素晴らしき秋の一面・動 その十四
私達が遊んだ『ロボファイト』にはSFではお馴染みのビーム兵器こそないものの、様々な武装が実装されている。私が使った重火器からジゴロウが装備する近接武器まであるので、プレイヤーは思い思いのロボットを作り出すことが可能だ。
その中で共通していたことが、基本的に銃弾は無限であることだった。有限にしてしまうと射ち切った武器がただの荷物になってしまうし、何よりも銃弾を大切に使うようになって戦闘が地味になってしまうからだ。
もしも有限になっていたら銃弾が暴風雨のように飛び交い、ミサイルがドカンドカンとそこら中で爆ぜる戦場にはならない。私も弾切れした後のことを考慮して近接武器を装備していたと思う。作ったロボットのコンセプトも大きく異なっていたことだろう。
しかし、何事にも例外というものは存在する。最初に装填されている弾丸しか撃てず、しかしながら絶大な威力を発揮する武器も幾つか存在していた。究極のロマン兵器と言えるのだが、私は選ぼうとは思わなかった。その理由は単純明快、割りに合わないと思ったからだ。
それらは全て巨大であり、それ故に装備の枠を三つも使ってしまう。例えばロボット並みに大きなガトリング砲ならば、片腕と片方の肩と背中の枠を割いて装備することになる。確かに一発の威力は高いのだろうが、それなら弾薬が無限の三つの装備を使った方が総合的な火力は高くなるはずだ。
私一人であれば選んだかもしれない。しかし、今回はクランメンバーと罰ゲームを賭けた戦いだ。私は即座に装備する武器の候補から外していた。外していたのだが…
「まさかそのロマン兵器に吹き飛ばされるとは思わなかったぞ」
「はっはっは!この勝負、ボクの勝ちだね!」
五人で『アミューズメントパーク』を歩きながら自慢げにそう語ったのはルビーだった。彼女は機動力重視のロボットの背中と両肩の装備枠を使って三発しか撃てない迫撃砲を選んだのである。彼女が放った迫撃砲の榴弾によって、私を含めた激戦区にいた全てのロボットが撃破されてしまった。当たれば強いロマン兵器が、これ以上ないほどに大活躍したのだ。
ルビーは高所を取ると、即座にプレイヤーが集中して戦っている場所目掛けて迫撃砲を撃ち込んだ。その後、もう使えない迫撃砲の装備を解除して戦場に舞い戻ったのである。
ただ、三つもの装備を失った状態で他のロボットと渡り合うのは流石に無理だったらしい。漁夫の利で一体を撃破した後、あっさりと撃破されてしまったようだ。何にせよルビーの撃破数は我々五人の中ではぶっちぎりの『17』であり、ポイントの一位も彼女だった。
「うーん、結構頑張ったんですけど二位でしたね」
二位は少し残念そうにしているアイリスだった。彼女は彼女で思いきった装備にしていたらしい。弾薬こそ無限であるが、両手でなければ使えないロングバレルの大型ライフル、両肩には盾、背中には大型のブースターを装備して空中や高所から長距離狙撃を繰り返していたのである。
幸いにも私は見付からなかったので撃たれてはいないが、その戦果は自慢するに値するだろう。視界の外から狙撃することで最終的に撃破数は『10』と言う結果であった。女性陣二人の力、恐るべし…!
「上手く行けばロマン兵器は多大な戦果を上げられると言うことか…使いこなせる気がしないがね」
そして真ん中の三位は不肖、この私だった。それなりに頑張った方だとは思ったが、撃破数は『5』で終わっている。ルビーとアイリスに比べると少ないように思われるが、撃破出来ずに終わるプレイヤーもいるので成績が悪い訳ではなかった。
まあ、あの状況ではルビーの迫撃砲がなかったとしても撃破されていたから撃破数をこれ以上伸ばすことは出来なかっただろう。私にしては頑張った方ではないだろうか?もっと上手に立ち回れた気もするが、ジゴロウに追いかけられてビビって逃げた先が激戦区だった時点でこれが限界だったと思おう。
「うむむ…やはり己の身体を動かすのとは訳が違ったわい」
「あァ、全くだァ…」
そして二人で項垂れているのは源十郎とジゴロウだった。源十郎の撃破数は『2』で、ジゴロウの撃破は『1』という結果に終わった。二人とも近接武器に特化した装備にしていたのだが、それが大いなる罠であったらしい。
『ロボファイト』は操縦桿でロボットを動かし、ボタンで攻撃するゲームである。そう、ボタンで攻撃なのだ。ボタンを押した時に決められた動きをするだけで、源十郎の剣術もジゴロウの格闘術も活かせない。結果、どうにかして接近してからボタンを連打するしかなかったのだ。
源十郎は戦っていた二体に割り込んで倒したものの、そこで別のロボットに撃たれて終わり。ジゴロウは私の目の前で破壊した一体以外は倒せず、次の好機を待っているとルビーに吹き飛ばされたらしい。中身がいくら強くとも、ロボットを扱わせても強いとは行かないようだ。何だか少し安心したよ。
ちなみに現時点で『ロボファイト』のポイントで一位のプレイヤーは我々とは次元が違っている。撃破数は圧巻の『57』に生存時間は二時間超え…正直、意味がわからなかった。
弾薬は無限なので補給が不要とは言え、同時に戦う他の二十九人のプレイヤーは全員敵。誰かと協力も出来ず、回復手段もない状況で、二時間以上生き残る…これをやるために生まれてきたようなプレイヤーがいるようだ。
「罰ゲームはジゴロウ決定だね!何してもらおっかなぁ~?」
「約束だからなァ。煮るなり焼くなり、好きにしやがれェ」
上機嫌のルビーにジゴロウは堂々とそう言った。自分の敗北を受け入れるようだ。こう言う潔い所は間違いなく彼の美点だろう。
この後にも五人で様々なゲームを遊んでその結果に一喜一憂しながら時間は経過し、ログアウトする流れとなった。やはり仲間達と共に遊ぶ時間はとても楽しい。またこんな風に遊ぶイベントがあると良いなぁ。
◆◇◆◇◆◇
ログインしました。今日は『競龍』の本戦が行われる日である。そんなことはないと思うが、ひょっとしたら本戦に出られないかもしれない。私は少しだけ緊張しつつ、水やりを終えてからイベントエリアに向かった。
「おっと、メッセージだ。何々…何だと!?」
イベントエリアに足を踏み入れた瞬間、運営からメッセージが届いた。それを開いたところ、私は見事に本戦へと勝ち進んだと書かれている。それ自体は嬉しいし、安心もした。仲間達がロビーで見物すると言っていたので、本戦に出られなかったら恥ずかしい思いをするところだったからだ。
ただし、その後ろに無視出来ない一言が書いてあった。それは『予選二位通過』という六文字である。一位を奪ったのに、あの後アマハがもう一度抜き返したと言うことだと思う。くっ、悔しい!
いや、落ち着け。一度抜かせたと言うことは、我々の間に大きな差はないと言うこと。それは他のプレイヤーによる妨害がある本線ならば、結果はどうなるかわからない。予選の準備はあくまでも参考にしかならないのである。
「本戦まで…ゲーム内時間であと一時間以上ある。その前に一度運試しに向かうか」
私は時間的に余裕を持ってイベントエリアに来たので、本戦までには少し時間がある。この時間を使い、私は験担ぎを兼ねて『UFOキャッチャー』に向かった。
相変わらずプレイヤーのいない『謎キャッチャー』の前に立つと、私は手慣れた動きでレバーを操作する。今日は初めて十個全てを取ることに成功した!よし、幸先は良いな!
次に黒いカプセルを一つずつ開けていく。十個あったカプセルから出てきたのは…全てハズレアイテムであった。うん、虹色どころか金色にも光らなかったよね。何だか急に不安になってきた…試合の前に運試しなんてするんじゃなかった。
己の行為によって漠然とした不安を抱きながら、私は『競龍』の会場に向かう。最初は龍舎に入る訳だが、そこには今まで見たこともないほど多くのプレイヤーが集まっていた。
「何だ、あれは?全員が本戦出場者と言う訳ではなさそうだが…?」
「有名な配信者とそのファンみたいよ。配信者の方が本戦に出るから、その応援に来たんだって」
「…アマハか。驚かせないでくれ」
困惑からボソリと呟いた私の声に反応したのはアマハであった。背後から足音を立てずに近付いてくるから、私は全く気付いていなかった。内心の動揺から裏返った声を出してしまって少し恥ずかしい。
私のことはともかく、あれは配信者とそのファンか。それならプレイヤーが集まるのもわかる気がする。大きな人だかりが出来るほどファンを集めるほどの人気者らしい。私は配信者のことは全く知らないので、どんな人物なのか一切わからないが。
「本戦だと全員が敵のはずだけど…協力して妨害してくる可能性があるわね」
「おいおい、それはアリなのか?」
「本人は正々堂々戦うって言ってるわよ?でも並走するファンがどう動くかはわからないじゃない。それに有名過ぎてアンチも多いみたいだし、もしかしたら最初に潰されちゃうかもね」
「ふむ、あり得るな」
それを聞いて私は納得した。自分が応援している誰かのために何かをしてあげたいと思うのは人情というもの。本戦に出場する限りは全員が敵のはずだが、他者の足を引っ張ることで特定の誰かが有利になるようにする者がいてもおかしくないだろう。
だが、人気者には常にそれを嫌う者がいるものだ。千人中千人に嫌われる者は沢山いるかもしれないが、百人中百人に好かれる者はそういない。アンチが混ざっていてもおかしくないどころか、いると思った方が良さそうだ。
特定の個人を守ったり狙ったりすることが良いことかどうかはさておき、配信者の存在はレースに何かしら影響を与えそうだ。集団の様子を見るに、ファンの中に二人か三人ほどレースに参加するらしい。妨害してくる前提で走った方が良さそうだ。
「おや?彼らは…」
「あの二人、本戦に出てたのね」
配信者とファンの集まりから目を離して龍舎を見回すと、初日に私の相棒にフラれていた片手剣の男とそれに着いて回っていた槍の男を発見した。あの二人も本戦に勝ち上がっていたらしい。
向こうも私の存在に気付いたようで、私のことをギロリと睨み付けている。おいおい、まだ根に持っているのか?ずいぶんと執念深い性格のようだ。近くを走っていたら、間違いなく妨害してくるだろうな。
想像していた以上に本戦は荒れそうな予感がする。しかし、そのことを不安に思うよりも楽しみにしている自分がいることに私は我ながら驚いていた。どんな結果になるとしても、全力で楽しみつつ本気で優勝を狙って悔いのない走りをしたいものだ!
次回は6月25日に投稿予定です。




