するは下着同然の格好をした女性プレイヤーと自律的に動く鎧という、こちらも一風変わったペアである。女性プレイヤーが鎧を着て戦うのが二人のスタイルなのだが、こちらはいつも二人が分離した状態で闘技場に現れていた。


「「「ウオオオオオオオオッ!!!」」」


 すると先程とは打って代わって野太い声援が送られる。グラビアモデルのようなプロポーションの彼女が登場するなり観客席へと笑顔で手を振るのだ。トーナメントの間に男性プレイヤーの心をガッシリ掴んでいた。


 本人達は闘技場の中央に集まって対峙する。邯那は馬上からヒラリと降りると、対戦相手の女性に向かって握手するべく手を差し出す。彼女は邯那の手を両手でしっかり握り締めながら、どこか感極まったように瞳を潤ませていた。


「あの!私、第一回の闘技大会で見てからずっとファンだったんです!それが闘技大会の決勝で戦えるなんて、光栄です!」

「あら、そうだったの?ファンだなんて、何だか照れちゃうわね」

「そちらは旦那さん何ですよね?私、邯那さんに憧れて、彼氏に頼んで一緒に戦えるようにしてもらったんです!」

「私も夫に我が儘を言って馬になってもらったのよ。私達、似た者同士かも知れないわね?」


 これから戦うとは思えないほど和気藹々とした女性陣の横で、二人の男達もまた親睦を深めていた。二人の話題は当然、相方のサポートに関することであった。


「なるほど。三本目と四本目の腕が彼女の邪魔にならないように振るうのにコツがいるんだね」

「ウッス。息を合わせないと邪魔しちゃうんスよ!その度に怒られちまって…」

「こっちも似たようなものだね。タイミングを合わせないと最悪の場合は落馬しそうになるんだ」

「そうなんスか。熟練のペアでも危ない時ってあるんスね!」


 馬や鎧としてパートナーを補佐するのにも、技術と苦労があるようだ。他の試合だと互いを挑発して煽り合いになることもある時間なのだが、四人はそんな攻撃的な話題とは無縁であった。他の試合のような口撃による挑発合戦を期待していた者達には物足りないかも知れないが、本人達は気にも止めていなかった。


 開始ギリギリまで楽しそうに談笑していた四人だったが、開始時間には戦闘体勢に移行している。邯那は羅雅亜の鞍に乗り、女性プレイヤーは鎧の男性プレイヤーを装備した。邯那は準備運動とばかりに馬上で方天戟を振り回し、女性プレイヤーは相棒の鎧と何かを話しながらお互いの連動を確認している。仲良くなった二組のペアだったが、戦意は萎えるどころか昂っているようだった。


「可愛くて良い娘だったわね」

「鎧の彼は体育会系で真っ直ぐな性格だったよ」

「そうなのね。何にせよ、ファンだなんて言われたからには無様な戦いは出来ないわ」

「じゃあ、全力以上を出して戦うくらいの気持ちで行こうか」


 口調は穏やかに、しかしそれでいて会話の内容は出し惜しみせずに全身全霊を以て戦うというもの。観客席にまでは届いていない小声での会話は、観覧席の仲間達には届いている。彼らは二人らしい、と言いながら笑っていた。


 試合開始のゴングが鳴ると同時に二組のペアは走り出す。そして互いに全力の一撃が闘技場の中央で激突した。方天戟と大剣が激突して火花を散らす。力と力のぶつかり合いの勝者は、二人羽織の方であった。


 力で押し負けた邯那は体勢を崩してしまう。そこに追撃しようとする二人羽織だったが、羅雅亜はそのまま駆け抜けることで追撃から免れた。二人羽織は追い掛けることはなく、武器を構えて待ち構えていた。


「凄い力ね。多分、鎧の子の力が乗っているんだわ」

「力では負けても、機動力では絶対に負けないよ。機敏に動けるのなら、すぐに追い掛けてくるだろうからね。それを隠している可能性もあるかも知れないけど」

「そんなことを言っていたらキリがないわ。隠し玉はこっちにもあるんだし。頭の片隅に置いておくだけにしましょう。とにかく、力負けしているのなら技術と連係、それと隠し玉でどうにかするしかないわね。それじゃあ、行きましょう」

「ああ、行こうか!」


 走り抜けた先で上半身を起こした邯那は、羅雅亜と軽く作戦会議をする。そして再び突撃を開始した。ただし、今度は羅雅亜が走りながら魔術を放っている。二人羽織の鎧の男は槍とメイスの武技でこれを迎撃していた。


 魔術は全て防がれてしまい、後はお互いの得物が再び激突するのだろう。このままでは先ほどと同じことになる。観客達も二人羽織もそう思っていた。


「はっ!」

「わわっ!?」


 しかし、次のぶつかり合いで押し負けたのは二人羽織の方であった。鎧の重量のお陰で倒れることはなかったものの、二人羽織はその場でよろめいてしまう。予想外の結果に観客はどよめいていた。


 邯那が力で勝ったカラクリは単純なことで、それは羅雅亜が装備している鞍にあった。その鞍には騎乗者が刺突攻撃を使った時にその威力を増幅させる効果があったのだ。


 体勢を崩した二人羽織を二人は容赦なく攻める。邯那は鋭い連続突きが雨のように降り注ぎ、羅雅亜の魔術も飛んで来るのだ。二人羽織は防御に専念するしかなかった。


「さ、流石ですね!でも、負けませんっ!ゆう君!」

「おう!」

「あら?」


 邯那の突きを槍とメイスが挟み込むように受け止めた。邯那は力一杯に引き戻そうとするが、どうやら両手に持つ武器を用いた防御系の武技であるらしい。彼女の方天戟が外れることはなかった。


 そうやってお互いの位置を固定した所で、防御に使っていない大剣が赤熱し始める。大剣に込められた何らかの力を使おうとしているのだ。そして、二人は固定されているので逃げられない。下段に構えられた大剣の攻撃は直撃するかに思われた。


「ふんっ!」

「おおおっ!?」


 だが、大剣が振り上げられることはなかった。ここで羅雅亜が前足を軸にして半回転し、後ろ足で蹴り上げたのである。赤熱した大剣でどうにか防いだものの、そこで方天戟を固定した武技の効果時間が切れたことで二人羽織は二人を取り逃がした。


 一度離脱した二人を、二人羽織は追い掛けて来た。その速度は決して速くない。それなのに、何故こちらに来るのか。その理由を二人は大剣が赤熱し続けるのには制限時間があるからだと判断した。


「このまま逃げ回るかい?」

「そんな格好悪いこと、すると思うの?」

「いいや、しないだろうね。なら、迎え撃とうか!」


 邯那と羅雅亜は効果時間が経過するまで待つのではなく、迎え撃つことを選択した。二人が求めるのは正々堂々と戦った上での勝利である。その気持ちは対戦前に二人羽織の二人と話してより強くなっていた。


 邯那は方天戟の刃を羅雅亜の角に押し当てる。すると角の力が乗り移ったかのように刃は激しく放電し始めた。放電する方天戟を両手でしっかりと持ち、二人は真っ直ぐに駆け出す。二人羽織の二人も走りながら、赤熱する大剣を大上段に振り上げた。


 方天戟の突きと大剣の一撃は、闘技場の中央で激突する。すると、激しい爆発と共に炎と雷撃が撒き散らされた。爆発の衝撃によって二組のペアは同時に吹き飛んで、闘技場の壁に叩き付けられた。


「大丈夫かい!?」

「ううっ…だっ、大丈夫よ!」


 落馬して地面に倒れた邯那だったが、即座に立ち上がると同じく立ち上がっていた羅雅亜の鞍に飛び乗った。その時には既に二人羽織の二人は立ち上がっており、こちらに向かって走っている。再び冗談に構えられている大剣は、先ほどよりも強く赤熱し…鎧の両腕が融解し始めていた。


 それを見た二人は自分達が勘違いしていたと気付いた。あの大剣は制限時間付きで強化するものではなく、どんどん強化されていく代わりに自分をも傷付けていく諸刃の剣だったのだ。


 先ほど時点で武器の威力は同等。なら今は二人羽織の方が上回っているだろう。自分達が火力で押しきられるのが先か、その前に相手が自滅するのが先か。防御関連の能力(スキル)はあまり得意としていないので、不利な戦いを強いられることになるだろう。


 しかし、それがわかっていながらも邯那の顔には好戦的な笑みが浮かんでいる。そして羅雅亜と共に突撃を敢行するのだった。

 次回は8月8日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 冗談だったんかいw
[気になる点] 下から10行目の誤字連絡 冗談⇒上段
[一言] 邯那はまだ、アンデッドであるキョンシーとしての強みみたいなものを見せて無いね。
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