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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十七章 育てよう、駆け回ろう
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素晴らしき秋の一面・動 その九

「え、えらい目にあった…」


 私はイベント用のロビーで項垂れていた。疾駆封龍(スプリントドレイク)と共にタイムアタックに挑戦したのは良いものの、満足するまでになんと十周もすることになったのだ。


 おかげでタイムは縮まったし、走る時のコツも掴んだ。特にカーブの時に息を合わせて身体を傾けるタイミングはバッチリである。しかし、連続で何度も走るとなれば気疲れしてしまう。疾駆封龍(スプリントドレイク)よりも前に私に限界が訪れたのだ。


 何となくだが、まだ鞍の上に乗っているような錯覚すら感じる。本来ならさっさとログアウトして眠るべきなのだろうが、そうしないのには理由があった。


「『UFOキャッチャー』をやらねば…」


 一日に回数が限られている『UFOキャッチャー』。これをやらずにログアウトするのはあまりにももったいない。ここは疲れを押してでもやっておいた方が良いだろう。


 と言うことで私はフラフラしながら『UFOキャッチャー』のエリアに向かう。そこには昨日よりも多くのプレイヤーがいて、思い思いの筐体で遊んでいた。


 そして昨日私が情報提供を行った『謎キャッチャー』だが、悲しいことに誰もいなかった。出るアイテムがランダムと言うのは避けたいプレイヤーが多いのか、それとも今は偶々人がいないだけなのか。いずれにせよ、順番待ちをせずに遊べるので好都合か。


「それじゃあ今日もカプセルを取るとするか」


 私は今日も『謎キャッチャー』で黒いカプセルを取っていく。昨日は八個取れたが、今日は九個とることに成功した。明日は十個全てを取れるように頑張りたい。


 九個の黒いカプセルを抱えた状態で筐体から少し離れた場所にある椅子に腰掛け、一つ一つを開封していく。今回の当たりは二つ。これは運が良いと言っても良いのかもしれない。当たった二つはこんなモノだった。


――――――――――


魔呼びの笛 品質:良 レア度:R(希少級)

 半径一キロメートル以内にいる魔物を引き寄せる音を出す笛。

 誘引された魔物は必ず敵対し、そのステータスは一割上昇する。

 魔物プレイヤーには効果がない。


謎めいた金属塊 品質:劣 レア度:R(希少級)

 全体に赤錆が浮く大きな金属の塊。

 このままでは同じ重量の金属にしかならないが、錆を落とす技術があれば真の姿を見せるだろう。


――――――――――


 敵を呼び寄せる『魔呼びの笛』は経験値やドロップアイテムの稼ぎなどに有効だ。ジゴロウに渡すと延々と吹いていつまでも戦っていそうだ。敵のステータスが一割増しになるようだが、そもそも稼ぎに使おうとしている敵なら多少強くなっても変わらない。危険地帯で使わなければ何も問題はないだろう。


 ただ、他プレイヤーへの嫌がらせにも使える可能性が高い。えっと、たしかMPKと言ったか?大量の魔物を引き寄せ、それを他プレイヤーに押し付けて殺させる行為だ。そんな使い方をする予定はないが、結果的にそうなることはあり得る。使うときは気を付けなければならない…今いる大陸では迷惑をかける相手の方がいないのだが。


 もう一つの『謎めいた金属塊』は本当に謎だった。一抱えほどもある赤錆の塊とでも言うべきアイテムは、全体のシルエットを見てもその正体がまるで予想できない。錆取りをしなければ本当に無用の長物でしかないらしい。


 ただ、錆を落としたら実は凄いアイテムだったということもあり得る。アイリスとしいたけに相談してみよう…いくら『謎キャッチャー』とは言え、排出アイテムも謎にするのはこれきりにして欲しい。


「これで今日はログアウト…ん?」


 やることも終わったのでログアウトしようと思った時、遠くに人だかりが出来ていることに気が付いた。普段ならそれもスルーしそうなのだが、人だかりの中にルビーを抱えたシオがいたのである。


 仲間達が何に注目しているのかが気になった私は、野次馬に混ざるようにして人だかりの中に入る。すると、そこにあるゲームの筐体の前にいたのはアイリスであった。


「あれはやべぇって…」

「マジかよ…勝てるわけねぇ…」

「そもそもあれってアリなん?」

「出来るってことはアリなんだろ?」


 彼女が遊んでいるのは『モグラ叩き』である。このゲームこそ、私がアイリスに勧めた競技であった。そして予想通りに彼女は大活躍している。フッフッフ、私の見立ては正しかったようだ。


 アイリスは今、無数にある八本の触手に一個ずつピコピコハンマーを持って現れるモグラを片っ端から叩いていた。彼女は器用だし、手の数が物理的に多い。現れるたくさんのモグラを正確に叩くこのゲームなら、手の多さと器用さが活かせると思ったのだ。


 モグラが現れる穴は三十近くあるのだが、頭が出るか出ないかのタイミングでハンマーが振り下ろされる。時々叩かれていないモグラがいたが、それはモグラと見せかけた爆弾だった。


 おお、叩いてはいけないモグラもいるのか。それは知らなかったが、彼女は的確に避けている。流石としか言い様がない。


 『モグラ叩き』は制限時間があるようだが、正しいモグラを叩くことでポイントと残り時間が増加する。逆に偽物を叩くとポイントに変化はないが制限時間が減少するようだ。アイリスの正確さと速度でも制限時間は徐々に減っている。まあ、無限に遊べる訳もないか。


「「「おおっ!?」」」


 私を含めた見物人達は一斉に驚いた。何故なら一度に現れるモグラの数と出てから引っ込むまでの時間が急に短くなったからだ。この速度についていくのは流石に無理だ。誰もがそう思ったことだろう。


「…あと二本、ハンマーを持てたら楽なのに」


 しかし、アイリスは愚痴を漏らしながらも触手を振り続け、黙々とモグラを叩き続けている。その動きはあまりにも正確無比過ぎて、『モグラ叩き』の筐体よりも今の彼女の方が機械のように錯覚してしまうほどだった。


 そのまま一つのミスもすることなく、アイリスの挑戦は制限時間切れで終了した。そのスコアは当然ながらトップである。ルビーとシオが褒め称え、見物人達も拍手を送っている。称賛を受けた彼女は恥ずかしそうではあったが、同時に同じくらいに嬉しそうだった。


 アイリスが筐体から離れた直後、見物人達は次々と三人に話し掛けている。見物人を魅了するスーパープレイをやってみせた魔物プレイヤー。その中でもかなり珍しいであろうアイリス容姿。そして同じく魔物プレイヤーの仲間…そりゃ気になるわな。


 魔物プレイヤーの数は徐々に増えつつあるようだが、未だに少数派であることは否めない。それが『モグラ叩き』と言えど競技の一つで優秀な成績を修めたのだ。注目されるのも無理はなかろう。


 特に熱心に話し掛けているのは数人の女性プレイヤーだった。どうやら自分達のクランに入らないかと勧誘している様子。おいおい、引き抜きか?勘弁して欲しいところだ。


 アイリス達はやんわりと断っている。それを察したのか無理強いはしなかったものの、お互いにフレンド登録はしているようだ。強引なプレイヤーでなくて良かったし、そう言うプレイヤーと顔見知りになっておくのは彼女達のためにもなる。是非とも仲良くして欲しいものだ。


 もう用はなくなったので、私はロビーから自室に戻ってログアウトしようと思っていた。しかし、ここでも私が注目せざるを得ないものがあった。ロビーにあるディスプレイにジゴロウが映っていたのである。


『ウハハッ!ウハハハハァ!』


 闘技大会ジゴロウは心の底から楽しそうに哄笑しながら一人で戦っている…複数を相手に。私は最初、目がおかしくなったのかと思ったのだが、そんなことはなかった。どうやらパーティーの部に一人で参加し、多数を相手に大暴れしているようだ。


 対戦相手の数は既に三人になっていて、他の仲間は倒されているらしい。残った者達は必死に戦っているが、その顔は引き攣っている。防御の隙間から爪で急所を引っ掻いたり、わざと防御の上から殴ったり、角で突き刺したりとやりたい放題だからその反応も仕方がないだろう。


『隙ありィ!』


 ジゴロウは地面を滑るようにして接近すると、背後に回り込んで首筋に噛み付く。さらに獣のように何度も首を振ってトドメを差した。プレイヤーは光の粒子となって消え、残りは二人。


 ジゴロウは間髪入れずに彼らに向かって踏み込んだ。残った二人は勝負に出たのか、それぞれ高威力の武技と魔術を使っている。だが、ジゴロウは武技を全て見切っているのかヒョイヒョイと回避しつつ、武技の蹴りで魔術を撃ち落とした。何だその動きは…やっぱり化物だよ、お前は。


 ロビーで観戦しているプレイヤーも口をあんぐりと開けて絶句している。あれは予選なので、対戦相手も同じくらいのレベルであっても相性や実力の差によっては一方的な試合展開になることもあるだろう。


 しかし、それをたった一人でやるとなれば話は別である。同じことをしょっちゅう行っているのがウスバ率いる『仮面戦団(ペルソナ)』だが、彼らと違ってジゴロウは顔を曝しているので構成員ではないとわかる。新たな実力者、それも魔物プレイヤーの登場は驚きをもって迎えられるはずだ。


『ウハハァ!楽しかったぜェ!』


 ジゴロウは剣士の喉を肘で潰し、首を折ってから投げ捨てる。そして魔術師に接近すると、その胸を角で貫いた。実力をこれでもかと見せ付けたジゴロウは、意外にも快哉を上げることもなく闘技場を去って映像は終わった。


 ロビーで観戦していた者達は先ほどの試合の話で盛り上がっている。恐らくは掲示板でも話題となっていることだろう。しかし、彼らはまだ源十郎も出場していることを知らない。彼もジゴロウと肩を並べる腕前であり、きっと闘技大会でも実力と存在感を発揮してくれるに違いない。


 仲間達が活躍する姿を見て、私は嬉しく思うと同時に私も頑張らなくてはという気持ちが強くなってきた。よし、もう少しだけ『競龍』のタイムアタックを頑張ろう。私はログアウトするのを止め、もう一度龍舎へ向かうのだった。

 次回は6月5日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いいですね。ちょっとずつ有名人になっていく感じが。 実際のMMOだと掲示板叩きや直接会っての詐欺やまとわりつきが発生しますが、今のところあまり不愉快なプレイヤーが少ないので安心して見ていら…
[気になる点] 浮遊大陸はまだ見つかってないのかな?初心者の中に空を飛びたいなぁとか思ってシオと同じ鳥人タイプ選べばあそこの町がスタートになるし、それから掲示板に流れてもおかしくないと思う
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