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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十七章 育てよう、駆け回ろう
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素晴らしき秋の一面・動 その七

 最後のカプセルから出た『変形武器引換券R』という謎のアイテム。黄金の光が放たれたので一応は当たりだと思うのだが、どうやって使うものなのか全くわからない。何これ?マジでどうすんの?


「ああ!そう言うことだったのか!」


 私が困惑していると、エイジがポンと手を叩いてからある一点に向かって指差した。私達三人が一斉にそちらを見ると大きな自動販売機のようなモノがあって、そこには『引換券交換機』とポップな字体で大きなディスプレイに表示されていた。


「遊んでいる時に気付きまして。なんだろうな、ってずっと思ってたんですよ」

「じゃああの機械にこの引換券を突っ込めば、何かのアイテムが出てくると?じゃあ行ってみよう」


 私達四人は『引換券交換機』の前にまで向かう。そして挿入口と記された場所に意を決して『変形武器引換券R』を入れてみる。すると自動販売機に紙幣が吸い込まれるように引換券が入っていった。


 引換券を入れるとディスプレイに映っていた文字が消え、小気味良い音が鳴ってから何かのカタログのようなものに変わった。そのどれもが剣や槍などの武器であるが、共通しているのは刀身や柄に何かの仕掛けがあることだった。


「変形武器…なるほど、そう言うことか」

「二種類のモードを切り替えて戦える武器、ってことかいな。おもろいやんけ」


 七甲の言う通り、変形武器は文字通り二通り以上のモードに変形させつつ戦う武器だった。カタログには二つのモードが両方表示されている。非常に面白い武器であることは確かだろう。


 ただし、『変形武器引換券R』とあるように変形武器は全てレア度が『R(希少級)』となっている。変形武器はそれだけで珍しい武器であるようで、どれもこれも普通の金属や木材で出来ていた。正直に言ってこの性能では今の私のレベルだと意味を成さない。振り回して遊ぶくらいにしか使えなさそうだ。


 だが、その仕組みを調べることは出来るだろう。我々にはアイリスという優秀過ぎる職人がいる。サンプルとして預ければ、実戦に使えるレベルの変形武器を作ってくれそうだ。


「どうするんですか?」

「普段使いは出来ないだろうけど、せっかくなら私が扱える武器があるかなと思ってね」

「ボスが使えるっちゅうと…」

「杖とー、鎌だねー」

「その通り…っと、見付けたぞ」


 ディスプレイを操作すると、お目当ての杖と鎌の変形武器を発見した。悲しいことに種類は一つしかない。武器として用いることが少ない杖と、使い手が少ないマイナー武器である鎌。それをくっ付けたモノの需要が低いことが原因だろう。


 剣や槍みたいなメジャーな組み合わせなら二十種類以上あって、しかも性能とデザインと性能にもきっちり差異があるのに…不遇なのはマイナーなものの宿命とでも言うべきか。悲しみを感じつつ、私は実質的に一択である武器を選んだ。


 ディスプレイに『この景品でよろしいですか? YES/NO』という確認が現れ、その『YES』の部分をタッチした。すると交換機がガタガタと揺れ始める。十秒ほどで揺れが収まると、その上側からスポッと音を鳴らして一本の杖が現れた。


「これが変形武器、『鋼鉄の鎌杖』か」


 私は早速入手した変形武器を【鑑定】してみる。その結果は以下の通りであった。


――――――――――


鋼鉄の鎌杖 品質:良 レア度:R(希少級)

 鋼鉄と樫木を組み合わせて作られた大鎌にして杖。

 変形機能が備わっており、変形させれば二つの武器の武技を使うことが可能。

 変形機構は比較的脆く、破壊されるとどちらとしても使えなくなるので注意。


 装備効果:【器用強化】 Lv1


――――――――――


 交換する前からわかっていたが、性能に関しては微妙と言わざるを得ない。しかし、そのデザインは面白かった。杖モードの現在は木目が美しい真っ直ぐな柄の中央部分は少し細く、握りやすくなっていた。


 先端に薄い無数の金属の板が渦を巻くように着いている。金属の部分は小さな鋼の蛇で、それが巻き付いているようにも思えた。細い部分を捻ると変形する仕組みになっているようで、私は早速それを動かしてみた。


「うおっ!?」

「はー!ええやん、これ!」

「カッコいいですね!」

「一瞬だねー!」


 柄を捻った瞬間、ガシャッと音が鳴ったかと思えば先端の金属部分が柄から離れて組み合わさり、一本の湾曲した刃となった。どうやら金属の部分には紐か何かが通してあるようで、その張力で刃とするようだ。カッターナイフのような筋が何本も入った刃は鋭利であり、それなりの切れ味がありそうだった。


 武器としても悪くないが、それ以上に男四人の心は踊っていた。何故かって?変形する瞬間がとてもカッコいいのだ!最高のオモチャを手に入れた気分である。たまたま私達の近くにいたプレイヤーも食い入るように見ていた。


「変形武器…アリやな!欲しなって来たわ!」

「これは性能が低いが、筐体によってはもっと強力なモノが入っているだろう。明日はそっちを狙ったらどうだ?」

「そうさせてもらうわ!明日はレアな変形武器狙いに決定や!」

「またー、取れないかもよー?」

「シッ!聞かれるよ!」


 完全に持ち直した七甲へ冷静に突っ込むウールの口をエイジが慌てて塞いだ。さっきのように落ち込まれてはたまったものではないからな。エイジの判断は正しいだろう。


「すみません。少しよろしいでしょうか?」

「うん?」


 『引換券交換機』の前でそんなやり取りをしていると、少し離れていた場所で我々を見ていたプレイヤーの一人が近付いてきた。群青色のローブに身を包み、紫色の宝珠を持つ腕のような意匠の杖を持っている。どうやら魔術師のプレイヤーらしい。


 ローブにフードはついているが、今は被っていないので顔もハッキリと見える。長い耳で金髪、銀縁の眼鏡がよく似合う線の細い森人(エルフ)の男だった。何か用だろうか?


「私はフィンク。情報を取り扱うクラン、『FSWニュース』に所属しております。今、皆さんがやっていたこととその武器について教えていただけないかと。無論、情報料はお渡ししますよ」

「ほー!『FSWニュース』言うたら掲示板で検証結果とか上げとるクランやん」

「ふむ…わかった。大したことでもないが、知っていることは全て話そう。この武器も【鑑定】してくれて構わない」


 私はそう言うと『鋼鉄の鎌杖』を彼に手渡した。ここでアッサリと話すのは隠す意味がないからである。彼らが知らないということは、引換券を使ったのは私が最初の一人なのかもしれない。仮にそうだとしたらちょっとだけ嬉しい。


 しかし、どうせ今日中には引換券を入手する者が他にも現れる。そうなったら引換券の情報を握っていることなど無意味になってしまうだろう。それなら気前良く教えた方が情報料が貰えるだけお得だ。


 そしてどうせ教えるのなら、気前良く武器の情報も教えてしまえば良い。私の切り札になり得ない武器であるし、こんなに面白い武器が手に入ることを色んな人に知ってもらいたいからな。


「なるほど、『謎キャッチャー』の景品ですか。我々も遊んだのですが、引換券は出ませんでした。それなりにレアなアイテムなのでしょう」

「ああ、カプセルを開けた時のエフェクトからもそれは間違いない。ただ、金色のエフェクトだったら確実に引換券が出るのかはわからない」

「引換券に複数の種類がありそうですが、実物がないから確定ではないですね。検証のし甲斐があります」

「ただ、引換券の中でも変形武器は正直に言ってハズレだと思う。カッコいいのは間違いないが、性能面では一段劣るからな」


 私と会話しながらフィンクは指を動かしている。きっとメモ帳的なモノに書き込んでいるのだろう。脳波で書き込むことが主流となりつつある昨今であるが、キーボードで打ち込むことを好む者は一定数いると聞く。彼もそんな者の一人なのだろう。


 しばらくフィンクは『鋼鉄の鎌杖』を様々な方向から観察した後、丁重に返却してくれた。その後、彼はインベントリから二つのアイテムを取り出す。片方は現金が入った袋で、もう片方は複数の豪華な装飾が施された宝石箱だった。


「さて、報酬の話に移りましょう。こちらに現金で十五万ゼルあります。そしてこちらの宝石箱には市場価格が十五万ゼル前後の宝石が入っています。好きなものをお一つお選び下さい」

「情報を売買するのは初めてだから相場がわからないが…大盤振る舞いなんじゃないか?」


 私の質問に対してフィンクは驚いたように目を見開く。そんなに変なことを言っただろうか。彼は眼鏡を指の腹で押し上げながら、困ったように苦笑していた。


「情報料としては適正価格であると自信を持って申し上げます。ですが…情報料の引き上げ交渉を持ちかける情報提供者はいても高過ぎると言った人は初めてですよ」

「ボスは変なところで真面目やからなぁ」

「うぐぐ、わかった。じゃあ宝石を見せてもらいたい」


 七甲にからかわれた私は、気恥ずかしさを振り払うために宝石の方を選んで箱を受け取った。蓋を開けるとそこには色とりどりの宝石が所狭しと詰まっている。ただ、どれも原石なのでウールが当てたもののように輝いてはいない。加工して初めて真の姿を見せてくれるだろう。


 私は原石を持ち上げては【鑑定】していく。ルビーやサファイアのようにリアルにもある宝石もあれば、聞いたこともない宝石もある。その中にあって、私は一つ惹かれる宝石があった。


「碧琥珀…?青い琥珀なんてあるのか」

「お目が高いですね。他に比べて小さいですが、それだけ稀少な宝石ですよ」


 私が見付けたのは碧琥珀という宝石だった。フィンクの言う通り他よりも小さいが、清んだ青色はとても美しい。中に虫などは入っていないが、むしろ余計なモノが入っていないからこそ美しいようにも思えた。


「気に入った。これにさせてもらおう」

「かしこまりました。また何か情報を入手されましたら『FSWニュース』にご一報下さい」


 フィンクはガッシリと固い握手を交わしてから去っていった。何時かまた利用する時が来るかもしれない。そう思いながら我々は他のゲームをするべくゲームセンターの奥へと進むのだった。

 次回は5月28日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ほぼイベント時限定だけど、魔物プレイヤーと普通の人間との交流も、なかなか楽しいね。
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